【映画】「柔らかい殻」感想・レビュー・解説

なんとも言えない映画だなぁ。まあ、「そんな感じの映画だろう」と思っていたので驚きも困惑もないのだが(予告を観た時点でなかなかヤバい映画だと分かっていた)、僕の中では「もう少し掴める部分があったら良かったな」という感じだった。ちょっと本作は、僕には掴みどころがなく、上手く捉えきれなかった。まあ、「少年にとっての、少年時代の狂気的な感じ」を描いているということは分かったが、それにしてもなぁという感じである。

ただ、冒頭の展開はなかなか面白かった。主人公の少年セスはやんちゃで、仲間であるイーブン、キムと共にイタズラばかりしている。その日もバカでかい蛙を見つけた。そして前から近所に住む女性がやってくるのが目に入ると、セスは葦の茎を使ったストローで蛙の肛門から空気を入れ、その女性の目の前で爆発させてみせるのだ。そしてそのことが母親にバレ、セスはドルフィンという女性の家まで1人で謝りに行かされる。

ドアを開けたドルフィンは、「噛みついたりしないから入って」と言って招き入れ、その上で、「蛙のことは別にいいのよ」と口を切る。その後彼女は、「自分は猫の尻尾に花火をつけて走らせたことがある」など、自分も酷いことをしていたという話をするのである。怒られると思っていたセスには意外だっただろう。

その後ドルフィンは、結婚後1週間で自殺してしまった夫の話をし、さらに「私は200歳なのよ」と、少年を幻惑するようなことを口にする。ちょうどその時、家にいた父親が吸血鬼の本を読んでいた。吸血鬼のことを知らなかったセスは父親に聞くのだが、その話が、「200歳なのに若く見えるドルフィン」と重なった。さらに、父親が読んでいた本の挿絵の女性がドルフィンに似ていたことから、セスは「ドルフィンは絶対に吸血鬼だ」と確信する。

その後、突然イーブンが行方不明になり、さらにその後死体が発見されたことで、セスの中の「ドルフィンは吸血鬼」という確信は深まっていくのだが、一方、この事件がきっかけで、セスが知らなかった父親のある秘密が掘り起こされることになり、セス一家は思いがけない状況に置かれるのだが……。

みたいな物語の始まり方はとても面白かったのだけど、全体的にはあまり好きじゃなかった。ただ、登場人物が割と全員狂気的なのは面白かったかな。人の死に対して「綺麗だった」みたいな感想を口にする人は結構いるし、また、セスの両親の関係性も結構な狂気である。恐らく軍にいたのだろう兄がある事情から戻って来るのだが、この兄も結構ヤバい。物語的には「それでいいのか?」と思うが(どちらかと言えば、他の人の狂気を抑えめにした方が、セスの狂気が際立つだろうと思ってしまう)、ただそういうことではきっとないんだろう。あまり上手く僕には捉えられていないのだが。

冒頭の蛙を爆発させるシーンはなかなかぶっ飛んでいたが、エンドロールで「No animals were harmed.」と書かれていたので、さすがに本物ではないようだ。まあそうか。結構昔の映画に見えたから、それぐらいの時代なら本物の蛙を爆発させててもおかしくないと思っていたのだけど、どうやら本作は、「1950年代を舞台にした1990年の映画」だそうで、まあそれなら納得という感じだった。

しかし変な映画だったなぁ。僕には刺さらなかったけど、刺さる人には刺さると思う。

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