【徒然草 現代語訳】第百七十八段
神奈川県大磯の仏像専門店、仏光です。思い立ってはじめた徒然草の現代語訳、週一度程度で更新予定です。全244段の長旅となりますが、お好きなところからお楽しみいただければ幸いです。
原文
或所のさぶらいども、内侍所の御神楽を見て、人に語るとて、寶劍剣をばその人ぞ持ち給ひつるなどいふを聞きて、うちなる女房の中に、別殿の行幸には、晝の御座の御劍にてこそあれとしのびやかにいひたりし、心にくかりき。その人ふる古き典侍なりけるとかや。
翻訳
あるところの武者たちが、宮中内侍所の御神楽を観て、人に「宝剣である草薙の剣を誰それ殿がお持ちだった」と語ったところ、御簾の内でその話を耳にした女房が「別殿にお渡りあそばす際にお持ちになられる剣は、昼の御座の剣です、宝剣ではございませんよ」とひっそり呟いたのは、気遣いと奥ゆかしさが感じられた。なんでも古参の典侍だったそうだ。
註釈
○別殿
読みは「べちでん」。
○行幸
読みは「ぎょごう」。
○宝剣
草薙の剣。
草薙の剣は天皇の御寝所に安置されるものでした。今はどうなんでしょう?
追記
草剪君の剪という字は、長らく変換されませんでしたね。