【映画】「Sin Clock」感想・レビュー・解説

なかなか面白い映画だった。窪塚洋介って、やっぱ存在感あるよなぁ。ただ個人的に、日本の映画で拳銃がバンバン出てくる感じがあんまり得意じゃない。まあ、実際そういう世界もあるんだろうけど、「日本で銃撃ちすぎじゃない?」って感じになっちゃう。

物語は、どんな関係性なのか不明な複数の男たちの酒宴の場から始まる。悪そうな男たちだ。ムシャムシャと食事をしながら、恐らく何か悪巧みの話をしている。

そしてそこから、その酒宴の席にいた高木シンジの来歴と現状が語られることになる。

サラリーマンだった高木は、あるどでかいミスの尻拭いをさせられクビとなり、その後タクシー運転手となった。同じタイミングで、同じぐらいの年齢の、タクシー業界では「若手」と言える男が他に2人も入社したようだ。その内の1人である番場ダイゴとは、ちょくちょく話す仲だ。ちょっと変わった奴だが、後に飲みの席で元数学教師だったと知る。
高木は日々様々な人を乗せるが、「車内には自分と客しかいないのに、自分の存在が無いみたいになっている」と、その不思議な感覚について吐露していた。
そんなある日、高木は、後ろの席で若い女性にフェラチオをさせていた男が、国会議員の大谷であることをひょんなことから知ってしまう。また、高木・番場と同時期に入社した坂口から、「俺たちには『意味のある偶然』がある」と唆される。
そんなわけで彼らは、思いもよらない「強奪計画」を実行に移すこととなり……。
というような話です。

さっきも書いたけど、やっぱり窪塚洋介がとにかく良い。彼は最初から「悪」側っていうわけでは全然なく、むしろ「可哀想」側の人と言ってもいいという感じで登場する。そしてそういう、「ワル感」を発揮する場面じゃないところでは、そういう存在としてきちんと存在感がある。さらに、「悪」側に転がっていってからの雰囲気も、そりゃあさすがという感じで、概ね窪塚洋介の雰囲気で成立しているみたいな作品だなぁ、と感じた。

映画の中では、窪塚洋介の役は「狂気を発露する」人物ではなく、「狂気を発露する」人物は他にいるのだが、彼よりもやはり窪塚洋介の方がなんだかんだ「狂気じみている」雰囲気がある。不思議だ。ホントに、何をしているというわけでもなく、ただ運転したり、ただタバコを吸ったりしているだけなのに、絶妙にサマになるんよなぁ。

物語的には、割とシンプルに進んでいくというか、「そんな感じになっていくよね」という展開だと思う。ただ、どう考えても「失敗すること」は目に見えているわけで、「じゃあ、何故失敗するのか?」をどう着地させるんだろうな、とは思ってた。その着地のさせ方はなかなか上手いと思う。ストーリー的には、綺麗にまとまった感じ。後は、全体の雰囲気が良かったから、それで十分かなという気はする。

全然詳しくないんだけど、この映画にはラッパーがたくさん出演しているみたいで、中でも、公式HPを見て初めて名前を知った「Jin Dogg」って人は、「にじみ出るヤバさ」みたいなものが生来のものっぽくて良かった。なんか、「人生、ずっとこんなヤバさを背負って生きてます」みたいな、「作り物感」のまったくない雰囲気は見事だったと思う。僕の感触では、窪塚洋介に引けを取らない存在感があったなぁと思う。

あと、チョコプラの長田は絶妙だったなぁ。ホント、こういう人いそうだなぁ、って感じ。ある意味で一番ヤバい奴かもしれない。ホント、うまくハマった感じだなぁ。

雰囲気がとても良い映画だったなと思います。

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