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2022年5月の記事

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①【書評】正しい小説――年森瑛「N/A」 川村のどか ②【文芸批評時評・5月】審美眼はふらふらさまよう 中沢忠之 ③【連載】地方文学賞の賞金で文芸同人誌をつくる(第五回) なかむ…
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#年森瑛

審美眼はふらふらさまよう

文芸批評時評・5月 中沢忠之 文學界新人賞を受賞した年森瑛「N/A」の評価をSNSなどで見ていると、全体的に絶賛だが、批判的な評価もある。といっても、荒木優太https://twitter.com/arishima_takeo/status/1519984097149390849と栗原裕一郎https://twitter.com/y_kurihara/status/1519348918253125632くらいだが。当該作は、選考委員の選評にもある通り性的マイノリティを素材にし

正しい小説

【書評】年森瑛「N/A」 評者:川村のどか 生理を止めるため過度なダイエットをしている高校生のまどかは、周囲から「拒食症」を疑われている。母はインターネットで拒食症の娘との接し方を調べ、様々な資料にあたり、そこで得た情報通りの言動をするようになる。あるいは、まどかに同性の恋人がいることを知った同級生の翼沙は、同性愛者の友人との接し方を検索した上で、相手を傷つけないための振る舞い方をぎこちなく実演する。いずれも専門家や当事者からお墨つきを得た「正しい」姿勢だが、そこには彼女たち