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東福門院和子の涙

宮尾登美子著『東福門院和子の涙』を読みました。

宮尾登美子作品は『クレオパトラ』『』に続く3作品目。


今回も強く生きた女性の話。

ただ過去2作品と違うのは、クレオパトラも『藏』の主人公・烈も時代や運命に翻弄されながらも自分の意志でしっかり突き進んでいきますが、この東福門院和子は表では笑顔を見せながら、人知れぬところでじっと耐え、涙を流している姿が印象的でした。

時代物はほとんど読んだことがなかったですが、江戸時代初期の、大奥が成立する少し前、身分高い女性たちの言葉にならない争いが見ていて怖く、辛い。

歴史上はじめて武家から公家に嫁いだ和子の苦労は並のものではなく、それを仕えの者・ゆきが柔らかく語る形で話は進みますが、やはり怖い。

天皇の皇后として何が何でも世後継ぎ、皇子を産まなければならないというプレッシャー、またその皇子が無事に育たなかった場合も考えてもう一人男の子を期待される。

周りでは天皇の側室たちが自分の子を次期天皇にしようとあれやこれや仕掛けてくる。でも皇子がいる間はその子たちは次々に殺されていたり…

血も涙もあったもんじゃない。

そして生まれた子が女の子でもいいじゃないか!というか、女性に子どもの性別を決める能力はない!

と言ってやりたくなる。

生まれた子が女の子だった時の周りの失望、産んだ本人の申し訳ないという態度、読んでいて腹立つし、悔しい。

女で悪いか!?女の何があかんねん!?

でも、これはほんの数百年前まであったわけで。

今ももしかしたらどこかではあるかもしれないわけで。

女の世界って怖いわと思いました。

今私のお腹にいるのは「6割の確率で女の子」ですが、周りにがっかりされたことはありません。思っている人がいても何も言ってこないし、態度にも出していません。

個人的には姉妹で育ったので男の子を育ててみたい気持ちもありましたが、女同士だからわかることだってあるし、別に健康ならどちらでもいいです。

だけど、この時代の明らかな落胆ぶりと、それを喜ぶ周りの敵達がなんとも…

ただ、これは宮尾登美子マジックなのか、ドロドロしているはずなのにどこか軽いタッチになっていて読みやすい。

彼女の作品ではほかに『天璋院篤姫』や『』が有名ですが、これらもぜひ読んでみたいです。

ちなみに、この東福門院和子はかずこではなく、まさこと読みますのでご注意を。


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