RMくんの、「でも俺はさ…」の世界
RMくんは、言語化能力が高くて、コミュニケーションスキルが高くて、物分かりも良くて、善良だ。好青年だ。うむ、ここには誰も異論を持つまい。
以前、RMくんのMBTIについてああだこうだ言う回で、わたしは、「でも俺はさ…」の世界が彼にはあったはず、と書いた。BTSのRMくんは、すっかりとある形で完成されたものになった。彼が持っていた陰鬱さ、ストイックな怒りは、さわやかさとポジティブの風の前で、きれいに吹き散ってしまったのだろうか。
…いや、ちがう、そうだ、
RMくんにはたくさんフューチャリングがあったじゃないか…!
ところで、ラッパーというのは、「俺の話」をしなければならないものなのでしょうか?わたし、定義をよく分かっていないんだけど、少なくともfeat.でRMになっているものは、リリックも彼が書いてあるよなー、そして、どうも、「俺の話」であるようだ。
今回のnoteは、RMくんのフューチャリングした楽曲たちから、「ラッパーRM」くんの、インナー世界、MBTIの心理機能でいう「Fi」、「でも俺はさ…」の世界、さわやかさとポジティブさ以外の世界を、さあさ、ご一緒に、味わってみませんか。
Balming Tiger - 섹시느낌 SEXY NUKIM (feat. RM of BTS) Official M/V
1曲目は最新のフューチャリング、「♪ せくしっぬっきむっ」でまいりますよ〜。これ以降は順不同ですよ〜。しかしてうう、む…。和訳探したけど、意味がしっくりこなくて、結局うんうん唸りながら自分で訳してしまった。しかし難しいな…なんだろ、関係者、あるいは業界人の、ロイヤリティ、パパラッチ、などの誰かに対する怒りかな…。まあまあ距離は近い感じがするね。BTSの彼らに付随して成り上がった成金って感じですかね。なんかむかつく事するんでしょうね。「…そうなのかな?」と思ってMVを見ると、虫ケラを見るようなRMくんの目に痺れます。
しょっぱなの「Fresh like a hell of an oyster, boy」からして、牡蠣?ただ普通に「牡蠣のような新鮮さ」と訳すのか。それとも、わたしがずっと勘違いしてて、最近知った「oyster=真珠貝=世界の価値あるもの・可能性」のこと?そうだとすると、freshはhell にかかってるので、その意味するところはなんだろうか…。しかし牡蠣。バーで、ダウンライトの下で氷の上に盛られた、半分殻を外した生牡蠣、てらてらして、少々グロテスクで、そこはかとなくエロチック。「Fresh」には爽やかさや生きの良さの反面、生々しさと刺すような強烈さもあるのじゃないか。個人的には、「綺麗な薔薇には棘がある」的な意味に加え、牡蠣のグロテスクさも含めて欲しいところです。このドル箱ボーイはただドル箱なんじゃなく魑魅魍魎飼ってるぜってことなんでしょうか。
全体的に「me」と「we」が使い分けられているところに、何か意味を感じます。RMくんが負っている役割というか、役職というか、裁量というか、それは「we」とは違うところにある、という。
前半が「boy」で、後半が「girl」に呼びかけているので、対象が違うらしい。後半はエロネタかな?と思ったけど、もしかしたら悪質な書き込みをする人のことかもしれません。
どちらにせよ、すごく、知的な、大人の悪口、という感じがいたしました、COOOOL!初期のBTSのRMくんのラップは、鮮明に社会全体に対する怒りがあったけれど、ここでは社会の中の具体的な誰かに対しての怒りが鮮烈です。ばくっとした「社会全体の悪」から、社会の構成員の中の人になって、「その中でも悪いのはココ」と、対象がピンポイントになってる気がします。
成功してなお自律心のある、成熟した大人の詩…。英語の韻の踏み方がかっこいいです。このMV、訳分からんくて好き。
Lil Nas X - Old Town Road (Seoul Town Road Remix) feat. RM of BTS
この曲好きです〜。RMくんの張り上げる声に「くぅ〜〜〜」となり、低い声に「うううう…」となる…最高です!
「ホミ(호미)」ってのが、草取りで使う「ねじり鎌」なんだそうですが、画像見たら本当にねじれとる。「馬」で「草刈り鎌」で「農場」で「とうもろこし」なので、「なんか、のどかだなあ〜〜」と一瞬思うが、「…これは一体、何の比喩だ?」と思いながら訳したら、なんだかマザーグースみたいな意味深な和訳になってしまった。
韓国のボーイズバンドのラッパーが、アメリカのクリティカルヒットに英語でフューチャリングするとあらば、やっぱり「韓国の庶民出が、上等のイチモツ持って、君んところのファンの歓声を掻っ攫うよ」的な、「やったるで」的な感じなのでしょうか。小さな草刈り鎌でとうもろこしを全部刈るのは大変そうです。でもここはコンバインでなく、韓国製鉄の鎌でそれがやれるんだと。
…パクチーが書くとすっかり下品ですが、しかし全くそういう下品さがない、ルイス・キャロルのような、高尚な文学の匂いがしますね。草の香りの清涼感もあり、郊外の空間の広がりもあり、馬の疾走感もあり。おそらく上品なタイプではないであろうLil Nasさんの作品の中にあって、上品。
[MV] YOUNHA(윤하) _ WINTER FLOWER(雪中梅) (Feat.RM)
和訳お借りしましたっ!
いいですね、いいですね、女声と掛け合っているRMくんの声いいですね。掛け合ってる部分は後半「Stay…」の一言だけですが。
「雪中梅、椿、水仙、/ああ僕のことはどう呼んだっていい」というところで、わたしはRMくんは「水仙…かなっ…!」と思いました。何なら水仙くんと呼ばせて頂くよっ。
なんでしょう、ドラマチックな、勇壮と言ってよさそうな曲想ですが、それを抜きにして聞いていると、「大学受験…」というイメージが湧いてきてしまいます。いいんでしょうか。
「お前が俺を咲かせたんだ/俺はもう自分の枝に青い香りを咲かせるよ」のところで、「香り」は「青い」んだというのが洒落てますね。学校の宿題の詩で書いたらいいと思います。女声の方は白がテーマになっていて、タイトルの梅は赤いので、対比がきれいです。
全体的に、華風の美意識で詩の世界が描かれているので、一応自分もその感性は共有できるかなってところが、同じアジアの漢字圏同士の嬉しさですね。
とはいえその、まあ言うなれば古風な詩情に、RMくんが自分の言葉を乗せられる、情景を描ける、というのは、さすが、古物好きでもあり、造詣もあり、傾倒もあり、なるほど納得の完成度。ありがとうございました。
Champion (Remix)
うわわ〜〜ん。和訳してて、本当に、ずどーんずどどーーんと喰らいました、重厚なラップですね!楽曲のバンド「Fall Out Boy」を全然知らないのですけれど、もともとの曲はこちら、見事に原曲の世界も保ちながら、RMくんであるからこそ語れる詩になっているので、その曲の本質を掴む力?そしてそこに何を載せればフィーチャリングの甲斐があるかという、新しい世界をクリエイトする力?なんか、もう、異質のものを掛け合わさせたらピカイチの右に出るものはいなーーーーい!!!!という、この、BTSのリーダーでございますよ。はあ…。かっこい………。
全体的に、「これはデビュー前からの音楽仲間、彼を良く知る友人に話しているのかな…?」と思い始めたところから、訳が完成したような感があります。いやー、でも和訳って面白いね!訳がないから自分でやってるだけなんだけど、主語がなかったり、どこからどこまでが一文でつながるのかも分からないから、ずぶずぶ…と意識を、冷たいとろとろの泥の中に、両手を突っ込んで思考を遠くまで広げているような感覚があります。RMくんが、誰に、どんなシュチュエーションでこの言葉を発したのかを想像して、その時のモチベーションを想像して、つまり妄想する、でなければ読んでても全体の半分も意味が通らないので。
でもとりあえずパクチーの理解では意味が通るように、読んで日本語で詩の世界が分かるように書けたかなと思います。満足です!
ところで、運転できないRMくんが自分を車に例えているのが面白いですね。免許を取る宣言をしていましたが、本当でしょうか…。
こちら2017年の作品でした。
[MV] Gaeko(개코) _ Gajah(코끼리) (Feat. Rap Monster(랩몬스터))
素晴らしい和訳、お借りしました!!上手い!分かりやすい!センス!才能!
この曲、ゲコさんのリリックも素晴らしく、言葉遊び的なサビも耳が楽しい。タイトルは「象」の意、サビの「コギリステップ、キリキリステップ、キリステップ、」は、「象の歩み、似た者同士のステップ、同士のステップ」と、意味と言葉遊びが掛け言葉になっていて、味わいが濃厚です。ゲコさんは「ダイナミック・デュオ」というヒップホップデュオの一人で、RMくんより13歳年上。
このMVがまた、学生の修作みたいなCGで、壊れたポリゴンが怖い。
このリリックのRMくんは、何と言うか、馴染みがありますね、2017年のRMくん、夜明けの暗さ、エンドレスに不条理について考える超頭の良い若者。「おっ」と思ったのは、「俺たちは黒い鍵盤のようなモノ/確実なのはお前もやっぱりピアノの一部」の部分。「芸能界を選んだ自分」と、「一般人ルートを選んだ同級生の友人」という対比で、わたしはこの詩を読みました。「黒い鍵盤」は、「大衆」が鍵盤を押す事で音を奏でる。互いに与えられたその役から身動きを取れない。
鍵盤の発音は自発的ではなく受動的です。でも彼は、鏡を見て、自分に暗示をかける。もっと「selfish」になるように。
わたしがMBTIのテストをすると「ENFP」と誤診断されることがあるのですが、それがなぜ「誤」だと思うかと言うと、「ENFP」が物事の明るい面だけを見ようとする傾向があると説明されているからです。RMくんはかつて「INFP」と診断されていたそうで、わたしも「INFP」なのですが、「INFP」はそうじゃない。駅のホームに吐瀉物があったら、「それを良く見なければならない」(半分比喩、半分事実)。人と人のおぞましい罵り合い、歪んだ顔、醜い心の動き、見たくないと思う時こそ、起きていることをよく見なければならない、心の動き詳細に追わなくてはならない。美しさと醜さはイーブンだ。それが人に実際に起きる現象なのだったら、人が目を背けたくなるような暗部から目を背けたら、真に人の形を知ることから遠ざかってしまう、という、謎の使命感が、あったのです。今はそうでもなくなりましたが…自分に関係のない怖いものや気持ち悪いものは全然見る必要ない、見たら「下がる」ということが分かったので…。
彼は自分の、他人の、歪んだ表情、重たい葛藤について、本当によく目を背けずに、見つめ続けてきたなあ!と思う。その目的は「お前はお前のために刃を砥げ」。彼は長い間、根気強く、わたしなんかが体験するのよりずっと広くて深い、人に潜む暗部をとっくりじっくり、目を背けず味わい続けてきた。
その過程があって今の彼は、複雑に原因が絡み合う社会の陰鬱さの中に、全体を良くする事を妨げている本当に問題になっている部分だけを素早く見つける「目」を持っている、切り口は小さく、他のものを傷付けず、病巣だけを小さく取り除く、非常によく切れる、最高によく研がれたシャープな刃物、を、すっかり獲得した、と思う。
多分、もう彼はこれまでのように暗部を見続ける必要はなくなっている。そうだから、彼の今のMBTIは「ENFP」に変わったのかもしれない。
彼の「attitude」に万歳…!
1曲目の【SEXY NUKIM】に戻ってみましょう、「Check my attitude」が2行目、「俺について不勉強じゃないの」の原詩です。長い長い間、目を背けないでいた彼の覚悟に、愛を。
[MV] eAeon(이이언) _ Don't(그러지 마)(feat. RM)
うっ…。
泣きそう…。
eAeonさんの、歌い方といい内容といい、こういう声で別れ話を躱されたら、わたしは多分すご〜〜くいらいらするような気がします(←ひどい)。
口語に近い、具体的で分かりやすいeAeonさんの詩と比べると、RMくんは、「これが会話の言葉なんだったらかなり抽象度の高い文化的カップルだな!」って感じがして、良いです。eAeonさんが想定しているパートナーは対等で、幼い、もしくはもう心が彼にない感じがしますが、RMくんの想定しているパートナーは、年上とか、思いやられてる感じ、を持ちます。
「当てなく彷徨って」の原詩は「漂流」なのですが、わたしの妄想では、彼女の方に、っどーーーーーーうしても切れない関係の人がいて、現在のパートナーである彼(歌の主人公)とも連絡を絶って、ひとりで考える時間を持ったのではないでしょうか。どちらを選ぶか、苦しい選択を、一番近くにいて一番支えていたはずの彼(主人公)が、相談に乗ってやれない。それを「大丈夫だった?」と心配しているような気がして、
う、うっわ〜〜〜〜〜〜ん(号泣)
彼女は、傷つけずに去ろうとしているんだな、完全に切るんじゃなく、でもそういう思いやりを、思いを残される方が最悪です、が「小石」なのかなあ…と思ったり。「月と煙突」という絵で自分たちの相性を完成された形だと見ている精神性が、なんとも叙情的でロマンチックな男の子ですね……、RMくんが見ていた韓国の家並みの絵を思い出して、やっぱりお相手は年上のような気がします。どーーしても、「つっきがぁ〜〜〜〜〜、でぇたでっ、った〜〜〜〜」の都々逸が出てきちゃうのは、日本人なのでしょうがないでしょう。
「魔法は必要ないんです/野の花なんかやめてほしい」、ここで急に飛躍して「魔法」、直後リアリズムで「野の花」、が、秀逸だと思いました。引き締まるな〜〜!いろいろな意味で、彼(主人公)の方に、彼女を支えるだけの力が足りなかったのかな…若すぎて…素晴らしい青年ではあるが…が、野の花であやされているのかと思うと、辛すぎる。
と、なんだか色んな背景が湧き立つ詩でございました。11行でこんなに楽しくしてくれるなんて、RMくんって本当に魅力が溢れ落ちてる。
Drunken Tiger - Timeless feat. RM of BTS [Official Lyrics Video]
この曲も結構聴いてます〜!しかしDrunken Tigerさんについては、今回初めて調べました。韓国のHip-Hopを牽引してきたアーティストで、約20年間の活動の締め括りとして2CDのアルバムを発表し、そのアルバム以降は名義を「Tiger JK」に改める、「Drunken Tiger」として発表する最後のアルバムだったのだそうです。RMくんがフューチャリングしているのは、Disc1の終曲。
訳は、英語に訳されたものから翻訳したので、まあ、気分を味わって下さい、本来の持っている質感から離れているかもしれません。曲は、映画『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』になぞらえて、デビューした1990年代を振り返るところから始まります(ボタンとバトンは同じ綴り)。Drunken Tigerさんのリリックは、彼のアーティスト人生を振り返る、意味がたくさん含まれていそうなレトリックなスタイル。ここに、一体どんな言葉を乗せたら、曲が完成するって言うんだ一体…。
と、普通なら思ってしまいそうですが、そこはRMくん。
timeless、あっという間だった、時間なんて感じなかった、そう振り返る20年のベテランラッパーに、2018年のRMくんは、最大のリスペクトではないですか?これ、RMくんにはまだ若さゆえ、20年をあっという間だと感じる感性はないだろう、でもその代わりにフレッシュな、前人に対するシンプルな尊敬、「無意味な時間が人生に霊感を与える」、自分にある空白を育ててくれた音楽について、感謝のような、祈りのような、ハイトーンのポジティブを感じる詩でした。
Tiger JKさん、関連動画いくつか見たけど、くたっとした柔らかいおじさまで、高い声が意外。全然オラついてなくて、偉そうじゃなくて、シャイで、なんかいい人そうだった…。
이상하지 않은가(strange)/Agust D feat.RM
Agust DさんもといSUGAくんの、タイトル【이상하지 않은가】、「おかしかないか」って感じでしょうか。フューチャリングを誰にしようかと思って、「ナムジュンがいるじゃないかと思った」と、言った時のVLIVE、何だ両思いなんじゃん…でこっちが照れたよね…(←違う)。
前半のSUGAくんのリリックに、見事にRMくんがアンサー、という構成になって曲が出来上がっていて、この濃さ、この重さで世を評しているSUGAくんに対して、この手のテーマを、同等の濃さと重さで、かつ別の側面から書き表せて、それが陰鬱な不平にならずにおけるのは、やっぱりRMくんの裁量だろう…。
これまでのフューチャリングがあってからこのリリックを見ると、すごく気心を許している、対等に開いている、安心している、年上のメンバーであるSUGAくんに対して、という感じがした。
今回のnoteで細かくRMくんのフューチャリングの詩を見てパクチーが気付いたのは、本当に本心の言葉でなければ、他人の詩にぶつかれない、ということだった。フューチャリング、どこかおしゃれに、ぴゃっと一発、軽くかませばいい、と、パクチーちょっぴり思ってた。いや、これ違うな。むしろこれは泥仕合だ。渾身の、魂を削って作品を作っているアーティストに対して、こちらも魂を剥き出しにして、自分を削って削って、フューチャリングするアーティストとクロスする部分を、ピンポイントで硬質に切り出して来るのが、フューチャリングだった。一文の硬度、一語の硬度、寸分も無駄なく、言葉の意味が重い。なぜなら、限られたスペースで曲の世界に応えようとするから。
「フィード」は原詩ママでfacebokを、「鶏小屋」はtwitterを彷彿とさせる。
パクチーは自分でどうして、こういうRMくんの風刺、世界に対する批評的な視点をこうして取り上げようとするんだろう?それはあまり健康的なことではないのでは?と思いもする。しかし、この詩を書くためには、この怒りに落ちて染まっている状態から、自分が一段引き上がっていなければそれは作品にはならないわけで、この怒り、あるいは痛み、ある意味孤独を俯瞰できる高さまで、自分自身を引き上げ続けている、つまり自分はそこに染まっていない状態を保つのに、一体どういう精神力が要っただろう、というところに胸がつまるのである。SNSに含まれる虚構、ユーザーが何に誘導されているかをも分かっていながら、彼らはSNSの恩恵を受けざるを得ない。
それにしても、ラッパー2人がこのテーマを持ち出してくるとなったら、J-HOPEくんを指して「君はHOPEになれ」という意味がますます深いね。彼も大概社会派だし本質は別のところにあったかもしれないのに、彼が「最後に残る「HOPE」」を担当してくれたことの希望ったら、うーむ…。やんごとない。
HONNE - Crying Over You ◐ (feat. RM & BEKA)
なんつーか、鍼灸の針で、なが〜〜いやつを刺されて、痛いところをそっとぐりぐりされてる感じですね…、
い、痛い…痛いよ、ナムジュン……!
HONNEさんはイギリスのデュオで日本贔屓なんだそう、バンド名は日本語の「本音」なんだそうです。フューチャリングのBEKAさん、イギリス出身の、も、ソフトな歌声が気持ちいい。シンプルな失恋ソングで、女声の方が失恋から結構自立している風なのはこの手のデュエットでは避けられないことなのでしょうか。「何も言わずに去」ったら男声側は「そりゃ〜〜傷つくでぇ〜〜〜……」と思うが、自分を悪いとは思っていなさそう。「Crying Over You」については「うんうん、そうだね」と、君を思って泣けるのは何でなのか、自分のために知りたい、という嘆きに大いに共感出来るのだけれど、全体的には痴話喧嘩、カップル終焉に至る、犬も食わない…、な、大学の学食の凄惨な光景を思い出したりした。
と、そこでやってくる、RMくんのアジアの詩情ですよ。「彼は何役なんだ?」というのはまず最初の疑問ですが、曲の冒頭は、まずHONNEさんの男性サイドの心境を歌う男声。次に女性サイドの心境を歌う女性。そして登場RMくん。彼は振られた男性か?間を取り持つ第三者的視点か?
ここでわたしが訳すために「僕」した部分を「私」にしてみる。
すると、見事に、立ち去る側の女性の心情にもぴったりはまって、なんと!共感できる!ああ、全てを持ち出して素晴らしい瞬間がいくつもあったんだな、でも最終的には交わらなかった、ずれていく世界が辛かったんだな、と思えて、共感しなかったはずの女声に、立ち去った勇気を感じるのである。
いやーー実に、この、見えないもを見る視点。「同じ本」「違う表紙」「違う色」とは、「本」は相手、「違う表紙」「違う色」はいくつもの思い出のことを指しているとわたしは解しましたが、ぱらぱら本をめくるように二人であった出来事を思い出して、毎回終わりで泣けるって、まさしく失恋の状態を言い表す最小公倍数でないのっ。RMくんにとって、彼が持っている社会的な批評精神は、夜中彼を苦しめるダメージの大きい能力かもしれないが、彼を鍛えて磨く、むしろメソッド的な機能であったのかもしれないよね。実際に気を紛らわすために本を読んでることも含めているのかもしれないしね。小さな単語に過不足なく意味を乗せる、この詩的表現力よ。
「でも良い事ってのは必ず、終わりがあるね、いつも」は「But good things always come to an end, an end」。「良いことは最後にやってくる」と和訳する方々は訳しているが、翻訳にかけると「良いことは常に終わる」んですが、どっちでしょうかね。真逆なんですけど。
U (Feat. 권진아 Kwon Jin Ah, 랩몬스터 Rap Monster)
よし、
若者よ、そのまま行け、行ってしまえ!!!!
ひじょーに楽しく、にやにやしながら訳した〜わ〜楽し〜〜ハッピ〜〜。楽曲のPrimaryさんはプロデューサーで、自身は歌わないし、メディアに素顔も出さないのだそうだが、これでもかっ!これでもかっ!と恋の始まりの「これって恋かな?」「好きって言っちゃおうかな」のキラキラした女声の感性が開放されている様子を、実に丁寧に、輝きそのままに曲にしている。
そしたら出てきた想いの相手が、完全に「オールオッケー!!!」だった。ちょっとびっくりした。しかも男声の心情がちょっと生々しいのがリアルで、お花畑に蝶々みたいな女の子…の…バクッと喰われる寸前じゃねーか!!…と、思うと結構面白い。RMくんがメタメタなのを上手に声で表現しているので、「うん、君、そらそうやろな…」という共感もすごく出来る。
BTSの初期のラップは、こういう落としにかかる生々しい男の子の声、すごく如才なく致してましたね!RMくん。大人っぽい子だなあ〜かつ見た目とのギャップ、色々思い出しました。もともと持ってる声の色気、全部許してくれそうな包容力に加え、彼のすごいところは、「気持ちがいっぱいで自分に余裕がない」、言うなれば格好悪いところをも、広い声色、音域のレンジでそのまま表現できるところだと思う。今のRMくんがこういうメロウな詩を歌ったらどうなっちゃうんですかね…。この曲は結構「上手」に仕上げてるので、上手に仕上げないで欲しいですね…18禁ですかね…。
MFBTY - '부끄부끄 (Buckubucku) (Feat. EE, RM of BTS, Dino-J)' Official Video
前述のTigerJKさんのチーム、MFBTYの楽曲、楽しくて好きです。ぷくぷくぷくろっ!関連動画が少々ありますが、2015〜16年のRMくんが、なんかもう、むちゃくちゃ可愛い、顔が。そして年長者たち皆さんに可愛がられている感があります。こんな初ステージ披露のバックステージのBOMBもあったりして、メンバーたちもぷくぷく好きそうで、RMくんのファンみたいになって盛り上がってるのが、多幸感あっていいですね。
先輩、尊敬する年長者たちの前で、同じステージに立つなら、自分の全部を曝け出すしかない。RMくんは基本、むちゃむちゃ誠実だなあと思いました。怖くても叩かれようとも、自分丸ごとそのまま差し出す以外に、長年のキャリアと対等になる方法はない。
…というわけで!
毎度自己最長を更新しつつある大変長いnote、お疲れ様でした。…1週間かかったや!思いついて書き始めてから。夜更かししちゃって、濃い時間、すごーく楽しかったです。こういうの楽しいなぁ。こうして眺めてみると、幅の広さがはんぱねぇですね。恋愛の渦中も終わりも、なんとロマンチックに機微を捉えているんでしょうかね、この方は…世相を見る暗さ、人の中に見出す煌めき、自然や造形が与える霊感、
彼にとって、辛いことかもしれないが、「自分だけが気付いてしまう」ことは、とても大きな恩寵だったのではないか。
その苦しみと彼が恩寵を受けていることを実感していることの両方を、わたしたちは彼を通して、その幅の広さを味わわせてもらっていて、彼の目を通してみたものを見て、意識を通したものを感じて、音楽や他の歌手らと合わせて時間を豊にしてもらっている。
それでは、ぷくぷくの楽曲が最後で今回のnoteはお別れです。お後がよろしいようで。
ジャスミンの残り香でお別れしましょう。
グッバイ!
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