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書店パトロール53  本を出したい!と狂おしいほど熱望している人もいるのに果たされず、今日もどうでもいい本が出版されている、の巻

軽い本が読みたいなぁ、と思っている。然し、意外と、なかなか、軽い本を買う勇気が出ない。

本は、その質量に応じて金額が異なるが、然し、軽くて読みやすい、そういう本までもが、最近は高額である。
本にまつわるエッセイなど読みたいところだが、然し、値段が高い。命を刈り取る値段をしてるだろ?そう、本が語りかけてくる。
私の言う軽い本とは、例えば、こういう本である。

何も考えずに読み、右から左へ受け流す。そのような本。いや、多少は考えるのだが、枕辺に置いて愛でる類ではない、ということだ。

noteを読んでいると、皆が皆本好きに思えるが、然し、そんな人間は実世界においては珍しいのであって、現実には、誰も本を読んでいない。そういう、本好きという異端者が集うサバト(錆兎ではない)がnoteであり、ここは、異常者の待合所である。
然し、それも罠で、たいてい書評家を名乗る奴は本当には読んでいないのだ(偏見)。
つまり、私もその世界の下層に棲み着く輩であり、もはや、眩いばかりの空を見上げるのみの哀しい存在だ。

そんなことを考えていると、三島がいた。三島が何か訴えている。

三島の本は定期的に出続けている。もう半世紀以上も。私はこれを買わなかった。買ったところで積読になるのは目に見えているのである。私も読んだふりをして、知ったかぶりを平気でする。当たり前だ。人間は全員嘘つきなのだから。

そして三島、この、政治と革命、という、もろ三島、的な要素に、私は辟易しているのである。
然し、優れた文学作品、というのは、半永久的に論じられ続ける。基本的には堂々巡りだが、然し、それが時折本質に触れることがある。そういう、本質に触れる評論こそがオモシロイのである。

さて、その横には大谷崎の『細雪』の文字が。

タイトル、の美しさのみで競えば、私は『細雪』が一番好きである。そして、川端康成の『雪国』も大好きな小説だが、まぁ、この、2つの雪を足して、私は雪雪なのだ。それから、愛する『ブレードランナー2049』の雪も常にこの名前の中に降り積もっている!

さて、そんな『細雪』。長い長い小説である。ぶっちゃけ、私は中巻の内容をもう忘れている。このロングノベルにまつわる本、『細雪 詩学』。その厚さに慄きながらも手に取ると、まずは価格を見る。5,500円!う!高額ぅ!高額ぅ!
内容もその分厚さに恥じない感じのこれまた特濃。私はそっとその本を棚に戻した。

それから、今度は江藤淳の本に目が行く。

この前からちょっと気になっている、江藤淳と大江健三郎の対談本も欲しいのだが、然し、やっぱりお金がNothingで断念。大江健三郎は小説よりも喋っている方が面白い。いや、ほぼ全部の小説家は喋っている方が面白い。小説、という、文章芸術に昇華する前の、生の言葉の方が飾り気がなく好きだ。

で、今度は『光る君へ』の文字が帯に刻印された書物が何冊も何冊も並んでいる。今こそが売りどきであることは間違いない。
その中でも、『道長ものがたり』は非常に気になる本だ。

私はそれを手にして、うっと、その本の手触りに驚く。うーん、朝日選書って、なんかカバーの質感といい、本の重さといい、しっとりとした紙質といい、これ、造本の中でも一番好きかも〜。なんか本の重みを感じるね。
それから同選書のこちらの本も気になるが、重く、時間がかかりそうだ。


さて、映画コーナーに移動し、フィルムアート社から発売されたばかりの2冊を見つめる。

一つはマーベルの本である。なんというか、つい先月公開されたばかりの『デッドプール&ウルヴァリン』は、
本国では既に先週末で4億ドル弱稼いでおり、まぁ、日本円にして、600億円くらいなのだが、ウルトラ極限のヒットである。これが『インサイド・ヘッド2』とかだと、既に1000億円くらい稼いでいて、まぁ、私の年収、或いは、大谷翔平選手の10年分のギャラと同額ほどだが、とにかくとてつもない額である。
と、そういえば、最近、次回の『アベンジャーズ』のタイトルが、カーンダイナスティからドゥームズ・デイに変わったのを聞いて、うーん、ジョナサン・メジャース……。と悲しい思いがあふれるばかり。
ドクター・ドゥームをロバート・ダウニー・Jrが演じるという離れ業を持ってして、シリーズのカンフル剤映画となるのだろうか。
 
で、この、『マーベル』の本は、まぁ、なかなかに厚い本で、フィルムアート社から出ている本、というものは、基本的には私の味方なので買いたいのだが、正直、その、マーベル映画自体に食傷気味であるから、重い腰が上がらない。
で、その横には、同じくフィルムアート社から発売されている、ホラー映画にまつわる本があった。

2,500円である。うっ、高い。私はホラー映画は大好きだ。なので、この本にも唆られるし、寧ろ、こういう本を買わないで、何がホラー好きなんだ?と、そういう声が耳朶に谺している。
糞ぉ!とばかりに誘惑を振り払い本を投げそうになるが、おっと、これは売り物だ。丁寧に傷がつかないように、そっと棚に戻す。

結句、お金、である。お金があれば、この書店ごと買ってやってもいいんだ(偉そう)。そんな気持ちで、私は腕を組み、さも買う本を真剣に選んでいるように眉間に皺を寄せながら、その実、また立ち読みか、という書店員さんの視線をくぐり抜けて帰る方法を思案しているのだった。

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