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A4一枚の憧憬描写【憧憬のピース】8歳第九話『箱庭のゲーム』(一話完結)
一年間を生き延びた回数だけ、ボクたち少年少女の暮らし合う聖域は、大人達の創った擬い物の世界に染まってゆく。
逆らうことが赦されない邪鬼の潜む街で、新しく用意された「小学校」という名のついた、この場所を信じてもよいのだろうか。
ここでも大人達は廊下の隅から、階段の下から、扉の裏側から、数えきれないほど無限に湧いている。
それにしても、桜の樹は神々しい。
「おい、ツバサ。窓の外なんか見て楽しいのかよ。
休み時間だぞ、外行こうぜ」
ボクが見惚れていた『窓の外』と、彼の言う『外』は何が違うのだろう。
「外で何するんだ?」
「つまんないヤツだなぁ。そんなの何だっていいだろ。
外が教えてくれるんだよ」
「時間なくなっちゃうよ。ケイタ、そんなヤツは、さっさとほっとこーぜ」
小学校に飼い慣らされた少年や少女は、みな唐突に二択のクイズを出題して、正解したヤツらを仲間にする。
不正解だったヤツらを敵と見なすとは限らないが、一切相手にしない。
ヤツもそうだった。うちのパパだ。
あの邪鬼も理不尽な二択クイズを頭の中だけで創っては、このボクに試した。
だから、ボクは二択クイズではない別の方法で仲間を増やしていた。
「なに、やってるの」
ふたりの男の子が自由帳をはさんで対面している。
「おお、ツバサもやるかい」
「うん、やる。おしえて」
紙を折った手作りの立方体に、赤や黒の点が打ってある。
「サイコロで遊ぶRPG。オレが自由帳につくった」
「なにそれ、面白そう。カミゲーじゃん」
上から覗くと攻略本に似ていた。フィールドマップがあって、モンスターや主人公のデータベースが隙間なく並んでいる。
「まだ遊んでないのに、神ゲー?」
「ちがうよ。紙に書いたゲームだから、紙ゲー」
「ああ、そういうことね」
フィールドマップの白い草原を指でなぞると、「モンスターが現れた」と制作者の彼が、その指を止めた。
ランダムなタイミングで戦闘画面になるエンカウント戦闘を再現したみたいだ。でも、彼の決めたランダムに意図がなかったとは言い切れない。
「これさ。提案なんだけどさ。フィールドマップをマス目で区切って、
すごろくみたいに出た目だけ進んで、
そのあと戦闘になったほうがよくない?」
「あ、たしかに、そのほうがランダムじゃん」
メガネをかけた男の子は理解してくれたようだ。
先程までこのゲームで遊んでいた彼は、それだそれだ、と言いながら勝手に定規でマス目を引いていた。
当の制作者は腕を組んでいる。それにしても、桜の樹は神々しい。
※ ぜひ、何度も読んで、隠されたメッセージを解読してみてください。
憧憬のピースには、必ず、メタファー(暗喩)があります。
🔆新プロジェクト始動中!
🔆【憧憬のピース】とは・・・?🔆
⇩
A4一枚に収まった超短編小説を
自身の過去(憧憬)を基にして、創作するプロジェクトのこと。
情景描写で憧憬を描く『憧憬描写』で、
いつか、過去の人生がすべて小説になる(ピースが埋まる)ことを
夢見て・・・