【映画】「下妻物語」感想・レビュー・解説

たまたまシネクイントのHPを観ていたら、『下妻物語』がリバイバル上映されていることを知って、これは観なければと思い観に行った。今年で公開から20年だそうだ。20年前の僕はまだ、映画館に行ったことなかったんじゃないか、というぐらい映画を観ていなかったし(当時はTSUTAYAのレンタルが全盛だったけど、TSUTAYAで何かを借りたことは一度もない)、だから今回が初見である。

今回の上映をきっかけに初めて、本作が中島哲也監督作品だということも知った。『嫌われ松子の一生』とか『告白』とかすげぇなって思ってたから、そういう意味でも期待度抜群である。

そして、「さすが中島哲也だなぁ」的な感覚で最後まで観れた。

凄いなと思うのは、最初から最後まで割とふざけ倒しているし、遊び倒してるわけなんだけど、それが「面白い」という方にちゃんと触れていること。こういうふざけた感じって、ともすれば「スベってる」みたいな印象になることも往々にしてあると思うんだけど、『下妻物語』はメチャクチャ面白かった。

喫茶店で話を聞いている時に「長くてつまらないからアニメにして要約しますね」と竜ヶ崎桃子(深田恭子)が言って突然アニメが始まったり、駅の待合室で流れているテレビ番組の中で竜ヶ崎桃子の生い立ちが紹介されたり、唐突に「水野晴郎」が出てきたりと、まあやりたい放題である。そういう演出が、物語全体の独特さを邪魔しない、というか、むしろ増幅しているみたいな感じがあって、とても良かった。

ストーリーもムチャクチャだ。嶽本野ばらの原作にどの程度忠実なのか不明だが(未読)、「バッタモンを売る町で育ったけど、父親が売っていたバッタモンのせいで生まれた土地を追われ父親の母(桃子の祖母)の実家がある茨城県下妻市へ。ロリータ服に目覚めていた桃子は、父親を適当な嘘で騙しては金を得ていたが、自分でもどうにかお金を作らないと思い、父親が売っていたバッタモンを雑誌の通信欄で販売することにしたところ、レディースに所属する白百合イチゴ(土屋アンナ)と出会う」みたいな感じで始まっていく。自分で書いていても「なんだそりゃ」という感じの話である。そこからは「桃子とイチゴの友情」的な話になっていくのだけど、でも桃子は別に友達がほしいと思っていないし、イチゴは桃子をパチンコに連れ出そうとしたりする。合う合わないで言えば「全然合わない2人」であり、そんな2人がドタバタしていくという話である。

まあ、変な物語だ。でも面白い。凄いよなぁ、こんなに訳分かんないのに面白いんだから。

まあそんなふざけ倒した作品なのだが、たまにちょっと考えさせるようなセリフが出てきたりもする。一番印象的なのは、作中で2度登場する、「幸せを掴むことは、不幸に耐えることよりも難しいことがある」というものだろう。最初にこのセリフが出てきた時にはあまりピンと来なかったのだが、2度目に出てきた時には「なるほど」という感じになった。

そういう意味で言うと、龍ヶ崎桃子が好きなもの(ロリータ服)と関わる際のスタンスもなかなか考えさせられるだろう。「好きなことを仕事にした方がいいか、趣味に留めておくべきか」的な話なのだけど、良し悪しあるなと思う。ただやはり、個人的には、「好きなことを仕事にしない方が良さそうだなぁ」と思っている。好きなことが仕事になってしまうと、逃げ場がないよね。

個人的に一番驚いたのは、エンドロール。本作には、竜ヶ崎桃子が好きなロリータ服のブランドとして「BABY, THE STARS SHINE BRIGHT」が出てくるんだけど、これ実在するようだ。エンドロールに、そのまんまのブランド名で表記されてて驚いた。恐らく、元々超有名なブランドだったんだろうけど、『下妻物語』で取り上げられてさらに注目されるようになっただろうなぁ。

まあそんなわけで、感想として書くことはあまりないのだが、シンプルに楽しめる映画だった。しかしホント、こういう映画を作るのはめちゃくちゃセンスがいるだろうし、そんなセンスが爆発している作品に感じられた。

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長江貴士
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