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書店パトロール62 手に入れちゃあおしまいだ

最近、落語の本が増えている気がする。

各都道府県の県民性、その県の特徴をテーマに落語にした作品をいくつか紹介している本のようだ。京都、愛知、奈良、山口、東京……。これはもう、次第には、アジアに拡大し、世界、果ては宇宙まで……。何かと何かを連結し、組み上げていくのは藝術の基本である。

そういえば、『あかね噺』においても、落語ヴァース的な、そういう、よくわらかん能力が発動していたが、『あかね噺』ももう13巻、『幽遊白書』で言うならば、仙水編に突入する巻である。
然し、何か、こう、まだ一向に、1つ目の山すら来ていない気がするがー。

次に手にしたのは、落語小説、である。落語漫画、と、いえば、『どうらく息子』が私の推しではある。やはり、芸事というのは、日常の問題にこそ直結して物語性が生まれるのではないか、と思う今日このごろ、私はこの本を手に取り、逡巡し、買わない。

まさか……そんなことが……!?帯には、自己啓発×落語噺、とある。自己啓発本ではあるが、要は、人間の悩みというのは、昔から変わらない、ということだ。同じような悩みでくよくよし、それが年齢の春夏秋冬で変化していく。それだけの話しである。

落語本、多いなー、と思いつつ、まぁ、落語好きは本好きも多そうだし、需要がありそうだな、とも思いつつ、藝術本を見る。

めちゃくちゃ分厚い本を発見。なんと800ページを超えている。インタビュー、論考、という構成で、まぁ、私はインタビュー本や対談本が好きなので読んでみたいし、ページ数の割に価格も良心的だ。
最近薄いのに2,000円超えの本も多く、辟易していたが、然し、これも物価高、のせいであろうし、しょうがない。恐らく、2010年代に1,500円くらいの本が、今は2,000円になっているのだろう。2,000円の本が2,500円、2,500円の本が3,000円、これはもう、物価高、のレベルではない。

これは昨年出た本。平積みで置いてあった。女學生、エス。高畠華宵の絵がいっぱい載っている。それから少女小説も。私は高畠華宵が好きだ。こういう、少女小説の作者の代表のYASUNARIは、女性の綴方(作文)を寸評するコーナーも雑誌で持っていて、女性の作品を読むのが好きな変態だった。
YASUNARIは昔の人なので、男尊女卑が激しい。基本的には、見たままを素直に書くことを推奨しているのだが、素人はそれで良い、という印象。プロはまた違うのよ、あんたらはプロじゃないからね、という傲慢さが、寸評からも感じられる仕様。
まぁ、川端康成は才能の青田買いが好きなのである。

さて、その次に手に取ったのは、井上芳雄の対談本。

このメンバー、まさに七武海、といっても過言ではない、そのような重鎮たちとの対談本。こういうのは、色々な裏エピソードが語られたりして、読んでおきたいのだが、値段が……。やはり、3,000円以上する本、というものは、なかなか生半には手を出せない。これもまた、物価高、である。
当然、私はこの本も買わなかった。
今日は、何か、他にもいい本に出会える気がするのだ。

その後、文学棚で、『或る英国俳優の書棚』という本を発見し、パラパラと。

何か、書棚、とか、そういう単語が目に付くと、ついつい手を伸ばしてしまう、これはまぁ病気、のようなものだが、値段が4,000円。高い!でも洋書の古書の書影も大量にあって、ああ、これ欲しいなぁ、でも諦めるか……で、諦めて、どうしようか。すぐ横には、国書刊行会から出された巨大な辞典が。

おお、表紙はギュスターヴ・モローのスフィンクス。然し、値段がウルトラにたけぇ!こんな辞典はブルジョワのインテリの遊びだわい、と棚に戻し、まだまだ書店をウロウロ、ウロウロ、と、していると、横尾忠則の小説に行き当たる。

装丁は横尾忠則自身。おお、と読んでみると、もう2年も前の書籍。で、これは凄いなぁ、と思うのは、ウルトラに分厚いのと、延々と会話、というか、コメント、それも、古今東西の藝術家たちがオールスターで総出演して、何やら自身の言葉を紡いでいる。これは凄いなぁ、と思いながら、もはや病気の域じゃろがい!って思いつつ、然し4,180円は出せない……!

で、その横、2020年頃出版された日記に手を伸ばす。

こっちはまださっきの小説よりは理路整然としている、それでも狂ってはいるが……。うーん、これも悩ましいなぁ。

なーんて考えながらも、然し、答えは決まっている。そう、買わない。
だって、買う、ということは、所有する、ということは、もう喜びの終わり、であり、つまりは、手に入れようか悩み、あの悶々、と、いうものを、おのずから放棄するようなものであり、やはり、書物、というものは、手に入れる前が一番楽しいのであり、手に入れると、急に色褪せる。

そうでないものも、あるけどね。








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