面白い裁判に出会えるかは開廷表の見方で決まる!コツを抑えて「当たり」を引こう!~その2~
前回の記事では刑事裁判における基本的な開廷表の見方を紹介したが、今回は傍聴してみたけどあまり面白い内容ではなかったという、いわゆる「ハズレ」を引かないために、開廷表の事件名から推測する僕なりのちょっとしたコツと、被告人名から想像する偏見多めの見分け方を紹介しようと思う。
法廷は出入り自由!しかし時間のロスになる。
前回の内容と重複するが、東京地裁では多くの事件を扱っているので同時刻に別のフロアで複数の裁判が行われている。もちろん法廷は出入りは自由なのでその裁判が面白くなければ他の法廷に移動すればいいのだが、その頃には既に他の法廷では検察官の起訴状朗読や証拠調べ、検察側の冒頭陳述で被告人の身上経歴が読み上げられた後になってしまうことが多い。そうなってしまうと、どのような事件で、どのような身の上の被告人が裁かれているのか把握するのに時間がかかってしまうので、なるべくなら最初から「当たり」の法廷を選びたいものだ。
では、どのように当たりを見つければよいのか。それを見極めるために僕らに与えれられたものは開廷表のみである。見極めると言っても、開廷表の情報はとても少ない。必然的に注意して見る個所は事件名と被告人名、裁判官名になるのだが、裁判官名に関しては奥が深く、且つそこそこ常連にならないとわからないので今後機会があったら書きたいと思う。
同じ名前の事件でも内容は全く違う!
まずは事件名について。
当たり前だがどのような罪を犯したのかが書かれているのだが、事件名からは被告人が実際にどんなことをしでかしたのかはわからないことが多い。たとえば、事件名が「窃盗」だったとしても、万引きも窃盗だし、空き巣も窃盗である。空き巣の場合は窃盗に加えて住居侵入等もセットで書いてあるのでそこから推測することになるが、なかなか分かりずらいものが多い。僕が以前引いたハズレで言うと、「横領」と書かれていたのでワクワクして法廷に向かうと、レンタカーを返さないで捕まったオッサンがそこにいた。それも横領なのだ。その裁判自体は被告人のおっさんがいい感じに癖の強い性格だったので結果的には当たりだったが、事件名で想像したものとは全く違く内容だったりするので気を付けたい。
東京地裁でよく目にする事件名はコチラ
東京地裁の刑事裁判で多いのは、「窃盗、常習累犯窃盗(ほとんどが万引き)」、「器物損壊」、「覚醒剤取締法違反」、「詐欺」、「強制わいせつ、迷惑行為防止条例違反(痴漢)」。このあたりが多い。特に窃盗は群を抜いて多い。器物損壊などはあまり面白くなさそうに思えるが、例えば「電車内で若い女性のコートに精液をぶっかけた」というのも器物損壊事件として扱われる。覚醒剤取締法違反や常習累犯窃盗(ほぼ万引きで間違いない)のように明らかなものもあるが、意外と事件名だけではわからないものなのだ。
同じ事件でも被告名で傾向が違う場合も・・・。
選ぶコツとか書いておきながら今のところコツといったコツは書けていないのだが、ここからは今回のポイントの2つ目、被告人名と併せて僕の選り分け方を紹介したいと思う。
まず覚醒剤系の場合。覚醒剤系は少なくとも東京地裁では1日2件くらいは新件が行われているので、よっぽど他に目ぼしいものがなかったときにしか見ないが、被告名が女性で、さらに今っぽい名前(読み方が難しい名前)だとちょっと覗いてみようかなと思うことがある。若い女性がどういう経緯で覚醒剤に出会い、溺れていったのかに興味があるからだ。大抵は彼氏やホストなどの男が絡んでいることが多いが、被告人質問で女性の言葉で性格等も少しわかる気がして興味深い。被告人が男性の場合はテンプレートのように同じような反省の言葉を口にするのであまり盛り上がらないことが多い。
覚醒剤も多いが、常習累犯窃盗、いわゆる万引きも多い。これは、被告が男性の場合も女性の場合も刑務所とシャバを出たり入ったりしている人が多いが、年配の場合は刑務所から出て仕事がないのでまた捕まるために万引きをしていることも多い。若い女性の場合はクレプトマニアという盗癖の病気の人もいて、本人としてはやめたいのに万引きを繰り返しているような人もいる。
性別と名前の雰囲気で当たりを探ろう。
これを踏まえて、刑務所を出たり入ったりを繰り返している被告の性格や人間模様を傍聴したい場合は古そうな名前の男女を選び、クレプトマニアなど、病的要素による窃盗に興味がある場合は比較的若そうな名前の女性の裁判があるときに覗いてみるとよい。
万引きの裁判は簡裁も地裁もとても多いが、意外と当たりが多いように感じる。ある意味身近で起こしやすい犯罪なので、より被告人の人間味が出るのかもしれない。
次に「詐欺」に関しては、最近は振り込め詐欺等の裁判が多い。振り込め詐欺の場合は、複数被害が起きていて、裁かれる罪がその一件ではない場合があり、裁判が始まったと思ったら「追起訴があるので今日は終わり」と、5分程度で終わってしまう場合があるので注意だ。
“わいせつ系”は当たりが多いが傍聴希望者も多め
強制わいせつや迷惑行為防止条例違反等の所謂「変態案件」はハズレが少ないがそれ故傍聴する人も多いので、小さい法廷の場合だと入れないことがあるので注意。裁判は立見ができない。
変態案件も、ただただムラッとしてやったということではなく、被告に精神的な問題や依存症などがあることが多く、とてもまじめそうな若い人が多い。大体はすごく反省をしていて、本当に辛そうにに検察の尋問に答えているが、実は同類の前科が3犯ありますよということも結構ある。
経験上、わいせつ系で50代以降の被告の裁判はただただ胸糞が悪い裁判の場合が多くてあまり傍聴はお勧めしないが、開廷表の被告名が若そうな名前の被告は盗癖と同じく、病的要素で罪を犯してしまう被告が多い気がする。意外とそういう被告は容姿もそこそこ良く、妻子がいて一流企業に勤めるよう所謂幸せな家庭も持っている場合が多い気がする。
2回に亘って書いてきた割にあまり参考にならないような気もするが、要するに、開廷表の事件名、被告名、その事件が今どの段階なのかを見て、その時点で想像力をフルに活用して当たりの法廷にたどり着けたときの達成感を是非味わってみていただきたい。