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【徒然草 現代語訳】第百七十六段
神奈川県大磯の仏像専門店、仏光です。思い立ってはじめた徒然草の現代語訳、週一度程度で更新予定です。全244段の長旅となりますが、お好きなところからお楽しみいただければ幸いです。
原文
黒戸は、小松御門位につかせ給ひて、昔ただ人におはしましし時、まさなごとせさせ給ひしを忘れ給はで、常にいとなませ給ひける間なり。御薪にすすけたれば、黒戸といふとぞ。
翻訳
宮中の黒戸の御所は、光孝天皇が即位なされ、かつてただの親王であられた時代に、手ずから料理をなさっておられたことをお忘れにならず、即位後も常にご自分で料られておられたお部屋である。その際に使われた薪で煤けているので、黒戸と呼ばれる。
註釈
○小松御門
こまつのみかど。第58代光孝天皇。830年~887年。陽成天皇の退位を受け、55歳で践祚。宮中行事の再興に熱心で、文人天皇として慕われた。百人一首に採られた「君がため春の野に出でて若菜つむわが衣手に雪は降りつつ」の詠み手。
○まさなごと
正無事=ありえない事、不適切な事。天皇自ら料理をするのは考えられないので。
○御薪
読みは「みかまぎ」。薪の敬称。
光孝天皇は相撲を奨励したことでも有名です。