【徒然草 現代語訳】第百六十三段
神奈川県大磯の仏像専門店、仏光です。思い立ってはじめた徒然草の現代語訳、週一度程度で更新予定です。全244段の長旅となりますが、お好きなところからお楽しみいただければ幸いです。
原文
太衝の太の字、點うつ、うたずといふ事、陰陽のともがら、相論のことありけり。もりちか入道申し侍りしは、「吉平が自筆の占文の裏に書かれたる御記、近衛の関白殿にあり。點うちたるを書きたり」と申しき。
翻訳
太衝の太の字に点を打つ打たないを巡り、陰陽師たちの間で侃々諤々の論争になったことがあったらしい。その折、もりちかの入道がこう申されたそうだ。「安倍吉平自筆の占文の裏に書かれた御日記が、近衛関白家に伝わっている。そこには点を打って書かれている」と。
註釈
○太衝
たいしょう。陰陽道で九月のこと。
○もりちか入道
伝不詳。
○吉平
安倍吉平。安倍晴明の息子。
○御記
読みは「おんき」、もしくは「ぎょき」。天皇、もしくは摂政関白の日記。
かつては太宰治の太も時々迷いましたが、今やワープロ機能で自動的に打てるようになりました。
字は間違えて覚えるもの。味気ない世の中になったもんです。
追記
太宰治で好きなのは、長編「斜陽」、短編「満願」、戯曲「冬の花火」、随筆「如是我聞」です。