【映画】「MEN 同じ顔の男たち」感想・レビュー・解説

久々に、極度に意味不明な映画だった。ただ、思ったほど「残念感」はない。むしろ、「悪くない」という感覚さえある。「映画って、これほどまでに説明を放棄してもいいんだ」と感じた作品であり、僕は大体そういう作品をあまり好きになれないのだけど、『MEN 同じ顔の男たち』は、「つまらない映画を観てしまった」みたいな感覚にはならなかった。いや、「面白かったか」と聞かれると、頷き難い。決して面白くはないし、人にも勧めないだろう。ただ、決して悪くはない。不思議な映画だ。

映画の内容そのものよりも僕が驚いたのは、副題である「同じ顔の男たち」の意味が最後まで理解できなかったことだ。公式HPを読んでようやく、管理人役を演じた俳優(ロリー・キニアと言うらしい)が、他の「怪しげな男たち」も演じていた、ということを理解した。

たぶん普通の人には何を言っているのか理解できないだろう。説明すると、僕は「人の顔を覚える能力」が極端に低い。まあ、人の顔に限らず、視覚的な情報を記憶する力が極端に無いのだが、とにかく人の顔は覚えられない。日常的に会う人の顔も無理だ。例えば僕が、似顔絵描きの人に声を掛けられて、「誰でもいいからあなたの身近な誰かの顔をタダで描きますので、特徴を口頭で教えてください」と言われても、僕は何も答えられない。そもそも、脳内に映像として浮かばないからだ(これも、人の顔に限らない。例えば「頭の中でリンゴを思い浮かべてください」と言われても、僕には出来ない。どんな意味においても、「頭の中で映像を呼び起こす」みたいなことができない)。

なので、僕は結局映画を最後まで観ても、「ロリー・キニアが1人7役を演じていた」ことに気づかなかった。まあこれは、僕だけの特殊事例だろう。普通は気づくんだと思う。僕も、「なんか似てるな」とは思ったけど、同じ人が演じているとは思わなかった。ビックリだぜ。

というわけで、僕は「普通の観客が感じているだろう『不気味さ』を感じずに映画を観ていた」ということになる。なかなか稀な存在と言えるだろう。

しかしだな、そうだとしたら、主人公の女性の反応はちょっと薄くないか? 僕には、彼女が「うわっ、管理人と同じ顔してるやん!」みたいな反応を示すような場面があったようには思えなかったんだけど、どうなんだろう。

映画の内容はさっぱり分からなかったが、全体を貫くテーマはもしかしたら『月の満ち欠け』と同じなんじゃないだろうか、と思ったりした。だとしたら、同じテーマを据えて、よくもここまでまったく異なる作品に仕上がるものだと感じた。

しかし、ラストの展開はマジでイカれてるな。どんな意味が込められているかはともかく、「生理的な嫌悪感全開」でお送りするラストは、映画館の椅子に座ってしまっているなら必見だ(配信で観ているなら、観るのを止める人もいるかもしれない)。

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長江貴士
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