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久しぶりに泊まりがけの旅。

少し前になるが、姉が「前から泊まりたかった宿があるんだけど、私お金出すからさあ、一緒に行こうよ」と言い出した。疫病流行以来、医療従事者の彼女はどこにも遊びに行けなかったので、どうやら仕事を辞めるのを機に気持ちが爆発したらしい。

「どこに泊まりたいの?」と尋ねると「界 別府」だという。ああ、星野リゾートね。私は旅が好きだが、どちらかといえば民宿にひとりで泊まったりビジネス系ホテルに泊まって夜はぶらぶらしたりすることが多い人間である。あまり高い宿だと気おくれしてしまうし、「こんなに高かったんだから」などとあら探しするかもしれないし、まったりと寛ぐタイプの宿でちっとも寛げないのだ。だが姉がお金を出すと言う。その代わり、段取りと車の運転は私である。

ほんじゃ、行こうか(笑)。

そんなわけで、初めて星野リゾートの湯宿に泊まることとなった。久しぶりの別府なのに、あいにくの雨。しかし部屋はオーシャンビューの露天風呂付き客室で、大きく窓を取った造りだ。

晴れていたら最高だったんだけど……。

目の前には別府湾が広がっている。晴れていないのが本当に残念だ。

宿泊したのは露天風呂付き客室。こちらは寝室。
リビングは畳にソファで寛ぐタイプ。

別府にはさまざまな泉質の温泉があり、この宿はナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉。いわゆる塩湯というやつだ。潮風に吹かれた客室の露天風呂は熱過ぎずぬる過ぎず、ちょうどいい湯加減だった。大浴場もあるが、部屋から出るのが億劫で、結局客室で露天風呂三昧となった。公式サイトには、加水ありの源泉掛け流しとある。源泉100%ではないけれど、流しっぱなしではあるってことだろう。なめらかな湯で、気持ちいい温泉だった。

肌なめらかな塩湯。
アメニティは一人分ずつ風呂敷に。
備え付けの化粧水や乳液も使い心地が良かった。

一応、事前に予約サイトのくちコミなどを読んでどんな宿かは予習してきた。絶賛するコメントもあれば、辛口のものもあった。特に料理についての意見はさまざまで、その人が今までどんな宿に泊まってきたかや、好みによってずいぶん異なる意見になるのは仕方ないことかもしれない。だから料理にはまったく期待しないでおこうと心に決めた。それに、家族の中でいちばん口うるさい母も同行したからだ(笑)。

子どものころから、旅の楽しい思い出に水を差す形で、毎回「朝食の鮭が小さすぎる」「米がまずい」「量が少なすぎる」などさまざまな意見を言い続ける母。一切笑いにせず、ひたすら文句を言い続ける。宿泊先の仲居さんや飲食店の店員さんの前でも、遠慮なく(むしろ聞こえるように)言うのが私は本当に嫌だった。今回も、心の中で「どうか大声で文句を言わないでくれ」と願いながらレストランへ向かった。

しかし私の予想は意外にも外れた。母が「料理がおいしい」と言ったのだ。え? それ本当? 自分がお金出してないからじゃなくて?(←どこまでも疑う……)

料理の一部を写真にて。

河豚皮 くろめ 椎茸の和え物
帆立貝の紅葉和え/鶏と干し葡萄の松風/
干し無花果と青菜の胡麻白和え/落花生豆腐/
丸十おかき揚げ/鮭の幽庵焼/海老の小袖寿司 
お造り盛り合わせ

土地柄、会席料理は魚介中心だったのもよかったのだろう。メインの海鮮鍋はいいダシが出て、〆のかぼす麺によく合った。私自身が期待していなかったこともあるかもしれないけれど、料理のおいしさには驚いた。また「地元の食材をふんだんに使用」とはよく言うが、くろめや椎茸、かぼすなどのご当地食材をしっかり取り入れており、地元民である実家の面々はちょっとうれしそうだった。そりゃそうだよね。自分たちの知っている自慢の品が宿の料理に使われているということは、県外や海外からの宿泊客も口にするということなんだから。

魚介と旬野菜の豊後鍋
予想と大きく異なり、太くてモチモチのかぼす麺。
これ、魚介の汁とよく合っておいしい。

というわけで、とても満足した夕食だった。

いや、待てよ。まだ朝食がある。母が「塩鯖が小さい」などと言いはじめるかもしれない(笑)。

が、心配は無用だった。

朝食のメインは地獄蒸しで、他にも玉子焼きや身のふっくらとした鯖などが並んだ。特に地獄蒸しはボリュームがあって、完食できなかった。

野菜もたっぷりの地獄蒸し。
地獄蒸し以外にもさまざまな品が並んだ朝食。朝からお腹いっぱい。

夜の館内にはラーメンの屋台やスマートボールなど、滞在の楽しみはたくさん用意されていたのだが、お腹もいっぱいだし部屋でゆっくりしていたらあっという間に眠りに落ちていた。

チェックアウトは12時なので、朝もゆっくり過ごしてぎりぎりにチェックアウト。宿のショップでザボン漬けやべっぴん泉(別府温泉の化粧水ミスト)を買ったものの、近くのトキハ(←大分のデパートといえばここ)の特産品売り場でもお土産を物色して帰った。

お兄ちゃんが倒れて遠くの街へと行き来していたのとは違い、本当の意味での泊まり旅。もう何年も旅をしていなかったので、泊まり旅の感覚を忘れていた。ちょっと復活したかな。

もちろん、姉にはお金を出してもらった代わりに、可愛がっていた子の写真を使ってオーダーメイドした猫クッションとキーホルダーを退職祝いにプレゼントした。「毎晩クッションに向かってひとり言が増えている」とのこと。お気に召したようで良かった。めでたし、めでたし。

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ぶんぶんどー
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