【映画】「ドント・ウォーリー・ダーリン」感想・レビュー・解説

面白かったなぁ、途中までは。

とにかく、途中まではメチャクチャ面白かった。その面白さを一言で言うなら、「この物語、どう着地するんだ?」という関心だと言っていいだろう。結局、物語の終盤近くになるまで、何がなんだかさっぱり分からないまま物語が展開していく。「不穏さ」だけがひたすらに散りばめられ、それらが意味のある形を結ばないのだ。

122分ある映画の内、僕の体感では100分ぐらいまで、そういう状態が続く。映画全体に漂う「不穏さ」は、人の声を積極的にサンプリングしたみたいな奇妙な音楽も相まって、かなり不気味さを掻き立てるし、その不気味さに惹かれて物語を追い続けてしまう。

あとは、「何がどうなってるのか?」だけである。そして、それが僕としては、「うーん」という感じだった。好みの問題だとは思うが、僕はこういうラストじゃない方が良かったなぁ、と感じてしまった。というか、この映画のラストは、はっきり好きじゃない。

この映画のラストにするのなら、122分の内50分ぐらいでネタを明かし、「それ以前」をもっと描いてほしかったなぁ、という気がしてしまう。もうちょっと良い感じの物語に構成できたような気がするんだよなぁ。

僕は結局、「そんなん、なんでもアリやん」という物語が好きじゃないのだと思う。ある程度「制約」が課された上で、その制約の中で「そんな可能性想像もしていなかった」みたいな展開の方がいい。『ドント・ウォーリー・ダーリン』は僕にとって、そういう物語ではなかった。うーん、ちょっと残念。

っていうか、この物語、ミスリードが酷いと思うんだよなぁ。テレビの画面が白黒だから、さすがにそれでこれは無理じゃない?と思うのだけど。

映画全体が、「『良き妻』を求める男性優位な考え」を皮肉ってるってのは分かるし、「そういう世界からの解放」という展開になってるのも分かるけど、だとしたらこの設定は「寄りすぎている」というか、「分かりやすすぎる」というか、そういう点でもどうなん?と思ってしまった。

っていうかどう考えても物語的には、「それ以前」の雰囲気の方が面白そうだろ。セレブ的な人がワッキャウフフってセックスしてたり、パーティーで乱痴気騒ぎしてる場面よりずっと。

とにかく良かったのは音楽。「セレブリティ的な華やかでハッピー全開の場面」でも、この映画で流れる音楽が一緒になると凄く「不穏」になる。変な話だが、「映画を観ながら、たくさんの女性たちが声で即興の効果音をつけている」みたいな雰囲気もあって、そういう架空の状況が一層この映画を異様なものにしている感じもあった。

とにかく、音楽だけは素敵でした。

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長江貴士
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