若葉竜也と杉咲花の息をのむ長回しのシーン/ドラマ『アンメット ある脳外科医の日記』第9話
“圧巻”ということばでは伝えられない。そのシーンを、どう表現すればいいかわからない。どれだけ咀嚼しても、ことばが見つからないので。
とにかく観て! 第9話を観てほしい。
このドラマを観ていない人は、今すぐFODかネトフリで全話観て!
私、あの長回しのとき息してなかったかも(笑)。
(以下、ドラマの内容を含みますので、視聴後にお読みください)
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今回、ミヤビの記憶障害の本当の理由が明らかに。大迫教授が、なぜ西島会長と蜜月関係になったかも描かれた。そこには「誰もが安全で公平に受けられる医療」を目指し、多くの命を救いたい教授なりの正義があった。
かつて教授のもとで働いていた三瓶とは、ある患者を巡って意見が対立。「目の前に救えるかもしれない命があるなら、危険を承知でも治療すべき」と主張する三瓶を、大迫は「わずなか光でみんなを惑わせる危険な医者」とみなした。だが理想の医療を目指した大迫教授も、自身を含む裏取引の現場を偶然見てしまったミヤビを犠牲にしてまで、それを成し遂げることはできなかった。だからと言って、三瓶のやり方が正解だとも言えない。
ノーマンズランド。
人がメスを入れてはいけない領域のこと。
ミヤビの主治医である大迫は、彼女の記憶障害の原因がノーマンズランドにあることを突き止めていた。手術は難易度が高く、メスを入れれば二度と目を覚ませないと言われている。おまけに彼女は不正取引の目撃者。もし彼女が記憶を取り戻せば、命すら脅かされることも危惧したはずだ。だから教授は、ベストを探って彼女を守ってきた。家族ぐるみのつきあいをし、自分を慕っていたミヤビを巻き込んだ彼の苦悩は、相当なものだったと思う。その結果、嘘をつくことになってしまった。
そこへ三瓶がやって来たのだから、なおさら警戒する。「わずかな光でみんなを惑わせる」彼にミヤビの本当のカルテを見せれば、彼女を危険にさらすから。
大迫教授は、三瓶に真実を告げるよう提案した西島会長、つまり三瓶が手術することでミヤビが二度と目覚めないことを期待する西島のことを、自ら警察に売った。でもその前に、おそらく三瓶は西島会長からミヤビの本当の脳の状態を聞いているはず。食事中の西島と対峙しているシーンが入っていたのでそうだろう。となると、ミヤビと2人きりで話していたとき、三瓶はすでに彼女の真実を知っていたことになる。
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自分は本当に三瓶と婚約していたのか? 今の三瓶と向き合うことを決意したミヤビは、何気ない会話から少しずつ彼のことを掘り下げていく。ぎこちない2人の会話を、私は盗み見している気分でドキドキしながら観ていた。
教授との確執、結局患者を救えなかったこと、それを引きずっていること、そもそもの彼の原点……。このシーンで語られた三瓶の家族のことが、第1話の屋上のシーンに繋がっていたのか。あのことばを彼が放った重みを、この回で知ることになろうとは。
若葉さんの徐々に震えはじめる声と涙を堪える仕草に、こっちの胸まで震えてきた。普段はあんなにぶっきらぼうで淡々としている三瓶が、ことばを噛みしめながら訥々と本心をさらけ出し、涙を流す。悩むことなくグイグイ進むタイプだと思っていた彼が、常に葛藤しており、悩んで悩んで、「いまだに光を見つけられない」とうちひしがれている。ああ、彼もふつうの人間なんだ。切なくて、愛おしくなる。三瓶の背景を初めて知ることになったこのシーン。過去を振り返りながらいろんな思いが駆け抜けていくさまが、若葉さんの表情と仕草で全部感じ取れる。うう、さんぺーーーーい(涙)。
「光は自分の中にあったらいいんじゃないですか?そしたら、暗闇も明るく見えると思います」
三瓶の胸の内を知ったミヤビが発したのは、事故が起きる前の彼女が彼に言ったことばと同じだった。
ミヤビに出会って光を手繰り寄せた矢先、事故によって彼女の記憶から三瓶は消えた。彼はそれからどんなに孤独だったか。だが目の前にいる今のミヤビは、以前のミヤビと同じことばで彼を励ましてくれる。
それがわかったとき、つーーーっと椅子ごとミヤビに近づこうとした三瓶。わかるよ、三瓶。思わずミヤビに触れたかったんだよね、三瓶(号泣)。うう、さんぺーーーーい(二回目)。
でもそれを寸止めして、ミヤビが「先生は、私のことを灯してくれました」とことばにしたところが、もうたまらん! きちんとことばにして伝えようとしたミヤビがたまらん!
ここからの三瓶、ミヤビへの胸ダイブ。ぎゃぁあああああ。子どもみたいに安心しきった顔でミヤビにもたれる。「自分の知っているミヤビ、自分の好きなミヤビ、何も変わらないミヤビ」を感じて、安堵したのか。そんな彼を受け止めて、ミヤビは愛おしそうに三瓶を抱きしめる。もうもうもうもう、これ、一生忘れられないシーンだわ。
夜寝ようとしても、瞼にこのシーンが張りついていて(笑)全然眠れなかった。まあ寝たけどさ。そしたら夢の中で、Dr.三瓶が胸にはダイブしてこなかったけど、長距離バスの隣のシートに座って、ガチャピンのような目でじーーーっと私を見つめていた。ひゃーーっと思って、目が覚めたのが明け方4時。
そんなことはさておき、驚いたのはこの展開の後!(ドラマの、ですよ)
いつの間にか、ミヤビが苦しみを吐露するように三瓶にしがみついて嗚咽し、三瓶が慰めるようにミヤビの背中をトントンしている。立場が逆転しているのだ。杉咲花ちゃんの泣きの演技、感情が一気にあふれ出したあの感じが好き過ぎる。
これって、これって、要するに2人ともミヤビの脳の本当の状態を知ったからこそ、ってこと? きっとこの人のことを過去の自分は好きになっていたし、自分を灯してくれた今の三瓶のことも好きだという確信と同時に、本当の脳の状態を知って立ちすくみ、震えるミヤビを想像した。それを察して、今度は三瓶がミヤビの気持ちを受け止めて、背中をトントンしているんじゃないのだろうか。もしかして、最初に安堵して流した三瓶の涙には、彼女を救えないかもしれないという不安もよぎっての涙も含まれるのか?
互いの光で灯し合った2人。
そんでまたこのシーンのカメラのアングルが、とてもよくて。ひゃあああーーー。
「2人はきっと幸せになる、なれる」と感じた瞬間に、ミヤビの固まった顔と放ったことばに、涙が一気に引っ込んだ。
「ごめんなさい……どなたですか?」
早口でそう言って、三瓶から離れたミヤビ。
絶句。
ここで記憶が飛ぶなんて、残酷過ぎる。
この日2人きりで語ったことを、もう日記に書けないじゃないの。
うう、さんぺーーーーい(三回目)。
いーーやーーーだーーーー。
奈落の底に突き落とされた再びの絶望シーンなのに、一瞬で「この人、誰?」という困惑の表情に切り替わった杉咲さんの演技を何度も観てしまう。
また新たな症状が出はじめたってことなんだろうけど、どうなるのこれ。
こ、こ、この気持ちを、野呂佳代ちゃんと千葉雄大くんとも分かち合いたい。もちろん「たかみ」で! 今から「たかみ」に行こう!!
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そんなわけで、ドラマを観た翌日は放心のまま仕事に行きました。
忘れているわけじゃないけど、綾野と麻衣の入籍、池脇さん、藤堂院長の活躍(8億の借金を……笑)なども見所だった第9話。はぁ~、次回最終回か、寂しすぎる……、ん?? そうじゃないのかーーーー!
あと2話あるって、皆さん知ってました?
全11話だった。
近ごろ10話に慣れているものだから、てっきり次回が最終回だと思っていた。あらやだ。
こんなに月曜日を待ち遠しいと思ったことが、かつてあっただろうか(笑)。まだしばらく、エンタメを楽しんで生きていけそうだ。
気づいたら3000字超えてるし。でも一気に読んでほしいので、今回は見出しナシ、目次ナシ!ごめんなさい!!