災害関連死 段ボールベッドでお寺が防止
※文化時報2022年3月4日号の掲載記事です。写真は段ボールベッドの組み立てを体験する研修参加者。
浄土宗京都教区は2月17日、京都宗務所で傘下団体の合同研修会を開いた。寺庭婦人会が担当する研修では、段ボール製造会社Jパックス(大阪府八尾市)の代表取締役で一般社団法人避難所・避難生活学会理事の水谷嘉浩氏が講演し、「お寺が避難所として機能することで、災害関連死=用語解説=を防げる」と語った。
水谷氏は2011(平成23)年の東日本大震災の際、エコノミークラス症候群=用語解説=を防ごうと、避難所に置いてもらう段ボールベッドを自ら設計。災害関連死は「救い得た死」であるとして、防止対策の重要性を伝えた。
16年の熊本地震では、死者276人のうち、8割超が災害関連死だったと強調。国の災害弔慰金は1人当たり最大500万円支給され、総額約5億円が支出されたものの、この金額は段ボールベッド10万台分に相当すると指摘した。
避難所生活で災害関連死を防ぐには、トイレ・シャワー(T)、キッチン・食堂(K)、ベッド・間仕切り(B)のTKBを整えることが重要だと訴えた。それを実現するには「お寺の協力が不可欠だ」と説明。東日本大震災で多くのお寺が支援活動に取り組んだことを引き合いに、「お寺はコミュニティーの中心で助け合いの場。大きな部屋やお堂もある」と、避難所になることを求めた。また、お寺は自治体と災害協定を結ぶことで資機材を公費で賄えるとし、「大きな災害では、公助が届くまでの時間稼ぎができる」と述べた。
その上で「いろいろな業界のプロたちが支援者として活動すべきだ。宗教者は、オールジャパンの一員として何ができるのかを議論してほしい」と呼び掛けた。
災害関連死について解説する水谷氏
【用語解説】災害関連死
災害による直接の被害ではなく、避難生活などを通じたけがの悪化や疾病などで死亡すること。自殺やエコノミークラス症候群による死亡が含まれることもあり、復興庁は「災害弔慰金の支給対象となった者」と定義している。1995(平成7)年の阪神・淡路大震災で注目されるようになった。
【用語解説】エコノミークラス症候群
長時間にわたり足を動かさないことで発症する症状。血行不良で脚の静脈に血栓ができ、肺に運ばれて血管を詰まらせ、呼吸困難などの重篤な症状に陥る。運動や水分補給が予防に効果的とされる。飛行機のエコノミークラスで起きやすいことから名付けられ、災害時の車中泊や避難所生活、新型コロナウイルスの宿泊・自宅療養などでも危険性が指摘されている。
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