【メンバーインタビュー】"R&D in Food Science" Vu Bich Hanh
「コオロギにはコオロギにしか出せない味がある」
いつも考えるのはコオロギのレシピ。幼少期に食べたコオロギの原体験が刷り込まれたDNAは社内の誰よりも高鳴ります。
商品開発の相良さんと活躍すると同時にBugMoいちのアイデアマンとして、新しい日々レシピを生み出します。なぜ、日本ではコオロギパウダーが主流なのか、ハンさんが日本で働く意味とは。
兄とコオロギを取って食した幼少期、食品開発に見出した大学時代、懐かしいコオロギとの新しい出会い。「コオロギにはコオロギにしか出せない味がある」と楽しそうに語るハンさんに迫ります。
プロフィール
Vu Bich Hanh "R&D in Food Science"
コオロギの養殖・加工方法の検討 味の数値化の基礎研究・商品開発
香川大学院農学研究科日本の食の安全特別コース修了。その後、大手食品メーカーにて冷凍食品の生産・品質管理を経験。美味しくて安心・安全な昆虫食を届けるため、研究・改良。
それでは、ハンさん!よろしくお願いします。
〇ベトナムでの幼少期
ベトナム、ハノイ近くの田舎の街で生まれました。よく、お兄ちゃんと畑で遊びながらコオロギとバッタを取って食べていました。普通に食べられて美味しいものとして認識していたので、欲しくなったら取りに行くという感じでした。
少しして、父の転勤でホーチミン市のにぎやかな所へ引っ越ししました。
ホーチミン市や都市部の方では、昆虫食はそこまで食べられておらず、機会もなかったのでほとんど食べなくなりました。強いて言うなら、男性が居酒屋のような場所でお酒のおつまみとして食べるぐらいで、女性は見た目を嫌がってほとんど食べていなかったように思います。ベトナムの中でも大きく差があって、どちらかというと、貧しい人や田舎の食べ物というイメージが付いていましたね。
-お兄さんとどのように食べていたのですか?
しっかり炒めて、塩コショウやチリパウダーをまぶして食べていました。
下処理も行っていて、頭を掴んで回しながら引っ張ると内臓も一緒に付いてくるので、一匹ずつ丁寧にやっていました。なかなか面倒ですが、臭みの元になるので美味しく食べるためには必要な作業ですよ。冷蔵してしまうと、固くなって取れなくなるので注意ですね。
足と羽は取って別にして、あとはフライパンに油をしいて炒めるだけです!
私が住んでいた所では、一般常識として兄弟が下の子に教えてあげるのが普通でした。
-小学校・中学校時代
小・中学校では、両親が厳しかったのもありずっと勉強をしていました。
それでも中学生の頃は日本の漫画を読むことが好きで、ずっと日本に行ってみたいと思っていました。今でも読んでいますが、当時は、ドラえもん・名探偵コナン・ドラゴンボール、、、なんでも手に取りました。それもあって、大学では留学に行こうと決めました。
高校でも勉強をしていていて、両親からは経済を学べる大学に行ってほしいと言われていました。自分が何をやりたいのか一番悩んでいた時期で、それでも人に言われて決めるのも嫌でした。そこで考えた結果、工科大学に行くことにしました。
というのも、食べ物の好き嫌いが激しくて、誰でも美味しく食べられる新しい食品はないかといつも探していました。そんな思いを実現できる食品関係の学部が、工科大学にあって得意だった理系科目を活かすこともできたので、そこへ行くことにしました。その時に初めて、将来は食品開発をして働きたいと思いました。
母からは大反対されましたが、国内でも有名な工科大学だったので何とか許してくれましたね。
〇大学時代
入学後は、本当に自由に好きな事をしていました。
やるなら人の役に立つことがしたいと思い、年配で家族がいない方へ訪問し、話し相手やお世話をするボランティアをしました。とても、良い社会経験になりました。
このボランティアのおもしろいところというか、変わっているところがあって、、、
ボランティアのために、100km離れた田舎へ自転車で8時間かけて行くことが恒例だったんです。しかも、50人のグループで一気に走りました。
それは、必ず目立つようにしていて、街行く人に話しかけられては止まり、ボランティアをしている事を伝えながら走っていました。多くの人に現状を伝えることも大切な活動でした。
その後も論文を書き始める前までは、ユニセフのボランティアに参加するなど精力的に活動していました。
〇香川大学 日本の食の安全特別コース(修士課程)
論文の執筆中に急な脱力感に襲われ、一番忙しい時期でしたが、一か月間の香川大学の日本の食の安全特別コースに行ってみることにしました。このまま卒業を迎えてもいいのかという焦燥感と、在学中に何かクレイジーなことをやりたいと思っていたのかもしれません。
そこでは、食品企業と連携してアジアを中心とした留学生と実践的な教育を受けることができました。
日本語の勉強と冷凍食品の技術に関する授業を受けながら、研究を並行して行っていました。香川が名産のオリーブを活用して、卵のタンパク質の機能性を高める研究をしていました。とてもハードでしたが、日本人学生の先輩から、「これを乗り切ればもっと強くなれるよ」と励ましを頂き何とかコースを修了できました。
-他の留学生との交流はどうでしたか。
彼らはとても熱心に勉強するし、国のために挑戦したいという思いがひしひしと伝わってきて、すごく刺激になったことを覚えています。ベトナムでは勉強がきつくて、夢だった食品開発の仕事への情熱を忘れかけていましたが、一緒に過ごして自分が何をすべきか分かったような気がしました。人生を変えるような経験でした。
ベトナムへ帰国後は先生に激怒されましたが、やる気はみなぎっておりすぐに論文を仕上げて卒業しました。(笑)
〇JT系列食品会社
卒業後は、日本で冷凍食品メーカーに就職しました。
冷凍米飯の食品工場に配属され、包装担当を一年・品質管理を一年やっていました。最初は包装の重要性が分らなかったのですが、長く保存する食品なので袋に少しでも傷があると品質劣化につながることを学びました。
その後は、研究開発を希望しましたが新型コロナウイルスの影響で配属されず、同じ工場の品質管理を担当しました。食品の管理はもちろんですがお客様対応も行っており、ご指摘いただいた問題の原因が工場なのか、別なところなのかを検証することもしていました。
二年で食品管理の実践ができてすごく勉強になったのですが、ルーティン作業になってしまい、やりたいことができなかったので転職を決めました。
〇大手食品メーカー
次は、コンビニチェーンの弁当を取り扱う食品メーカーで働きました。
食品工場では、アジア系の方々が多く働いていたのですが、日本人スタッフとのコミュニケーションが上手くいっておらず、関係はとても悪くなっていました。人数が多い分管理がとても大変でした。作業しながら覚えていくことがほとんどで、自国のやり方で進めて指摘されたりと、円滑に仕事を行えていませんでした。私は、間に入り通訳をしていたので、自分の仕事を全うできませんでした。しかも、何も問題はないのに怒られたりを繰り返していました。
どちらに非があるかではなかったのですが、人間関係の重要性を身をもって知りましたね。
そして、挑戦したい気持ちと安定したシステムの中での動きづらさ、外国人の立場でのハンディキャップを感じることもあったので、ベンチャーや中小企業に絞って転職活動を行うことにしました。
仕方がない事なのですが、単純に私の性格の話で、大企業には合わないと気づけたのも勉強になりました。
-大企業を二社経験してどうでしたか?
食品業界だからこそ当たり前で、でも本当に気を付けないといけないことを学べました。
もともとは大雑把な性格だったのですが、品質管理が特に重要視される食品工場で働けたことで、細部まで管理することの大切さを改めて知りました。他の所の商品が、品質管理の怠りが原因で大規模回収になったのを見た時は、責任感を強く感じました。
それと、工場の経験がない人とある人では全然違うことも分かりました。品質の判断基準が分かるのは強みで、BugMoで食品開発をしている時にもとても役に立っています。食品全般に言えますが、特に昆虫食や初めて口に入れるものだと、よく観察しながら食べると思うので、異物混入などがあったら一発で終了ですよね。二度はありません。
良いモノを作りたければ品質管理が大事です。
〇転職活動中
ずっと冷凍食品の仕事で次も同様な仕事を探していたため、まさか昆虫食の会社で働くとは思ってもいませんでした。採用情報ページでBugMoの求人を偶然見つけて、挑戦できる環境とコオロギという新しい食品の開発に惹かれていましたが、ベトナムに帰ろうかと迷うほどきつかった時期で、一度代表の松居さんと面談することを決めました。
-面談はどうでしたか?
熱心に話してくれて、衝撃を受けたのを覚えています。
松居さんのウガンダの子ども達との経験から昆虫養殖システムを世界中に広げたいという思いを聞いたとき、ボランティア経験で感じた同じアジアで悩む子ども達を救いたい思いが蘇えってきました。
そして、世界に広げていくにはまず、日本で成功させるためにコオロギを一般家庭に普及させていかなければならないこと、それを達成するために私が日本にいるのではないかと自分の価値を見出すこともできました。
BugMoで、日本で頑張ることを決意した瞬間でした。
今もこの時の熱量でお互い働いているのでたまにぶつかることもありますが、自分の意見を聞いてくれていること、本気で考えているからこそのものでやりがいを感じています。他のメンバーのことも尊敬しているし、本当にいいチームだと思います。
〇BugMo
R&D in Food Scienceという役職で、相良さんと一緒に食品開発を担当しています。
本来の味が変わってしまうような商品ではなく、BugMoコオロギのうま味を追及した開発を行っています。
-今作っているものはどうですか?
とてもおいしいと思います!でも、食感をもっと良くしたり、噛み応えに違和感がないようにすることに苦労しています。新しい食品なので、誰も答えを持っていないし、それを私が追い求めているということにやりがいを感じます。一番楽しいです。
-BugMoで成し遂げたいこと
BugMoコオロギのおいしさが伝わる商品を作り、牛・豚・鳥と並ぶ選択肢になることを目指しています。
日本ではよく、コオロギの味をエビや別の食べ物に似ている表現をしますが、私はコオロギは他の食品にはない味を持っていると思います。何かの代替ではなく、「特別な味があって美味しいと感じるから食べる」という事が普通になるべきだと思います。牛肉や豚肉、鶏肉にしても、それぞれに違ううま味を感じるから選択すると思うしコオロギもそうなってほしいです!
-BugMoに来てほしい人材
挑戦したい人、リスクを恐れない人、思いっきり動ける人、自由な考えで自分の意見を言える人に来てほしいです!
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