スタートアップのための効率的なバックオフィス入門講座 イベントレポート #BrowniesWorks
2月3日(月)に、東京都港区六本木のオフィススペース・KaleidoWorks 内にある「Crossover Lounge」にて、スタートアップのための効率的なバックオフィス入門講座と題して勉強会が開催されました。
今回の勉強会は、「インキュベイトファンド」と「ライフタイムベンチャーズ」の、独立系ベンチャー・キャピタル 2 社による共催イベント。ご参加いただいたのは、同 VC から支援を受けているスタートアップ企業の CEO や管理系の役員の皆さまです。
ライフタイムベンチャーズ・代表パートナーの木村 亮介 氏がモデレーター役となり、当社代表の武内が講師として登壇。前半の武内からのセッションと、後半の会場の皆さまとの Q&A ディスカッションを合わせて、 90 分に渡る勉強会となりました。
この note では、当日に使用したスライドとともに、勉強会の内容を振り返ります。※スライドの全文は、この note 末尾の「Speaker Deck」のリンクよりご覧いただけます。
00. Introduction
木村氏が VC としてスタートアップを支援するなかで、実際に遭遇した数々の「バックオフィス事案」。
投資家向けのピッチ資料で謳っている MRR(月次収益)の数字が、試算表(決算資料を作成する前段階のデータ)とまったく違う
料金プランは 14 しかないはずなのに、セールスが現場で値引きをして、70 以上のプランが裏で出来上がり(しかも契約書が残っていない)、間違った請求書を送ったため、解約されてしまった
経費精算が滞って未払い金が積み上がっているかと思いきや、外部への業務委託費用数十万円が未払いになっており、税理士に指摘されて初めて発覚
創業時にコーポレートカードが作れず、社長の個人カードで各種経費の決済を続け、資金調達時に発覚して慌てる
VCとの契約後、月次決算の提出を求められたが「物理的に」出せない(数十日待って出せるのなら、まだ良い方)
これらの事案の背景には、バックオフィス業務が「ちゃんと設計できていない」「仕組み化されておらず非生産的である」という原因がある。
バックオフィスは(重要ではないと思っている経営者はいないだろうが)後回しにされがち。しかし、会社運営の生産性を上げていかないと、事業成長のボトルネックとなってしまう。
実は以前、投資家から「IT の会社なのにツールを使って管理していないなんて、IT リテラシ低いんですか?」と指摘されたことがある。
「テクノロジーを売る会社なら、会社運営もテクノロジー使いましょう」。
01. バックオフィスの重要性
レガシーな大企業について書かれたビジネス書において「バックオフィスはコストセンターだ」という定義がなされることがある。
しかし、ことスタートアップにおいては、コストセンター = 作業だけしていれば良いということはない。
バックオフィスとは「経営の意思決定を支える土台」が本来の定義。適切に事業を成長させるために必要なもの。
車で言うならスピードメーターやガソリンメーター。バックオフィスを疎かにするということは「今、どれくらいの速さで走っているのか?」「後、どれくらいガソリンが残っているのか?」が分からずに走っているようなもの。
同様に、経理とは「経営の羅針盤を構築するためのもの」。税金を計算するためにあるのではない。ましてや、伝票を打ったり経費を精算することが目的ではない。
経理は、企業運営におけるさまざまな事象を、会計データという共通の指標に「翻訳」して、集計・分析を可能にする。
(右側の)予実管理や資金繰表、事業計画は「会計データを加工して作るもの」。正確な会計データなくして作ることはできない。
では、正確な会計データを作るためには? → その基となる(左側の)請求管理や経費、給与計算などを正確にやらねばならない。
システムとしては、従来は SAP のような大規模で統合的な ERP ソフトウェアが担っていた。そのため、システム化しようとすれば大規模な開発が必要だった。
しかし今の時代なら、SaaS を組み合わせることで、小規模であってもシステム化が実現可能になっている。
02. バックオフィス業務の性質
業務は 3 種類に分けられる。
1)感覚系:勘や経験、センスに支えられた領域で、属人化することが避けられない。サイエンスよりもアートに近く、コンサルタントやトップセールスもこの能力が高い。
2)仕組系:仕組系:製造業の精算プロセスのように、複雑に見えるが一定のルールで処理することが可能な領域。ここを属人化させずに、きちんと設計し、システムと運用を組み合わせて解決していくことが、バックオフィス構築では最も重要。
3)作業系:単純作業や反復業務。スピードと正確性が求められるが、ルールさえ定義できればRPA等によって自動化が可能な領域。バックオフィスには作業系の業務が多いため、分業体制の大企業では作業が目的化してしまっていることも多い。
スタートアップあるあるなのは「1 人目に採用したベテランの人に、バックオフィスを全部お任せ = 完全なる属人化」の状態。
仕組系が弱いのは、日本企業に共通した課題。
では、スタートアップ企業であっても最初から仕組化すべきなのか? → 答えは、明確に「YES」。
確かに、属人化していても回るフェーズはある。しかし、売上がグンと伸びて「ここからだ!」という、一番現れて欲しくないタイミングで仕組化してこなかったツケが回ってくる。そのために、半年間は新規の営業を止めて浄化に費やすような事例すらある。
例えば Salesforce は料金が高い高いと言われるが、属人化の罠にハマって事業の成長が止まるくらいなら安い。バックオフィスの仕組化は、将来の成長のための投資。
いかに仕組化するか = 業務設計が重要となる。先に業務設計をやって、ようやく何の道具を使うかの方法論 = IT ツールの話が出てくる。
業務設計なくして、いくら Salesforce を入れようが freee を入れようが、それはただ「Excel が高価なツールに置き換わっただけ」になってしまう。
03. 構築のための 3 ステップ
まずは ① 何が起きているのかを把握し、② 理想的に「こうなって欲しい」「こうあるべきだ」を描いた上で、③ 業務設計し IT ツールを選定する。
① 現状把握では、現場への徹底的なヒアリングにより、問題点を洗い出すことにフォーカスする。① では「もっとこうしたい」は出さないことがポイント。
次に、② 自分たちの目指すゴールや、そこに到達するための要求水準から理想の状態を描いていく。
例えば N-1 期(※)になると監査法人から「月次決算は月初 5 営業日以内に締めてください」のような要求が来る。そのために N-2 期ではどういうフローで何を処理できるようになっているべきか…と逆算する。
※ 上場を行うには、3年間の上場準備期間が必要とされている。上場する期 = 申請期を「N 期」とし、3 年前を N-3 期、2年前を N-2期、直前期を N-1 期と呼ぶ。
そして、③ 現在のリソースと照らして「Salesforce を使おう」「freee を使おう」というようにツールを選定。選定したツールを業務フロー/データフローに当てはめて、業務全体を再設計する。
営業だけ、経理だけ、ではなく「セールスからどのように契約につながり、顧客に対してどのように請求し、どのように着金を確認して、どのように経費を支払うのか」というように、全体を再設計していくことで効果が現れる。
「ツールで何ができるか」よりも、「ツールをどう使うか」が重要。
04. バックオフィス採用の難易度
バックオフィスの構築を難しくしている一因は人材。
経理担当一人雇うのに半年かかった、という事例もある。1〜2 年後には、バックオフィス人材の採用は、現在の「エンジニアの採用難」のような状況になる。それはなぜか?
IT スタートアップにいると「ツールを使えるのが当たり前」に思うが、バックオフィス系のスキルと両立している人材はマーケットには「ほぼいない」。
さらに、ビジネスモデルから紐解いて業務を理解し、全体を俯瞰した最適な業務フローを設計しなければならない。
経理書類をどう処理するではなく「自社のビジネスが、どう回っているのか」、契約書をどう処理するかではなく「契約が巻けていない状況を発生させないためにはどうするか」といった視点を持てる人材が必要となる。
しかし採用も、採用後の教育も難しい。
05. Brownies Worksのご紹介
コアメンバーが、プロダクトの制作やセールスをやりながらツールを運用するというのは、実は大変だし難しい。
Brownie(ブラウニー)とは、スコットランド地方の童話に出てくる「妖精」のこと。「妖精さんが、気が付いたらいつの間にかバックオフィスを片付けてくれている」というイメージでサービスを開発した。
単なる外注ではなく、SaaS を使った仕組を構築し、運用するところがポイント。業務設計(運用とツール)をパッケージ化し、最適な運用を回せるリソースとともに提供する。
「自社独自の運用があって、パッケージの導入は難しい」というスタートアップであっても、フタを開けてみれば非効率なことを人力で一生懸命やっている……ということは多い。
組織規模が大きくなれば組織に合わせたチューニングも必要だと思うが、中小企業においてはバックオフィスはベスト・プラクティスをそのまま導入する方が良いと考えている。
このサービスの真のメリットは、経営者やコアメンバーが本来やるべき仕事(事業の成長)に集中できるようになること。
月次決算がタイムリーに行えるようになることで、VC とのミーティングがスムーズになる。事業が拡大フェーズに入ったときに、基盤が整っていれば混乱が起きにくい体制が取れる。
バックオフィスは、成長のための手段。本業に集中して業績アップを目指すためのサービスが、Brownies Works。
06. Q&A ディスカッション
※会場からの質問は、Sli.do に投稿された原文ママを掲載しています。
Q. ソフトウェアを入れてもこれだけはいつも言われるけど解決できない課題みたいなのがあれば
武内:「作業」や「処理」は自動化できるが、「そもそも、この業務いるんだっけ」という仕組の構築の部分。ソフトウェアによって「想定されている使い方」があるので、できる/できないを見極めねばならない。
また、オフライン業務(電話・郵送物・総務など)はゼロにはならないので、いかに電子化しようとも、しぶとく残る部分ではある。
Q. N-1 とはどういう意味でしょうか
武内:上場を申請する期を「N期」と置いたときに、その前期を「N-1 期」、前々期を「N-2 期」と呼ぶ。
まず上場申請する年= N 期を定める。そこから逆算して、N-1 期には上場申請書のドラフトを作成して証券会社の審査を受け、N-2 期からは監査法人を入れ……というように、やることが決まっていく。
木村:かつては明確なルールがなかった。(C.A.社などは創業から 3 年程度で上場していたはず。)
しかし、十数年前に元スタートアップ企業による(意図せざるか意図したかは分からないが)粉飾決算が相次いだため、現在では、上場審査において、2 期分の監査実績が必要になっている。
つまり、例えば現在アーリーステージで、3 年後くらいには上場したいと考えているとしたら、来年からは監査を入れなければならないことになる。
「監査法人を入れようとしたのに、そもそも監査する対象(体制)がまだ出来上がっていない」(社内規定の整備や、経理部門と財務部門の分離、など)というケースがあったりする。
そんな状態で大手監査法人に依頼しても「では準備ができてから、監査契約可否の稟議を社内で上げます」と言われて、契約どころか社内稟議すら上げてもらえない、といったことも。
業績は右肩上がりなのに、コーポレート部門の体制構築ができていないばかりに上場準備が進まない、といった事例をいくつも見ている。
武内:監査法人側の監査契約を受けるかどうかの基準が厳しくなってきている。業績が上がっているのと同じくらい、体制が整っていないと引き受けてもらえない。両方がセットで必要。
Q. 採用面談。どういう質問をすると、運用力・設計力のある方かどうか、候補者の方のレベル感を理解できそうでしょうか?
武内:こちらから「今まで、どういう風に仕事をしていましたか?」と聞いて「来た伝票をこういう風に処理して、銀行振込をしていました」と答える人(こうした「作業」を経理だと思っている人)は、スタートアップには合わない。
逆に、こちらのビジネスモデルに興味を持っていて「これから、どういう風に伸ばしていくんですか?」と質問してくるような人や、自社や競合の Web サイト・数字をチェックしていてビジネスサイドの話に付いてこられるような人は、(現在できる/できないは置いておいたとしても)運用力や設計力が期待できる。
Q. ビジネスモデルにも依ると思うのですが、最少人数で上場できるとしたらどんな会社がどんな体制でやっているイメージでしょうか? 将来的な人員計画のイメージを事業計画上でもしておきたく。。。
武内:プロダクトによると思うが、従業員数が 10 名台で上場していた企業があった記憶がある。
製造業など、物理的にモノを作らねばならない業種は、比較的人数も多い。
バックオフィスの人数としては、最低 3 名と言われており、バックオフィスを管掌する役員 1 名+財務 1 名+会計 1 名。
ただし、財務と会計については「内部に人員をおかなければならない」とは言われておらず、「内部から管理できる体制」になっていれば良いため、上場企業でも経理を外注しているケースは多い。
Q. どのSaaSをどのタイミングで導入していくべきなのか、シードからレイターの順で実例踏まえて教えてほしいです
武内:ほとんどの業種のシード〜シリーズ A では、ツールとしては freee、SmartHR、board があれば大体のことはできる。
まずはとにかく、紙を減らしていく。
銀行口座やクレジットカード明細、ECサイト利用履歴など、経理に関するデータは会計ソフトに自動連携するようにする。
給与明細はメールで発行したり従業員が自分で Web サイトにアクセスして見られるようにし、勤怠もオンラインで打刻できるようにする。
営業サイドの管理には CRM や SFA ツールを、ということになるが、代表格である Salesforce は利用料金が高いため、自社プロダクトの LTV や CPA がしっかり見えていないと、なかなか導入できない。
そのため、シード〜シリーズ A あたりのステージでは Excel や Google スプレッドシートで管理している事例が多いが、これらのツールは何でもできてしまうが故に「属人化しやすい」というデメリットがある。
そこで、このステージでの営業管理には Kintone や board をおすすめしている。例えば board では、請求書・発注書を案件単位でバンドルして管理ができる。
武内:こうしたツールで「型化」「共通化」を進めていくと、受発注で何が起こっているのかが可視化できる。
まずは当たり前のことを当たり前に回せる体制を作っていくのが大切。
木村:上記のような運用を、変えるべきタイミングというのはあるか?
武内:調達額が 1〜2 億円ぐらいになってくると、マーケティングに資金を投入してレバレッジをかけて伸ばしていく必要性がでてくる。属人的な管理やセールス手法から脱却する必要があり、Excel/Google スプレッドシート、board などは切り替える必要が生じてくる。
自社プロダクトの LTV や CAC もある程度見えてきていると思うので、ここで SFA や MA を入れて、マーケティングの効果測定やリードのナーチャリング、営業の進捗管理をより科学的に行う。
Salesforce はここでもの凄く力を発揮するツール。営業サイドで伸ばせるというシミュレーションが出来るのであれば、導入しない選択肢はない。
また、最近では HubSpot などの比較的な安価なツールも進化しているので、このあたりをうまく使うという選択肢もある。
木村:上記のツール群が最終的に繋がっていくのが会計ソフトだと思うが、かつては「上場するなら、勘定奉行やオービックにしないと、監査法人や証券会社から認めてもらえない」というような話もあった。上場まで考えたときに、会計ソフトは何を選べば良いか?
武内:まだまだ勘定奉行などが強い領域だが、freee は自身が 2019 年に上場したこともあり、かなり頑張っている印象がある。
Brownies Works が freee を推している理由は、API が充実しているため。
freee 単体だと、監査法人から要求される帳票が作れないケースがあるが、API でデータ連携して freee の外で帳票作成する、といったことが簡単にできるので、freee を入れておけば、上場にもある程度は耐えられるようになってきた。
監査側のリテラシにもよるが、IT に強い監査チームだと、freee のアカウントを渡しておけば勝手に中身を見てくれるような事例もある。
木村:会計の話になると「銀行口座」もセットで出てくると思うが、シードステージでここの口座は持っておけ、というオススメはあるか?
武内:海外取引がないのであれば、ジャパンネット銀行が法人の複数口座開設に対応しており、使い勝手が良い。
武内:ただ、ATM がない、社会保険の引き落とし口座に指定できないというデメリットもある。できれば別にメガバンクの口座を持っておきたいが、シードステージだと開設が難しいかもしれない。
資金を借りるついでに、近隣の信用金庫の口座を作っておくのも良いと思う。いったんは社保の支払用などには信金を使って、事業が成長してきた段階で、メガバンクの口座を作るというのもあり。
また、スタートアップあるあるだが、メガバンクのネットバンキングサービスは Windows でないと使えないため、社員が全員 Mac しか持っておらずに利用できない、ということがある。
なので、ジャパンネット銀行や楽天銀行をメインにしつつ、メガバンクを使うときだけ Parallels(※ Mac 上で Windows を実行できるソフトウェア)を使うといったやり方になる。
木村:個人的な使い方だが、楽天銀行は指定した口座への自動送金機能があるので、まず楽天銀行をメインにしてすべてを集約しておき、社会保険料などは税金支払い専用のメガバンク口座へ自動送金、という使い方もオススメ。
木村:口座が複数ある場合に稀に起こるのが、「どの口座にいくら残高があるのか把握していない」という事態。会社としてキャッシュはあるが、借入金の返済口座に残高がなく返済が滞った、というケースがあった。
これを一度やってしまうと、銀行側の与信が下がり、次の融資に応じてもらえない……といったことが起こってしまう。
武内:freee に各口座を連携しておけば、freee 上で口座の残高を一覧できるので、活用してもらいたい。
Q. 上場審査にも耐えうるコーポレートSaaSって、会計管理、請求管理、支払管理、経費精算、給与計算、その他だとオススメとかってありますか? あとやっぱり高いんですかね?
武内:freee だと、上場準備のためのパッケージ機能が使えるユーザーが 10 名で 10 万円/月〜、ワークフローを使うユーザーが一人あたり数百円/月、といった費用感。ツール利用料として一見、高いように思われるかもしれないが、勘定奉行などは「年間 1,000 万円〜」なので、それに比べればはるかに安い。
武内:Salesforce と freee を一緒に導入すると、初期の構築費用が1,000万円くらいかかるので、大企業からは勘定奉行の契約更新のタイミングで、Salesforce + freee への乗り換え相談を受けることも多い。
Q. MFではダメ?
武内:マネーフォワードでは、現状は足りないと考える理由は 2 つある。
① freee のような「上場準備用プラン」が、まだ出ていないこと
② API がないこと
「予実管理表」や「資金繰表」を作ろうとしたとき、現状はまだコレ!という SaaS がない。そのため、会計ソフトから API でデータを持ってきて、Excel/スプレッドシートで加工した方が早く作れる。
また、API があれば、会計以外のソフトとの外部連携も容易になる。こうしたことが行えないのが、マネーフォワードを使ったときのボトルネックになってしまう。
Q. Brounies worksを運営されている中で、既存のSaaSプロダクトで、まだ足りていない分野などありますか?
武内:いま課題感を持っているのは、勤怠管理などの労務系。上場の監査でかなり厳しく見られるようになっている部分。
後は、IT 系の業種だとやはり「エンジニアの工数管理」の問題。法制度が、リモートワーク等の新しい働き方に追いついておらず、アナログな管理をせざるを得ない部分がある。
木村:別の VC から聞いた話だが、労務系では「未払い残業代」がよく問題として出てくる。勤怠管理をしっかりやっていないと、例えば従業員から「自宅で作業していた」として訴えられたときに、企業側は抗弁ができない。
そのため BS(バランスシート)の右側に「未払い残業代引当金」を積んでおくのだが、積んだために債務超過になってしまい上場ができない、というケースがあった。(※)
※ 債務超過:企業の負債の合計が、資産の合計を上回っている状態のこと。債務超過になったから即、倒産するわけではないが、市場からは「倒産のリスクが高い状態」と見なされる。
この状態では銀行からの融資は受けることができず、もちろん上場申請もできない。また、既に上場している企業は、上場廃止となる場合がある。
※ 引当金:将来発生する特定の支払や損失に備え、あらかじめ当期の費用 = 負債として繰り入れて準備しておく金額のこと。将来の退職者に支払う「退職給付引当金」や、取り立て不能な売掛金に対する「貸倒引当金」等がある。
07. まとめ
ご参加の皆さまからは多くの質問が寄せられ、また木村氏かはらベンチャー・キャピタリストとしての裏話もお伺いできるなど、非常に密度の濃い 90 分間となりました。
また勉強会の終了後には、名刺交換で熱心に話込まれている姿も見られ、バックオフィスの体制をどう構築していけば良いのか、お悩みの方が多く、高い関心をお持ちである様子が伺えました。
バックオフィスは経営の基盤となるものであり、事業の成長のためには売上と両輪で必要になるものです。
Brownies Works は、経営者やコアメンバーの皆さまが本来やるべき仕事(事業の成長)に集中できるように、バックオフィス業務をご支援いたします。下記のサービスサイトよりぜひ、お問い合わせください。
本勉強会で武内が発表に使用したスライドの全文は、下記の「Speaker Deck」からご覧いただけます。