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「じ・自分はそうは思いません!!」~裁判官は自分のことをなんて呼ぶ?~

 裁判傍聴をよくする方なら知っているけれど、裁判傍聴初心者の方には耳慣れない言葉が結構ある。専門的な法律用語はもちろんだが、昔からの習慣でそうなっていたり、あえて意図してそうしていることもある。
 その中でよく耳にするのが、裁判官の一人称だ。

 裁判官は、裁判の最中に自分のことを「私」等の一般的な一人称で呼ぶことはほぼない。例外はあるが、ほぼすべての裁判官が自分のことを「裁判所」と言う。「裁判所から質問をします」、「裁判所はこう考えます」「裁判所はそうは思いません」等、傍聴しているとわかるがすべて「私」を使うシチュエーションで「裁判所」と言っているのだ。
 これは、「裁判所」という無機質な表現を使って裁判官の主観性を薄めて、「法」が客観的に被告人を裁いているのだという事を強調したいということなのだろう。
 
 しかし、表現上は「裁判所」と言っていても、明らかに主観的な持論を繰り広げている裁判官も中にはいて、それはそれで面白い。
 
 ちなみに、被告人や証人が証言台で発言する際は裁判官の方を見て話さなければならない。尋問の際も、検察官や弁護人は冒頭で「裁判官の方を向いて答えてください」とお願いをするが、それでも被告人や証人は質問者である検察官や弁護人の方に向かって答えてしまうことがよくある。それを注意する際には裁判官もさすがに「裁判所の方を見てお話し下さい」とは言わない。被告人も、ここは裁判所なのにどこを向けと言っているのだろうと困惑するだろう。そんな時裁判官は「正面を見てお話し下さい」と言い(証言台の正面には裁判官の席がある)、やはり「私の方を見て」とは言わない。

 頑ななまでに「私」と言わない裁判官だが、たまに簡裁の小さな事件を担当している裁判官の中には人情派の裁判官もいて、被告に向かって「私」どころか「俺だってねぇ、アンタみたいに思うことだってあるのよ」と、良く言えば寅さんのような人情味たっぷりの、悪く言えば裁きに主観を持ち込んでいる裁判官もいて、僕はしばらくその裁判官の裁判を見に簡裁ばかりをのぞいていた時期もある。その裁判官のお話も後日書こうと思う。

 他にも裁判所には普段我々が使わないような言葉が多く発言されるが、それはまたその都度ご紹介しよう。

 最後にもうひとつ、ドラマ等ではよくあるシーンでも、あまり実際の法廷では登場しないようなこともある。
 例えば、弁護人が大声で「異議アリィーーー!!」と叫ぶことはほぼない。だいたいは、「あ、それ異議です」とか、「すみません、それについては異議があります」等、結構静かに話に割って入ることが多く、みなさんが思うようなその日一番のドヤ顔を作って言うようなことはまずない。

 という事で、裁判所では非日常的な会話や表現が使われていることが多いというお話でした。初心者の方が裁判傍聴をする際は是非その非日常を味わっていただきたい。


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