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連作『揺れた日、揺れていた日々』

人生は、よく旅に喩えられる。

ものごころついたときから、人生は始まっていて。
人それぞれに旅路があって、交わったり、別れたりもして。

でも、最初はひとりでは旅はしてなくて。
俺の場合は、両親や姉ちゃんがいて。

じゃあ、いつ自分だけの旅が始まったのか?って聞かれると、2011年なのかなって、いまなら思う。

宮城生まれ宮城育ちの俺は、2011年3月時点で高校2年生だった。
将来への不安。社会への不満。文学への興味。ロックやパンクへの希望。全部が入り混じっていた、そんな時期だった。
自我や思想、生きることへのスタンスなど、ありとあらゆるものが、この時期に価値観として固まっていたと思う。
そういう意味で、俺が自分だけの旅をはじめたのは、この年だった。
(もちろん、その時期以降も家族や友人がいてこそ、生きてこれたし、感謝しかない。)

先に言うと、俺自身は、大きな被害を受けていない。

電気は1週間、水やガスは2ヶ月間止まったりしたし、家のものは壊れたりぐちゃぐちゃになったりした。でも、そんな程度じゃ、自分たちに被害はないって言いたいくらい、事態は深刻だった。

正直、2011年に起きた出来事について、目にするだけで不快に思う人がいると思うので、このことについて書くか迷った。
でも、2021年にnoteをはじめて、この3月のタイミングで、同郷のえみさんからバトンをもらったことに、少しだけ意味を見出してもいいのかもって思って、書くことに決めた。

以下に、俺が短歌を始めて4ヶ月くらい(2020年10月頃)に詠んだ連作『揺れた日、揺れていた日々』を挙げます。

あの大地震のときに、あの地域に住み、被災者でも支援者でもなかった、自分の実体験をなるべく忠実に詠んだ歌たちです。

無理のない範囲で、興味がある人だけに、読んでいただけたらと思います。

『揺れた日、揺れていた日々』

揺れている 体育館の照明が振り子のような凶器となって

避難した雪降りしきる校庭で揺れる煙を遠望してた

夜に揺れてたなら駄目であったこと棚が潰した枕で知った

「アラハマニヒャクメイガウチアゲラレタ」という知らせが余震となった

揺れた日に家族で並んで寝た居間で聴いたブルーハーツが鳴り止まない

十時間並んで買った単三で動くラジオが告げる死者数

予定より早い同窓会 友とチャリ漕ぎ生きるため水求め

青春を置き去りにしたアリーナは東北一の遺体安置所

「借りた本、家ごと流れた」と笑う友に相槌だけで返した

日常が微分されたまま僕は五月には受験勉強してた

被災者でも支援者でもない僕たちはあしたを生きるだけで無力だ

揺れた日に目覚めた僕が腹筋を固めて生きた、揺れていた日々

以上です。

短歌の「た」の字くらいしか知らなかった俺は、当時、
「書くことは思い出すことだ。」と短歌の先生に教わった。

自分にとって忘れられないと思っている記憶だが、それは自分の中で、気づかないうちに風化してしまうことはある。
それは、恐いことだと思う。
だから、書いた。
短歌というパッケージに、甘えさせていただいた。

人生という旅はまだまだ続きますが、どんな道になっていくかわからないけど、腹筋を固めながら、自分の足で一歩一歩、進んでいきたいね。

ここまで読んでくださったみなさん、ありがとうございました。

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#noteリレー という企画に参加させていただきました!

【全体企画】「#noteリレー」開催します。|saku @saku_____ua #note https://note.com/ahesaku/n/n1d6af66e69d8

バトンをくださったのはえみさん!

Twitterで短歌を通して知り合い、ヘッダー画像が故郷の駅だったことから、同郷の仲間だと勝手に思っている方です。

そして、僕へのバトンとなったお話が、こちら

「ワンナイト・ジントニック」。タイトルだけでドキドキする。
そして内容を読んで、その甘酸っぱさにもっとドキドキします!
あべの記事は読まなくていいので、えみさんのお話は絶対に読んでください!

そして、あべが頂いたテーマは「旅」。

内容に迷いはありました。
ですが記事の中でも書いた通り、バトンが回って来たタイミングが、あの東日本大震災からちょうど10年だったということもあり、今回の内容に決めました。

次にあべがバトンを回すのは、Rinさん!

最近、noteを更新するようになったRinさん。
実は、普通にリアルあべの友人です。

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自分のやりたいことをやる。
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やりたいことに真っ直ぐ向き合える彼女は、あべには眩しい存在ですが、少しでも応援できたらなと思ってます!

テーマは「春の思い出」。

ぜひ、お楽しみに!








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阿部 啓(あべけい)
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