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猫二匹との暮らしが幸せを運んできた

雄猫が大声で泣き叫んでいる。謙也が起きるまで、寝ている和室のドアを何度も叩いている。雌猫は、何もしないでそれを見守っていた。謙也の家には二匹の猫がいる。適当に外に出している飼い猫だが、極端に家人以外の人には、警戒するので、深夜と全く人のいない時間帯だけを巧みに使って外出している。

それでも、隣の家の人には、息子猫は「チビちゃん」と命名されている。家の中では、妻の優子にべったりの雌猫の「アレックス」は、優子以外には、近寄らない。だから、近所の人たちも存在する気付かないでいる。一方の雄猫の「ミユ」は、家人の誰にでも懐いている。

とりわけ、謙也には子分のように従っている。謙也のいる書斎で、寛いでいることが多い。「最近の猫は、犬化してらしいよ。散歩について来たり、呼ぶと飛んで来たりするそうよ」と優子が言う通り、雄猫は謙也の言うことを犬のようによく懐く。

「ネットで、ペットの特集を見ているとまるで犬よりも懐いているのに驚くよ」と謙也も納得している。多くの猫が、人間に服従する姿を見聞すると猫のツンデレ顔が懐かしくなる。

猫の甘え方には、
ゴロゴロと鳴く、
お腹を見せる、
体をすりすりする、
尻尾をピンと立てる、
ふみふみする、
甘噛みをする、
頭突きをする、
獲物を持ってくる
などがある。結構、どの猫も同じことをするもんだと感心する。謙也にも同じようなことをしている。病気の時には、特に甘えてくるので注意せよとよく言われているので、気を配ってもいるのだが、見落としがちだ。近所の動物病院にお世話になっている。動物病院と言っても犬猫が中心の病院だ。

動物を飼うということは、責任もある訳で、長い付き合いの中で、トラブルも発生する。比較的、勝手気ままにさせているが、雄猫は、縄張り争いで他の猫と喧嘩も多い。いつも近所迷惑なくらい大騒ぎしているのは謙也の飼い猫だ。

猫も餌を食う。ドライフードだけでは飽きる。昔は、外で虫や鳥や草などを食べていたから、栄養も偏らなかったという。今は、ペットフードが発達したから、餌には困らない。「猫まんまなど食べさせている家なんかないかも」と優子が言った。

『ねこまんま、またはねこめしとは、「猫に与える飯のように、味噌汁をかけたり削り節を散らしたりした飯」である。「にゃんこめし」、「しーしーまんま」、とも呼ばれる。 鰹節に限らず魚の食べ残しを御飯に乗せたものなど、字義通りの猫の餌と解することもある。』ウィキペディアより

確かに、猫まんまはありそうなことだ。事実、謙也の実家でも猫や犬を飼っていた。その当時の様子を考えれば、今のようなペットフードもなく、大きくなっていた。味噌汁と一緒ではないが、鰹節と煮干しは、息子猫が好んで食べている。

もっと驚いたのは、寿司用の海苔を食べることだった。「試しにノリも食べるかもしれないからやってみる」とあげたところ、ムシャムシャと食べた。娘猫は、焼いた魚などが食卓に上がるとテーブルの角に顔を出して、欲しがる仕草をする。「可愛い」と優子が食べさせる。

食に関しても二匹は、全く違う、雄雌の性別の違いではく、息子猫が日本産のキジ猫なのに反して、娘猫はシャム系の雑種ということもありそうだ。多分、趣味趣向も全く反対のような気がする。慎ましい娘猫と活発で行動力のある息子猫。これは、そのまま夫婦の性格にも笑ってしまうくらい当てはまる。妻の優子は、慎ましく内向的であるが、夫の謙也は積極的で外交的である。

「本当に、我が家の人間観察に近いわね」と優子が言った。確かに、夫婦そのものような気がしてきた。どちらも可愛いと言う点で一致した。「ヤギを買いたいのだけど」と常に謙也は言っている。子供の頃に実家で飼ったヤギの印象が頗るいいのだ。確かに、ヤギは犬と猫の長所を全部持っていると言われている。隣近所に迷惑がかかるので飼えない事情がある。「夢は取っておいた方が、長生きできるよ」と謙也は優子に言われている。「そりゃそうだ」といつも頷く。


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