【映画】「クルージング」感想・レビュー・解説

さて、いつもの如く、リマスター版は優先的に観てみよう精神で観に行ったのだけど、本作はちょっと、個人的には面白さが伝わらない作品だったなぁ。いやまあ、作品のテーマや内容を考えれば、むしろ「面白さが伝わらない作品である」という受け取り方の方が正解の可能性もあるが。

本作はまず、「実際の起こった殺人事件をベースにしている」そうだ。1970年代のNYでゲイの男性ばかりが惨殺され、バラバラにされるという事件が発生したのだが、それがモチーフになっている。被害者の共通点は、「ハードなゲイSMクラブに通っていたこと」であり、本作では、そんなSMクラブにストレートの刑事が潜入捜査をする、という設定になっている。

監督はこの事件に興味を抱き調べ始めたという。そして、ゲイ・コミュニティに潜入した捜査官の談話(つまり、潜入捜査という設定も実話ということだろう)や自ら目にしたSMクラブ内の想像を絶する痴態などを脚本に盛り込んだそうだが、中でも個人的に一番興味深いと感じたエピソードがある。監督は、逮捕された容疑者に面会に行ったそうなのだが、なんとその人物は、監督がかつて撮った映画『エクソシスト』の出演者の1人だったそうなのだ。まあもしかしたら、それがきっかけで事件に興味を持った、みたいなことなのかもしれないが。

さて、映画を観ながらしばらく僕は勘違いしていたのだが、当初僕は本作を「事件の謎を解いていく」みたいな物語なのだと思っていた。刑事が潜入捜査をするという設定なのだから、まあそう受け取るのが自然だろう。しかし、決してそんなことはなかった。本作はむしろ、「ゲイ・コミュニティに潜入した捜査官が壊れていく過程」を描き出す物語なのである。

そのことを知っていれば、あるいはもう少し早く気づいていれば、映画の受け取り方も変わったかもしれない。ただ、そのことに気づくのが僕はちょっと遅かったので、しばらく「うーん」と思いながら観ていた感じである。

というわけで、色々頭を回転させてはいるのだが、本当に書くことが思いつかない。あと書けるとしたら、「主演がシルベスター・スタローンだとずっと思ってたけど、どうやらアル・パチーノだったらしい」ということ。やっぱり、人の顔は分からない。

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長江貴士
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