納豆っち、知っちょっかえ?/大分より #方言note
昭和に九州で生まれ育った自分にとって、小学5年生のとき突如給食に登場した「納豆」は、センセーショナルだった。
(以下、方言まるだし弁論大会風にいきます)
「先生、これ、なんかえ? もなくーせーわえー」
(先生、これは何ですか? ものすごく臭いじゃないですか!)
「どげち、くーせーなー」
(どうもこうも、めっちゃ臭い!)
「なしなし? なし、こげくーせーんかえーー?」
(なんでなんで? なんで、こんなに臭いの?)
教室には私を含む生徒が7人おっちょった。
そんうち、納豆がもう家の食卓に上っちょったし(上っていた人)は3人。九州ん田舎じゃきな、こん頃納豆はまだメジャーじゃねかったんじゃえーーー。
納豆を食べたことがある子供んじょうは(食べたことがある子らは)、学校から下(しも)1.5キロに住んじょって、私は学校から上(かさ)1.5キロに住んじょった。どっちも近所に食料品店がねーで(無くて)、一番ちーけー(近い)スーパーが学校から下へ13キロ。店まで車で5分の差じゃけどな、下側に住んじょるし(住んでいる人)の方が圧倒的に店に行く頻度がたけかったんよ(高かった)。
「われかた、納豆っち食べよらんのんか? なしか!」
(お前の家は、納豆って食べないのか? なんで?)
「なんちえー??」
(何だと?)
と、まあこんな感じで口喧嘩にもなったっちゃ。
幼稚園・小学校とあわせて8年間給食を食べたんじゃけどな、どうしてん食べられんかったんは幼稚園んときに出た粕汁と小学5年生から登場した納豆じゃった。
ちなみに粕汁には、「食べないと、家に帰れませんからね!」(←標準語)と先生に叱られ一人夕方まで暗い幼稚園に残され、しまいには冷めきった粕汁をビニール袋に入れて鞄に括りつけられ、持ち帰らされた嫌な思い出があるっちゃ。
で、納豆は、食べる習慣がねーし(習慣がない人)が多いき、食べきらんし(食べられない人)は家に持ち帰るか、友達に食べてもろうかで良かったんよ。
「なーなー、お母さん。今日給食で納豆が出たんじゃけどな、食べられんのなら持って帰っていいっち先生に言われたき、持って帰ったえー」
すると、
「けーくりたまがるな! なし持って帰ったんか! 友達にもろてもらわよかったんに!!」と母。
(はっ?めっちゃびっくり! なんで持って帰ったの? 友達にもらってもらえばよかったのに!!)
※注:「やっちもねえ~」も「めっちゃびっくり!」に近いけど、どちらかというと皮肉で使うのが「やっちもね~」です。「そりゃ、すごいな(失笑)」……みたいな。中国地方では、「やっちもね~」は「しょうもない」という意味だと大人になってから知り、同じことばでも意味が全然違うんだと、けーくりたまがりました!
わが家は、そん後も食卓に納豆は上らんままじゃったっちゃ。ほじゃきな(だから)、誰も納豆を食べきらんままじゃったんよ。
ほったらな(そしたら)、大人になって、ある日帰省したときん朝ごはんに納豆が出てきて、けーくりたまがったっちゃ!!!!!
「なんかえー? どしたーん?」と母。
こんし(この人)、納豆を頬張りながら「納豆食べきらんのかえ? なし食べきらんのかえ? まあー、こげ美味しんに!」っち平然と言うんよ。私、ボー然(笑)。
それからしばらくして、私もやっと食べきるごとなったんじゃけどな、今でもごはんと一緒には食べきらんっちゃ。納豆は納豆だけで食べるごとしちょるえー。
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子どもの頃住んでいた北部エリアのネイティブ方言です。
基本的に「~なんよー」「~なんにー」という語尾が多いのですが、「~じゃきな」「~じゃけん」(~だから)などの広島・山口に近い言い回しと、「そうやっちゃ」(そうなんだー)・「じゃあ!じゃあ!」(そうだ!そうだ!)などのおっとり系宮崎弁が少し混ざったような、ごった煮です。
中学、高校では「日田が天領だった」ことを社会や日本史の授業でしつこく教えられ、そのせいか、“だからイントネーションは比較的標準語に近い説”を導き出す人が多いです(笑)。方言って面白いですねー。
このnoteは、猫野サラさんの#方言noteの募集に乗っかったものです。ギリギリに応募でごめんなさい。楽しい企画をありがとうございました。
それを教えてくれた、かなったさんのnoteはこちら! いつも楽しい情報をありがとうございます。