一期一会
Instagramで本紹介のアカウントを始め、1年半が経とうとしている。
本の感想をアウトプットする場所になればと軽い気持ちで始めたアカウントが、有難いことに、
1万人以上のフォロワーさんに支えてもらっている規模になった。
周りに本を読む友達があまりおらず、読書は孤独な趣味、なんなら恥ずかしいものだと思っていた時期もあったけど、発信を始めたことでその考えが180度変わった。
まだアカウントを始めて数ヶ月の頃。
広い宇宙で今にも消えそうな光を放つ星のように、SNSの隅っこで細々と本の感想を発信していた時。
どうやって僕のアカウントに辿り着いてくれたのか分からないけど、感想に共感してくれたり、自分の感想を共有してくれたりしたフォロワーさんたちがいた。
SNS社会にはものすごい数の人がいて、それぞれが何かを表現したり伝えたりしようとしている。
その中で偶然僕の星に辿り着き、一休みどころか常連になってくれて、語り合えるのが素直に嬉しかった。
その時から支え続けてくれている方や、新しく尋ねて来てくれる方がいるおかげで、飽き性な僕がここまで発信を続けられている。
この1年半素晴らしい出会いが沢山あった。
その反面、悲しい別れも経験した。
親指1つで繋がれるのがSNSの良さだけど、逆に言うと親指1つで関係を終わらせることもできる。
アカウントを始めて、フォロワーの方が1000人を超えるまでの約半年間、毎回コメントやメッセージをくれる方がいた。
僕の書評の書評かってくらい、丁寧なメッセージを送ってくれて、なおかつその文章が素晴らしい。
毎回、買いすぎた時のレシートくらいの長文だった。だけど、まったく嫌じゃない。
人間味溢れる優しい文章の奥に、薄らと繊細さや孤独が垣間見えて共感してしまう。
親子くらいの歳の差があったけど、考え方も柔軟で、お互い友達と話す感覚で接していた。
その方はある日突然SNSから姿を消した。
あれ、最近メッセージ来ないなと思い確認すると、ユーザーネームがdeleted(アカウントを削除するとこうなるらしい)になっていた。
今思えば、その予兆はあって
「SNSに疲れてもっと気楽に好きなことを発信したくなった」
「自分自身も楽しめるものを投稿したい」
というようなことを言っていた。
SNSは便利だけど、繊細な人や感受性が豊かな人にとってはあまりにも残酷な世界だったりする。
悪意のあるコメントや攻撃的な批評などを見かけると自己投影してしまい、心がかなり擦り減る。
誰かにとっては天国かもしれないけど、その裏には数多くの地獄が存在する。
具体的には聞いてないけど、その方もSNSの地獄の部分を覗いてしまったのかもしれない。
ある日、やり取りしていた時に語ってくれたことがある。
出版社のブックレビュー企画に応募したこと、旦那さんの編集の仕事を手伝い始めたこと、ある文学賞に応募したこと...
いつかどんな分野かは分からないけど、一緒にお仕事をする時が来たら嬉しいよねとも言ってくれた。
SNSに疲れたら、一旦休めばいい。
きっと、今は彼女にとっての休憩時間だ。
Instagramを辞めたことは多分、彼女にとっての終わりじゃなくて新しい何かの始まりなんだと思う。
noteで文章を書き始めたこと知ったら喜んでくれるかな。またいつか、ふらっと僕のアカウントを尋ねてくれて語り合えることを楽しみにしてる。