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『くもをさがす』を読んで(自己紹介的感想文)
『くもをさがす』西加奈子さんのカナダでの乳がんのお話し
エッセイ集と思ってたけど著者初のノンフィクションとあったのでお話しという言い方にしてます。
この本を見つけたのはAmazonでたまたま目にした。
まだ販売する前、見つけた時は「え?」って声が出た。
大好きな西さんが乳がん?あれ、お子さん小さくなかったっけ?
購入予約をして届いてすぐに読んでしまった。
1回目読んだとき、
まずカナダでは全身麻酔の手術を日帰りでするなんて!(驚愕)
その他諸々の病院の対応に悲鳴が出そうになる。日本と違いすぎる!
でもそんな病院スタッフや友達、家族などたくさんの人の愛ある関わりをみて感動した。ついつい遠慮しちゃう私だけど困っている人がいたらこんな風に助けてあげれるなって思った。
⦅ぜひ『くもをさがす』読んでみてほしいです!⦆
もちろん健診にも必ず行こうと思ったし、
元々健診にはなるべく行かなきゃとは常々思っていた。
ここ5年くらいは妊娠出産を経てお酒もほとんど飲まないし、自炊もする日も多いし運動は減ったけど、割と健康的な生活を送っていると思っていた。
仕事と育児で忙しくしているから運動だけをする時間なんて取れないよ、と運動についてはすでに少し諦めていた。
午前だけのクリニックでのお仕事は忙しいが、
ある日気になって測ってみた。万歩計によると約1500歩程だった。
頭はひどく疲れるが歩いていないみたいだった。
あと、なるべく人に優しく接することは心がけていた。
主なストレスは職場で新しい人が入れ替わりが激しくて新人指導が全部私に回ってきた事があった。(私しがないパートなんですけど、、、て何度も思った。)
家のこともある、子どももまだ4歳なったばかり、パンツにうんちがついてしまう日なんか、ほろっと涙が出てくる日もあったけど
新人さんたちには罪はないから怒ったり絶対にしないで優しく伝えることをとにかくとにかく心がけた。そして半分はまたやめていった。
西さんの『くもをさがす』を読み終えた次の月に健診の結果が届いた。
それからはクリニックへ通院し、乳がんとわかった。
まさか私が?
こんなに人のために優しく生きてきて食事も気をつけてきたのに
なんで?うちの父親はお酒を毎日飲んでたぬきみたいなお腹して全然運動もしないしなんで私なのかな。(お父さんごめん、健康でいてね。)
自分を大事にしてなかったかなとも思ったりした。
私にも、それが起こった。何か/誰かの意図はなく。がんに罹った人は、原因を考えてしまうそうだ。暴飲暴食が悪かったんだ、睡眠不足が悪かったんだ、仕事のストレスが悪かったんだ、果ては水子の供養をしていなかったからだ、墓参りをしていなかったからだ、まで、様々に。でもそれは誰にでも起こる。
もちろん生活習慣を改善して、がんをある程度防ぐことは出来るだろうし、定期的な検診で早期発見に努めることも出来る。でも、もしがんになってしまったのなら、それはもうそういうことだったのだ。
誰にも起こることが、たまたま自分に起こったのだ。
そうだよね、と自分に言い聞かせた。
何度も読み返して救われた言葉だった。
次に西さんが頭に降ってきた言葉は
「乳首って、いる??」だった。笑
(厳密には西さんがカナダの看護師イズメラルダに言われた言葉)
これはテレビで西さんご本人が言ってる姿も見れて感無量だった。
乳がんの治療を進んでいくにつれて
「じゃあもう先生のおまかせで」
とはいかなくて、自分で選択していかなければならない事が出てくる。
(薬による治療や手術をしないという選択だってできる。)
まず私は標準治療を選択した。
そして乳房を全部とるけど再建するかしないか。
先生からは並々ならぬデリケートな話である雰囲気は感じた、
クリニックでもがんセンターでも男性の先生だったから
そう感じたのかもしれない。
でもみな嫌な感じのしないいい先生ばかりだった。
ある先生は「再建については旦那様とよくご相談してください」といい
ある先生は「再建も含める手術では時間が長くなるので手術時期が遅くなることがあります」と教えてくれた。
そこで「乳首っている??」だった。
(私にとっては乳房っている??にもなった。)
手術が遅くなることの方が嫌だと思ったし、
私の体だから夫に申し訳ないとか思うことはない、と思った。
今は病気のリスクを少なくする事を最優先に考えたい!
と自分の中の方針が決まって、気持ちが落ち着いた感じだった。
(もちろん夫にもそう伝えて話し合った。)
自分の子どもは今4歳。
西さんがカナダで頑張っていた時のお子さんSさんと同じ年齢。
いっつもぎゅーっとして寝ていたから胸がなくなると寂しいかな
とふと思ったけど、どんな私でも絶対好きでいてくれるだろうと確信していた。
Sに感謝したい。あなたは私の光だ。あなたといる一瞬一瞬が、奇跡であることを忘れたくない。あなたと、あとどれだけ一緒に過ごせるだろう。眩しくても、目を逸らさず、あなたの姿を、網膜に焼き付けようと思う。生まれてきてくれて、本当にありがとう。
入院する前にもう一度、
そして入院中にもう一回読みました。
選択の時に迷いながらもずんずん進んでいけたのは
『くもをさがす』のお陰といっても過言ではないです。
確実に2023年、わたしの背中を押してくれた本のひとつになりました。
ちなみに西さんの『サラバ!』も
入院中は上下巻持っていき励まされました。
時間が取れないとなかなか本って読めないけど、
時間をかける分じんわり漢方みたいに心に残るような気もします。