【映画】「法廷遊戯」感想・レビュー・解説

シンプルに感想を書くと、「小説はあんなに面白かったのになぁ」という感じになる。いや、ホント、小説はとにかく凄まじく面白かった。
(以下、小説の感想。一切ネタバレはありません)

と言っても僕は、映画を観る時点で、物語の大半を忘れていた。映画を観ながらなんとなく思い出してきたけど、でも「最後どうなるんだっけ?」みたいなところははっきり思い出せなかったので、割と「初見」に近い感じで物語に触れられたと思う。

だから余計、「うーむ」という気分になってしまった。

役者の演技は、とても良かったと思う。永瀬廉の演技の良し悪しは僕には上手く判断できないが、杉咲花、北村匠海、柄本明、生瀬勝久などなど、そりゃあ演技上手いよなぁという役者が揃い踏みなわけで、演技はとても良かったと思う。大森南朋とか、ヤバかったもんなぁ。

特に素晴らしかったのが杉咲花だ。特に後半の演技はずば抜けていた。映画前半の「織本美鈴」を演じられる役者はいくらでもいるだろうが、映画後半の「織本美鈴」を演じられる役者はそうそういないだろう。杉咲花という選択は絶妙だったと言える。ホント、杉咲花がすべて持っていくみたいな映画だなぁ。

ストーリーは、やはり凄まじい。原作を読んだ時には、「おいおいおいおい、よくもまあこんなぶっ飛んだ物語を考えたものだな」と思った。

何が凄いって、恐らくだが、「完全に現実の範囲内で物語が創作されている」ということだ。いや、実際のところどうか分からない。例えばミステリ作家が殺人事件のトリックを作る際は、「実際には行えないようにするために、不備を残す」みたいなことを聞いたことがある。小説のトリックを元にした殺人事件など起こったら困るからだ。同様に、『法廷遊戯』の物語も、どこかに「実際には行えない部分」が含まれているかもしれない(ちょっと違う話だが、映画の中で行われる「盗聴」が、日本の刑法には抵触しないことが作中では指摘されなかった。原作ではその指摘があったはずなので、敢えてその描写を削ったのだろう。それももしかしたら、「真似されたら困る」という配慮によるものかもしれない)。

ただ、映画を観ていれば、「理論的には、この映画と同じことは現実世界にトレースできる」と感じるだろう。それが凄い。「法廷」という、「法律」によって厳格に支配される場において、「普通ではありえない光景を現出させる」のだ。もちろん、かなり複雑な人間関係が前提になっているので、実際にこんなことが起こることはないだろう。しかし、理論上は恐らく出来てしまう。そして、「理論的にはこれが実現出来てしまうんだ」というような魔術的な物語を構築したことに、やはり驚きを感じてしまった。

あと、エンドロールで、役者のところに「五十嵐律人」と原作者の名前が載っていたので、「どっかに出てたんだ。傍聴席辺りに座ってたのかな」と思って、原作者の顔を調べてみたら、いやいやちゃんとセリフのある役やってたやん(ただ、視覚情報をきちんと記憶できない人間なんで、間違ってるかも。「◯◯号法廷、なんかおかしいんですよ」って言ってる人だと思うんだけどなぁ、たぶん。調べたけど分からんかった)。そんなことも出来るんですか、あなた。

というわけで皆さん、是非小説を読んでほしいなと思います。

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