絆創膏のゆくえ。
冬場、乾燥してくると指先がパックリと割れたり切れたりする。若い頃にはなかったことだ。毎年この季節は、指のどこかにだいたい絆創膏が巻かれている。だけど家事をしていたら、絆創膏は一日持たないどころか、半日持たない。
先日、ごはんを炊く準備をしていたときのこと。利き腕の親指に巻いていた絆創膏が気になるので、反対の手で米をといだ。ごはんが炊けるまでちょっと休憩するか。そう思って、こたつに入って手元を見ると、あるはずの絆創膏がない。
あれ?
俺の絆創膏、どこ行った?
ジワジワと悪夢がよみがえる。
その昔、遠方から友達がライブ参加するためにわが家に泊まりに来た。それは寒い1月の頃。ライブ終了後、家ですぐに夕飯を食べられるようにおでんを仕込んでおいた。
仕込みのとき、たまたま指には絆創膏が……。半日経った頃、巻いていた絆創膏がないことに気づく。洗い物の際に剥がれたのだろうか。安易に考えていたところ、おでんと一緒に煮込まれていたというトンデモ事件が起きた。
おぞましい出来事たった。
それ以来、絆創膏を巻いた状態でキッチンに立つときはかなり気をつかっている。それなのに、ああ、ついにあの二の舞になったか。でも、反対の手でといだよね?
炊けたごはんを恐る恐る調べる。まず、圧力鍋を開けて匂いを嗅いでみた。
ん?
特に異常は感じられない。だが気になるので、しゃもじであちこちホジホジ。よかった、何も異物は入っていない。おいしいごはんが炊けているだけだ。
では、あの絆創膏は何処へ?
流しから台所の床、こたつまわり、ゴミ箱などあらゆる場所を探したが、どこにも見当たらない。頭を抱えてしまった。忽然と消えた絆創膏にモヤモヤ。
一体あいつはどこなんだ。
数日は気持ち悪かったが、それも家事と仕事に追われていたら徐々に薄れていった。
しばらく経ったある日の午後、空腹に耐えかねて冷凍庫をゴソゴソ。レンチンしてその音に振り向くと、ラップに巻かれたコロッケが見えたのと同時に、妙な突起物が見える。
そうです。
やっちまったのです。
あの日ごはんを炊いた後、お総菜のコロッケを冷凍するためにラップで包んだことをようやく思い出す。その際に紛れ込んだらしい指先の絆創膏。俺の絆創膏……。
温まって丸まった絆創膏とコロッケを眺めつつ、なぜよりによって空腹時に食べようとしたコロッケなんだろうかとボヤく。まあ無事に見つかってよかったけど。無事じゃないけど。
皆さまも、指先の絆創膏にはご用心。
***
この話を知人にしたら、「ゴム手袋をはめて家事をすればいいのでは?」と提案された。ごもっとも。しかしながら、包丁を持つときなど事あるごとに手袋をはずすのが面倒で。結局、この面倒くさがりな性格がダメダメなんだと落ち込むことに。
そんなわけで、気持ちを浮上させるために食べるか観るか(ドラマを)を繰り返している。
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