【映画】「バグダッド・カフェ」感想・レビュー・解説
初めはマジでどうなるかと思ったなぁ。全然意味が分からなかった。けど、中盤ぐらいから次第に、「あれ、良い話なんかこれ」と思ったりした。冒頭のハチャメチャ加減からはちょっと想像も出来ないぐらい物語が落ち着いてきて、「おー、こんな話になるんかいな」という感じだった。ビックリ。
物語は、砂漠のど真ん中で喧嘩するドイツ人夫婦の様子から始まる。正直、何をしているのかはよく分からない。車が故障したのか、夫婦がとにかくいがみ合っていて、結局夫は、妻を置き去りにして車を走らせてしまった。
夫はその後、砂漠の中にあるモーテル付きのドライブイン「バグダッド・カフェ」に寄る。ビールを頼んでも「免許がない」、コーヒーを頼んでも「機械が壊れている」と言われて何も出てこない。夫は「太った妻を見なかったか?」と聞いて回るが、特に反応はなし。そのまま夫は去っていった。
その後、1人の女性が大荷物を引きずりながら「バグダッド・カフェ」のモーテルまでやってきた。泊めてくれというのだが、何か変だ。車も無いし、男もいない。しかも、掃除のために部屋に入ると、男物の服ばかりがある。碌な仕事をしない夫を追い出すほど気が強い、「バグダッド・カフェ」の女主人・ブレンダは保安官を呼ぶのだが、特に怪しいところもなかった。
ムンシュテットナーと名乗った女性は、アメリカ人が自分の名前を発音しにくいと知り、しばらくしてヤスミンと名乗るようになる。ヤスミンは、女主人が買い出しに出かけている間に事務所を大掃除したり、赤ちゃんの世話をしたり、ブレンダの娘・息子と仲良くなったりする。しかし、その一挙手一投足がブレンダには気に食わない。一向にモーテルを出ようとしないヤスミンに苛立ちをつのらせていくのだが……。
というような話です。
とにかく、セリフはもちろんあるものの、観客向けの説明的な描写が全然無いので、しばらくの間状況が全然掴めない。しかも、ブレンダがとにかく散水でもしているかのように怒りを撒き散らしていて、「うわぁ、こういう人嫌いだわー」みたいに思いながら観ていた。配信で映画を観ることはないので分からないが、もし本作を配信で観ていたら途中で観るのを止めていただろう。何が面白いんだか、しばらくの間全然理解できなかった。
そういう意味で、とても助走の長い物語なのだけど、その助走期間を超えてしまえば、物語はとてもシンプルでかつ良い話になっていく。「話変わりすぎだろ」という感じもしなくはないのだけど、助走期間できちんと人間関係が描かれていくので、割とすんなり受け入れられた。
そして、良い話になってからは、一度だけ波風が立つ場面があるのだけど、基本的に穏やかに良い話が続いていくので、安心して見れるという感じだった。
本作は、ミニシアターブームの象徴となった作品なのだそうだ。今回4Kレストア版が公開されるまで僕はタイトルさえ知らなかったけど、なかなか素敵な映画だったと思う。しかしホント、冒頭からしばらくの間の訳わからん展開には結構面食らった。何度も書くけど、まさかこんな良い話になるとはね。