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お家のお庭にアポロ像

海外に向けても巨大な影響・知名度を誇った作家の御三家といえば、三島由紀夫、谷崎潤一郎、そして川端康成である。

三人が三人とも、日本の美を書いてきた作家である。

そして、全員が全員、一種の権威主義者である。

特に三島由紀夫は凄まじい男である。三島由紀夫のお家には、巨大な像がある。大理石のアポロ像である。
お家の庭に、どん!とワンピースよろしく白亜のアポロが立っているのである。
そんな家、嫌である。然し、いかめしい銅像を、金持ちや権威主義者は持ちたがるのである。それは彼らの成功の証であるから。

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また、谷崎は引っ越し魔で有名だが、晩年、熱海に居を移す前、京都の潺湲亭(現日新電機所有の石村亭)を所有していて、ここは大変立派な日本家屋で、下鴨神社裏手の糺の森の裏手に佇んでいる。
こんな豪華な邸宅で、彼は作品を書いていたわけで、美味しく豪勢な食事にも目がなかった。

川端康成は古美術に目がない。シャイム・スーティンとか池大雅とかの絵が大好きで、借金をしてでも高価な絵を買ったりしている。3000万円とかする絵をなんとか金を工面して買うのであるが、大量のコレクションに囲まれていて、中には埴輪と一緒にポーズを決めて笑顔をみせている写真もある。
そうして、この絵には日本の美の魂が連綿と流れている、私はその源流に心が洗われる思いがした……的な文章を書いて、大金を稼いでる。

つまりは、三人が三人、俗物なわけである。

特に、庭に大理石のアポロは渾身のギャグだと言っても差し支えないかもしれない。三島由紀夫は基本的に全身でギャグを演じているとしか思えないのだが、やたらと人気がある。分かりやすい権威の目くらましに騙されている人が多いのだろうと思われる。

この御三家たちは、翻訳作品も多いので、ノーベル文学賞の俎上に上がって、一人は実際に受賞した。文体が特殊、かつ、日本的ではない文学を書く人間は、この三名より筆力が上でも海外の賞は獲ることは出来ない。

役割を全うすることが、勝利への近道なわけで、それが本心からの作品なら何も言うべきことはないが、ポーズであるのならば、これほどに哀しいことはない。

然し、『金閣寺』や『癩王のテラス』の構造を見る限り、やはり三島自身は絶対的に確信的にアポロ像を愛していた筈である。

谷崎も、川端も、どこかで客観性も保持していたように思われるが、御三家の中で唯一、客観性が行き過ぎて、逆に天然の塊になっているのが三島由紀夫のように思われる。

三島は、恐らくはポーズの塊であるが、それを最後まで全うした点で、一つの神格性を勝ち取ったのではないだろうか。
アポロ像は、三島にとっては成功の証ではなく、彼の根源的な自他への愛そのものの具象であろう。



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