短歌と黄色いイスとアルマーニと、私。
先日、名古屋のジブリパークに赴いた際に、運転中に春日井の標識が見えた。名古屋。春日井。春日井建を思い出す。
春日井建は65歳で亡くなった。2004年のことだ。生まれは1938年である。
今年で没後20年になる。
春日井建が青春時代を過ごしたのは、1950年代〜1960年代になるわけだが、私はこの時代にはそれほど思い入れがない。
また、私は、名古屋には、あまり思い入れがない。
然し、春日井の街には行ってみたいと思ったりしたりなんかする。春日井建は光が丘に住んでいたのだという。ちょいと時間を作って、周辺の散策をー。
然し、そんなこと出来ようはずもない。ちょっと進路変更して街をぶらり旅、なんて、ジブリパークを前に、それを楽しみにしている者たちから許されることがあろうはずもない。
名古屋、には、その街出身の文化人・文人たちを紹介している、文化のみち二葉館なる展示施設があって、そこは川上貞奴の旧邸であり、そこは二葉御殿と呼ばれる財政界人のサロンになっていたのだという。
それを見たかったのだ。然し、京都から名古屋、というと、車ならばトータル10,000円〜12,000円くらいかかる。私にはそんなお金はない!
なので、寄るついでに、と思ったが、やはり無理だった。
どうやら、5/22、つまりは、明後日からなのだが、春日井建の展示があるようで、トークイベントなどもあるようだ。
展示のタイトルは『春日井建展 三十一音のコスモス』。
なんというタイミング。然し、観ることは叶わない。
何故ならば、京都から名古屋、というと、車ならばトータル10,000円〜12,000円くらいかかるからだ。
この、文化のみち二葉館、私の想像するに、普段は人気がほぼないと見る(いや、想像だよ)。つまりは、私の大好物の文化的建物、ということだ。
私は人間が嫌いなので、人が多い所が嫌いなのだ。いや、正確には、こういう文化的なところでは一人で過ごしたいのだ。京都は人が多すぎる。とにかく美術館の類。美術館は数名で十分だ。混雑、というものは、美から一番離れている。混雑の美、というのもあるかもしれないが、よしんばあったとて、私は嫌いである。やはり、スペース、から美は産まれるのだ。
ここには、春日井建の部屋に置かれていたテーブルや黄色いチェアなどがあるのだという。
春日井建の書斎は二十畳ほどあり、中央に革張りのデスクが置かれて、そこにこう、イタリア製の黄色いイスを置いていたのだという。そして、棚には新刊の本がずらりと並び、春日井建の第二歌集『行け帰ることなく』の装丁を担当した加納光於の銅版画やアンディ・ウォーホールのシルクスクリーンが飾られていたと。
私はこれを本で読んで識った時に、なんて洒落た部屋の作りなのだろう、とそう思った。ハイカラーである。まさに、ハイカラー。
やはり、部屋、というものは、何時だって、どんな時だって、自分を自分たらしめる場所、なのである(マッキーのパクリ)。
そういう意味で、芸術家である以上は、部屋の隅々まで、その美意識を張り巡らしたいものだ。
とはいえ、私は無一物にも憧れる。どちらがいいのかわからない。然し、とにかく黄色い椅子、というのはカッコいい。私はイエローが好きだ。いや、まぁ、一番好きな色ではないが、家具のイエローはいいと思う。赤とか、緑、もいいけれども、家具では、それも椅子ではイエローが一番格好いい。
そこで私も黄色い椅子を購入しようと、色々見繕うことにした。
人真似は恥ずかしいことだ。然し、文章でもなんでも、模倣が一番上達するのである。真似事、その差異が、藝術を藝術足らしめるものなのである。
まずはこれ。価格は14,800だ。
なんというか、私でも買えそうだ。14,800円は大金である。なにせ、京都から名古屋、に行こうとすると、車ならばトータル10,000円〜12,000円くらいかかるからだ。
では、こういうのはどうだろうか。値段は一気に上がって10万円を超える。王族の椅子のようだ。なんとなくだが、春日井建は座って無さそうな椅子だ。どちらかというと、ノクティス・ルシス・チェラムあたりが座していそうな椅子である。まぁ、彼は黒党なので、黄色は選ばないだろう。
おお、ではこれはどうだろう。
カリガリス。私は初めてその名を聞いた。カリガリス。キリギリス、のような名前である。
それからこちら。これは色が選べてイエローもある。これならば、足の疲れを癒やしながら、漫画本を自堕落に読んで、そのまま寝落ちできそうだ。
然し、やはり値段は10万円以上もする。高いなぁ。いい椅子は高いなぁ。
然し、春日井建、アルマーニのスーツを来て、ベンツに乗る、そんな大学教授。アルマーニ。私はアルマーニが好きだ。いや、アルマーニの服なんて持っていないが、やはりそこはアルマーニ、名前の響きだけで、なんとも蠱惑的ではあるまいか。
まぁ、私はイエローな椅子もいいけれども、それよりも、実は、やはり、そこは、フランク・ロイド・ライトのデザインの椅子、あれが欲しい者である。
先日、ジブリパークに合わせて明治村にも行ったのだ。なんと、私が行ったその次の日くらいに、5000万人目の来場者が来たのだという。ええ!う、羨ましい……ね、妬ましい……!私だって5000万人目になりたかった!
まぁ、そんなことはどうでもよく、お目当ての帝国ホテルである。あの帝国ホテルの椅子、あれが、オシャンティなロビーに鎮座していて、なんとも素敵な風情。でもね、私が一番欲しいのは、なんと言っても『ブレードランナー』に登場した椅子、なんだよね。フランク・ロイド・ライトではなく、チャールズ・レニー・マッキントッシュだね。
値段はなんと200,000円を超える。然し、あの、レプリカントのレイチェルが座ると、なんとも風情があっていい感じだ。
春日井建の話から、私の欲しい椅子の話になったが、無論、そんな金はないし、今ある椅子を愛でるとしよう。
まぁ、名古屋、東海、というのは、春日井建を思い出す場所だ。