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「雲中菩薩」レプリカ奉納 平等院、東京藝大の研究で
※文化時報2020年9月30日号の掲載記事です。
京都府宇治市の平等院(神居文彰住職)は19日、山内の浄土院本堂で、国宝「雲中供養菩薩像」のレプリカを寄贈する奉納式を営んだ。東京藝術大学大学院の保存修復彫刻研究室所属の中村美緒氏が、研究の一環として制作。新たな知見も得られた。
雲中供養菩薩像は、平等院鳳凰堂内部の壁面上部に懸け並べられている52体の菩薩像。平安後期の仏師・定朝が1053年に制作した。
今回奉納されたのは、52体のうち「南20号」と呼ばれる菩薩像のレプリカ。神居住職が教鞭をとる東京藝術大学の講義が縁で制作が決まった。平安後期の代表的な様式を表す菩薩像を模刻することで、当時用いられた技法や造形を考察する目的があったという。
制作の過程で、割り矧ぎ=わりはぎ、用語解説=が直線でなく、曲線で行われていることや、理想的な造形を実現するために首を挿してあることが分かった。また、壁面に掛けることを想定し、最大限、立体的に見せる工夫を施してあることも分かったという。
神居住職は「模刻は二十数年ぶり。新たな発見があったのは驚きだった」と語り、「レプリカの活用方法を検討したい。今の時代の新しい保存の在り方を示していくことになり、長い歴史の大切な一ページになる」と話していた。
【用語解説】割り矧ぎ(わりはぎ)
木彫の基本的技法の一つで、干割れを防止する目的で行う。おおむね完成した木像の木目に沿ってのみを入れ、再びつなぎ合わせる。像全体ではなく、木芯の部分にだけ用いることもある。
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