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『Jack In The Box』、あ…天才か、

BTSのメンバー、j-hopeくんによるソロアルバム『Jack In The Box』、7月15日リリース。J-HOPEくんは、アーティスト名は正式にアルファベットの小文字になったのかな?今回のnoteより、j-hopeくんは小文字表記にしようと思います。

15日は、夜、仕事終わって、子供と夕飯食べて、寝かせて、ひとりになって、居間の電気を消して、ヘッドフォンして、ソファに寝そべって、もうひとつのMVは見ないで、歌詞も見ないで、アルバムを頭から聴いた。

いやーーー。

…わたし、新しいフルアルバムをこんなに楽しみに聴いたの、すごい久しぶりかもしれない。

すんげーーー楽しーーーー!かった〜〜〜〜!!!

なんだか、自分が好きなアーティストがいて、新譜を買うためにお金を握りしめてレコード屋さんに行って、帰って、坐して頭から終わりまで聴くのが、何より本当に、本当に楽しみだった、高校〜大学時代の感覚を思い出した。 わたしのPopsと蜜月だった時代。

実は…わたしが高校〜大学時に一番熱心に聞いていたのは、BECKだったんですよ…。そして毎回BECKの新しいアルバムにかけていた期待、自分がちゅうちゅう吸っていた命のエキスは、「聴いたことのない音楽、聴いたことのない音の組み合わせが味わえる」、ということだったんだな…、頭からすっぽり他人の脳の異世界に入り込んで、出てくる、1時間弱の旅。そうであったんだわ、ということに気づかされた。彼のアルバムのおかげで。少し似ていた。こりゃオルタナティブだわ。

j-hopeくんの、自分の声の音色を楽器的に使う感覚も、ラップをリズム楽器のように使う感覚も、一曲の中でさまざまに変化するラップの表現が、ダンスの構成のように緩急のドラマがあるのも、

うーむ…、ちょっと天才かも…。

BTSのアルバム『BE』収録の【Dis-ease】はj-hopeくんが曲を書いたというが、あの曲を聴いたときに感じた、彼の独特のコード進行のセンス、今回もすごい「ホビ印入ってる〜〜!」と思われる特有のコード進行が、ばりばりのごりごりに入っていてとても面白かった。いくつかの曲を聴いて、彼がよう音楽ソフトに親しんで、時間をかけてたくさんの機能やプリセットやエフェクトや、もう星の数ほどあるそれらを、よう遊んだんやな、時間をかけて、色々作った、色々試した、音もたくさん創ってみた、エフェクトもひとつひとつ試してみた、そんな、音楽で遊んできた痕跡が感じられるような気がして、それがアルバムに散りばまってる風なのを感じた。うん。いやこれちょっと、本当に天才かもしれない。

続けてくれたらいいなあ…!j-hopeくん、フルアルバム制作、続けて欲しいなあ…!

…というのが、歌詞を知らずに、アルバムを、純粋に音だけを楽しんだ感想でした。

それでは2曲ばかり、歌詞も合わせた内容について、特筆してみたい。


【Pandora's box】

【Pandora's box】は【intro】で朗読されているギリシア神話の理解を前提に展開している。パンドラ。ゼウスが作った、美しい、好奇心を持った女性。彼女が開けた箱から、これまで世界に存在しなかった苦難が飛び出して、人々は味わうことになった、希望と一緒に。

アルバムリリースに合わせて、いくつかプロモーションの企画が公開され、そのなかの一つにj-hopeくんのVLIVEがあった。

この進行が、前半は箱状の空間の中で、後半は箱から出てなされるのだが、【Pandora's box】の歌詞を見ていると、VLIVEの内容と合わせて、符号の一致を感じるのであった。

彼に、偶然、思い付きのようにして呼ばれることとなった自分の「hope」の名。そのことが、これまでの間、大変に深く彼を思考させてきたのだな、というのが強く印象に残った。彼は「防弾」に最後まで残る希望的存在である。「希望」にフォーカスする。それが彼が自分に見出した役割だった。

しかし、その役割は「箱の中での役割」であるとして、彼自身はその箱を「Jack In The Box」である、という風にして、他のことを語るのだったら箱から出ればいい、という設定を発明した。…な、な、なんて賢い!!箱から出てきた「hope」は、オーディエンスから見れば「Jack」、得体の知れない驚かせるようなもの。だけどそうすることで、彼は自分が、「希望」の立ち位置から見続けた欲、妬み、恨み、嫉妬、復讐、憎しみについて、つまり自分自身について語ることが出来る。いや〜…考え抜かれている……アイドル「j-hope」は箱の中で成立したものとし、自分自身は出入り自由なものとする。そうして彼はアイドルの自己とそれ以外の自己を矛盾なく統合したのか。

そしてもはや、解を見つけている。

偶然のように与えられた希望的役割、役割によって鍛え上げられた希望的視点は、欲、妬み、恨み、嫉妬、復讐、憎しみの渦巻く箱の外の世界でこそ、「アイドルj-hope」以外のj-hopeにこそ、真に必要なものだった。自分にたまたま「hope」とあだ名されたことは、始めから計算されていたみたいに。それについて深く思考したことまでが、神が仕組んだみたいに。彼は「チョン・ホソク」を、「j-hope」に作り変えたことの意味を、すっかり理解して受け入れている。

そういう歌に聞こえた。

【ARSON】

アルバム全体を聞いていると【MORE】と対になっている印象を持った、【ARSON】。

詞を見ると、なんと正直、率直。シンプルなことを語って、なんでこんなかっこいいラップになるの?ってくらい。音楽の構成もシンプル。シンプルだけど、よく出来てるんだよ…ラップのリリックといい、楽曲といい、シンプルでよく出来てるって最高なんだよ…。

MV、最初、詞を知らないで見たときは「う〜ん、意味わからんな…」と思った。あの燃える、いい家の布製のパネルは、何の意味なんだろう?

しかし、意図と意味が分かってくると、見れば見るほど、どんどんすごいMVに思えてくる不思議。1cm角の1000ピースパズルみたいに、何もかもが計算され尽くしてぴっちり合っているように見えて、見るほどにぞくぞくしてくる。

かといって、家のパネルの意味は分かんないんだけど。【Safety Zone】を抽象しているのか、あるいは【MORE】のMVでは映画「ファイト・クラブ」との類似がSNSで指摘されていたが、「ファイト・クラブ」では主人公の別の人格が、主人格の知らない間に、こだわり家具の揃った瀟洒な自宅を爆破している。他人が「良い」と基準するもので整えられた家は、無意識レベルでは安心できる場所にならなかった。

【Safety Zone】…。自営業の人には、セーフティーゾーンって無いね。無いなあ、と旦那くんを見ていると思いますが。我が家は夫婦で自営業ですが、わたしは能天気なので、あんまり未来を気にしたことがない。

このMVでj-hopeくんは「放火(ARSON)」を「やり終えた(Done)」。放火をしなかったバージョンの自分が住んでいたかもしれない、普通の暮らしをする自分。あるいは「choose what」「その火を消すか」で、火を消して、隠居して暮らす家、だったりするのだろうか。何にせよ、何かの意味は乗せられているのだろう。抽象的だが、【Safety Zone】は「choose what」のA or Bの、AとBの間にあるとも言える。それを選ぶcalmの凪の状態。

彼らが自分を燃やし尽くして現状があるのを、視覚化するとこうなるのだろうか…

なんとなく、トップに立つ現役のアイドルの、目に見えない肉体のエネルギー的な部分?あるいは内部?は、こういう風に一部炭化、中が透けて見えるくらいに、臓器がノーマルな状態じゃない、オーバーヒートしきった状態で運行されているのかも、彼らの身体は…、

「そうだ」と言いたくてこういう表現をしたのか、ただ演出なのか、でもそうなんだったら、「choose what」「もっと燃え上がるか」に、「ダメーーーー!!!」と、言わざるを得ないよ…ねえ…安静!安静だよ!!全部が再生するまで、じっとしててくれ…!

他のメンバーたちも、実は内面はこういう状態なのかな。みんなの顔が浮かんだ。「フルアルバム製作、続けて欲しい!わくわく!」との矛盾。

最初、訳分からずMV見たときは、なんとなくフジファブリックの「夜明けのBEAT」のMVを思い出した。ボーカルの志村さんを好きだった人たちが、歌と、森山未来くんの刹那の気迫に、胸が締め付けられたMV。

燃える人が走るスタントでは、パクチーの若かりし頃の有名なMVを思い出しました。

改めて見たらすげーな!天才スパイク・ジョーンズ監督(メイキングDVD持ってるの…)。

【MORE】は別記事にて。


今回、『Jack In The Box』に関連して、コンテンツがいろいろあって、そのどれも結構分厚い情報量があるので、1回見ても咀嚼し切れていない。

【MORE】のメイキング。バッサバッサと決断していくので、周りもさぞやりやすかろうと思われた。すごい。本当にすごい。イメージができて、切替えができて、コミュニケーションが明確にできて、信頼していて、非常に深く信頼されている。そんな印象。そんな人、いるんだなあ…。

パクチーが以前いた舞台の世界では、偉い演出家が土壇場で逃げるシーンは、すごく特別、という訳ではなかった…(本番初日の2日前、現場に来ない、誰もどこにいるか知らない、連絡が取れない、未確定なこと山積み、みたいな…)。非常に人間味のある世界。

でさー。このさー。VLIVEがさー…。

ほんとーーーうにいい顔していると思うんだよー…。

痩せちゃってさ、ご飯食べれなくなってさ。すごいプレッシャーと、不安と、決意と、取り混ざった大人の男の顔をしている…。

こうなりたかったのに、なれる機会がなかったんだな。こうなるために、この方法しかなかったんだな。

と、そんな、吉本ばななさんの本に書いてありそうなことを思った。

そして、前述の公式のアルバムリリースのVLIVEがあったのち、

公式のVLIVEで詳しく紹介されている衣装等々について、このVLOGでもフィッティングの様子などが記録されている。

j-hopeくん、衣装も、公式VLIVEで紹介していた関連グッズも、彼の「好き」のモチベーションがとても高く昇華されている様なのが、すごく伝わった。わたしはたまに、ずっと以前には彼独自のファッションセンスについて、「オッパ、もっと普通の格好してください」とファンの子に言われたことがあったのを思いだすのだが、「好き」が磨かれていくことや、その続きに今があることを思うと、「好き」って、何も諦める必要ねえな!と思ったりする。

余談だが、VLOG中のスーツケースのパッキングにて、彼の畳むTシャツが実に美しい四角で、本当に美しかったんだ…。

そして【ARSON】のメイキング。不安とかプレッシャーとか、彼の体が一人で引き受けているものの重さが、画面越しにうっすらもやがかって見えるのに比例して、「信頼して、頼れる」周囲の大人たち、プロフェッショナルなクリエイターチーム、彼が実力で獲得した本当の財産は、こっちかな…という気分になれるのが、相変わらず稀有だと思う。甘えず、奢らず、ブラさず、正直に、対等に。彼が持っているビジョンが明確で、決断が早く、コミュニケーションスキルが高いので、彼と一緒に製作に関わったグッズや、衣装や、映像や、の人たちは皆、さぞや仕事がやりやすかったのでは…、と、さっきも同じようなこと書いたけど、非常に思った。

…天才?

オールマイティーだな…。

彼がBTSのソロ活動のトップバッターで、HYBEのみなさんも何も心配していなかったのではなかろうか…。彼はやる、やりきると。

きらきらして、なんて美しい表情なんだろう

あの例の防弾会食、韓国経済界で「2兆ウォンの飲み会(※参考)」と呼ばれているのをニュースで見て、「ショックを受けたのはARMYだけではなかったか」というのと、「あのショックは2兆ウォン相当か」というところで、何か、腑に落ちた感を持ってしまった。j-hopeくんがこのことを知らないわけがないと思うので、それも懸案にまったく無い訳ではなかったと思うが、

あまりある。うん。

というのが、個人的な感想です。株のことは全然分かりません。

正直、アルバム中いくつか「もうちょっと深堀りしてくれたらもっと良く印象に残った…!」と思われる曲がないでもなかった、が、でもそんなもの、今ある良さの前ではなにも損なわない。彼の特有の独特さは、結構めずらしいタイプじゃないかと思うんだけど、どうかしら?わたしはこの感じをもっと聴きたいと思う。

音楽家、j-hope。それでも彼が持っている多様さの一面でしか無いからな…。ふう…。すごいものを育てたな、BigHitさんら…。


それではまた!

7.19.追記
j-hopeくん本人による、アルバムインタビューが公開されました〜。手厚い。実に手厚いなあ。

実に理路整然と話すのよな…。すごいな…。なんだか、すごく、世界に対して自分の役割を、過剰でもなく謙遜でもなく、シャープに澄み切って見ているところに、なんだか泣けた。世界を良く変えたい訳じゃ無い。聴く人が自分自身の内側にフォーカス出来る時間を作れたら、それで十分良い。流れに逆らわない。川のように流れる。

身につけているものも、お洋服も、体のラインも、後ろに置かれているものも、ひとつひとつきれいなので、なんとも綺麗な大人に成熟あそばされたなあ…と思ったら、ふとデビュー頃のj-hopeくんを思い出した。どれだけ変わったのだろうと思って、先日公開されたプラクティス動画を再視聴したのだが。

…あれ?

なんだか思ったより、今のj-hopeくんに近くないかい?アルバムジャケットの髪型や、MVで髪の毛を作り込まずにラフな感じが良いと言った、そのニュアンスも近い。むしろ彼の音楽性(少なくとも今回のアルバムの)は、初期の防弾少年団と引き合うものがあるのかも。少年j-hopeから今のj-hopeくんに至るまで持ち続けてきた、自分のダンスと共にあった、「出さなきゃ前に進めない」熱い音楽。

ジンくんもインタビューで言っていたけど、「気持ちが上がった時に作業する」、そして出したい時に出す、気持ちが「ピコン!」と指している方を、気持ちのまま行動して、気が済んだら止めて、としていると、1日があっという間に終わる。そうしているうちに、世の中にある大きな流れに対して、逆らうようでもなく、迎合するようでもなく、アンチを唱えるでもなく、戦うでもなく、怒るでもなく、批判するでもなく、自分は一緒に流れている。1日1日を。月日を。

わたしは、若い彼らが、彼らの立ち位置で、今激動と言っても過言では無い世界の今の状況の中で、最も適した姿勢を取って若い人々に示しているのを、そして言語化し、あるいは音楽にするのを、しみじみ「これがトップアイドルか…」と、やっぱり不思議な気持ちになった。

時代時代で人気のスターは、その当時の民衆の心象風景みたいなものを無意識か意識かで汲むが、そしてそこから半歩進んだものを提案するが、まぎれもなくその先端に立っているわあ、と感じて、胸が締め付けられる。


ではね!



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