古書ハンター
特殊な装丁の本がある。
『HUNTER×HUNTER』のジン・フリークスはゴンと再開した時、「道草を楽しめ、大いにな。」と語っていた。
そう、特殊な本というのものは、手に入れてしまうと不思議と色褪せてしまう。
それを手にするまでの過程こそが、輝くものなのである。
古書でも、入手難易度には、
①数量が少ない
②価格が高い(①と比例しやすい)
③なかなか市場に出ない
などがあり、下記の本などが該当すると思われる。
入手難易度:A 川端康成『古都』牧羊社版 東山魁夷装丁 限定30部光悦垣装
これは『古都』の特殊版で、30部限定の本である。牧羊社から刊行されており、まず市場には出てこない。価格は100万円くらいはするだろう。
同じ東山魁夷の装丁で、1200部限定(入手難易度:D)と350部限定(入手難易度:C)があるが、これは数万〜十数万出せば買える、要は金が物を言うので比較的容易に手に入る。
入手難易度:B 川端康成『伊豆の踊り子』江川書房版 小穴隆一装丁 限定180部本
これは比較的市場に出てくるが、最大の問題として、価格が高い。
安くて30万円、高ければ70万くらいの値がつく。
入手難易度B: 谷崎潤一郎 『細雪』 私家版 限定200部
これは、戦中に谷崎が私家版として出したもので、たまに古書目録に出る。大抵は20万円とか30万円くらいで、べら棒な額ではない。
入手難易度A: 中原中也 『山羊の歌』私家版 限定100部
この中原中也の詩集もまた今ではべら棒に価値があり、当時は全く売れていない。借金をしてまで出版した本である。
これは私も現物は見たことがあるが、大層大きかった印象がある。
これは100万円くらいが相場である。これに近いのが、同じく私家版の宮沢賢治の『注文の多い料理店』と『春と修羅』の初版本で、これもまた数十万円はする。
入手難易度:S エドガー・アラン・ポー『大鴉』豪華本 ステファヌ・マラルメによるフランス語訳 240部限定本
これは考える限り、ウルトラに高価値の本である。ポーの作品をマラルメが訳して、マネが装画を担当した。海外で、たまにオークションに出るが、ネットオークションとかは訳の違うオークションで、値段は1000万円規模である。何百万〜何千万円とする稀覯本なので、常人には触れることすら出来ないだろう。
ちなみに、日夏耿之介訳の日本語版豪華本を存在する。
こんな感じで、古書はその希少性でも価値は大きく変動するのだが、
然し、やはり市場に出てこないものこそが、真に手に入れるのが難しいもので、なかなか人が手放さないトレジャーである。
それはタイミングだとか、幸運も重要である。
自筆の原稿なども、意外に手に入る。全ては金であるが、
作家も腐るほどに原稿はあるので、重要作以外は、意外とネットでも転がっていたりする。無論、十数万〜数百万円するが、作家本人の書いたものであるから、ファンには最大級のお宝であろう。
書簡はもう少し価値が落ちる。大抵、無関係の人間が買える書簡というのは、重要な恋文や、文学史に残る創作の息遣いとは無縁の、日々の身辺のことだったりするが、唯一無二のものではあるので、好きな作家のものはお宝であろう。
手に入れたいものを手に入れられるかもしれない瞬間、この瞬間が最大に面白く高揚する。手に入れてしまうと、それはただの紙で、それ以上のものではなくなる。蒐集にはきりが無い。人間の欲望にはきりが無い。