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【徒然草 現代語訳】第百五十一段

神奈川県大磯の仏像専門店、仏光です。思い立ってはじめた徒然草の現代語訳、週一度程度で更新予定です。全244段の長旅となりますが、お好きなところからお楽しみいただければ幸いです。

原文

或る人のいはく、年五十になるまで上手にいたらざらん藝をば捨つべきなり。はげみ習ふべき行末もなし。老人のことをば、人もえ笑わず。衆に交りたるも、あいなく見ぐるし。大かた萬のしわざはやめて、暇あるこそ、めやすくあらまほしけれ。世俗の事に携はりて生涯を暮らすは、下愚の人なり。ゆかしく覚えむことは、學び聞くとも、その趣を知りなば、おぼつかなからずしてやむべし。もとより望むことなくしてやまむは、第一の事なり。

翻訳

ある人がこんなことを云った、五十になるまでにものに出来ない芸なら即刻捨ててしまうべきだ。この先練習に励んだところでまず見込みはない。頑張ってる老人を目にしてしまうと、笑うに笑えないではないか。大勢に混じってちょろちょろやっているのも、鬱陶しいしみっともない。何事につけ老境に達したら仕事も習い事もやめ、悠然と構えているのが見映えがよく、あらまほしい姿である。世俗の雑事にかまけて一生を終えるのは、下の下の愚人である。詳しく知りたいと思うことでも、ひと通り学んで聞いて、概要を掴んだら、とりあえずわかったというあたりで止めておいた方がいい。そもそも埒もない探求心なんぞ起こすまでもなくあらゆることから手を引くのが、最善ではあるのだが。

註釈



この段、初めて読んだのは大学時代でした。
50までならまだ30年あるなー、と高をくくっていましたが……、気が付けば来年還暦ですわ。

追記

女が女を毛嫌いするのはこれまでずいぶん見てきましたが、この歳になって判ったのは、老人はどうも老人が嫌いのようですね。

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