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日常は恐怖で埋め尽くされている
幽霊を信じますか?
この言葉に対してどのような見解をしているのか、人によって違うかもしれません。現代社会でも、「幽霊の存在」に対して信じている人は多いかもしれませんが、最近では科学の発展やネットでの情報の流麗さもあって、「そんな存在いるわけがない」と思う人も多いかもしれません。
私はというと、根っからの科学人間ですが、実は「幽霊」というものに対しては肯定的な見解を示しています。確かに物事は科学的な見方が中心にされるし、それに対して否定することは出来ません。
ですが、科学によってすべてのことを解説することは今の所難しいと思われます。そもそも、論理的な物事ということが、自然的なことに対しては不十分であるということも考えられるので、幽霊の余地というものは未だ存在していると私は思います。
このように、カッコつけて言ったのですが、実は私は昔から、「幽霊的な体験」をすることがかなり多くあったことが最も大きな要因です。もちろん、それらすべてが幽霊の仕業だなんてことは言いませんし、科学的な志向が中心の自分は「あれは〇〇で説明することができる」なんてことを思うことのほうが多いです。
しかし、世の中には絶対的にそれでは解決することが出来ないことがあります。時折、そのような出来事に出会うたびに「あれは本当に幽霊だったのかな」なんて逡巡が頭を駆けずり回ることがあるのです。
これを見ているすべての「幽霊否定派」の人たちでもきっと、日常生活にいくつも転がっている大量の恐怖を意識することが多々あるでしょう。我々の中に存在している恐怖というものは、想像以上に大きな闇を孕んでいるのだと私は考えています。
私はそんな中でも最も恐ろしいこととして「想像」を挙げたいと思います。
人間が頭の中で作り出す恐怖というものです。人間にとって恐怖というものは必ず必要なもので、自分のみを守るための指標であると言えます。
言い換えれば恐怖を感じるからこそ、我々は危機感を持って物事に臨めると言えるのでしょう。恐怖感がなければ、集中して恐怖の対象に取り組むこともできなくなりますし、特段において対処する必要がない場合だってあるでしょう。
そんな我々には、恐怖を活気させる多くの物事が存在しています。日常でもそれは非常に多数存在していますね。
高いところから下を見下ろしてみましょう。
遠近によって作り出された目も眩む望遠が見えるはずです。底から感じられる気圧や音の反響、あらゆるものが自分の身に降りかかるのではないかという恐怖を感じる人だっているはずです。
台所に行って刃物を見てみましょう。
光沢のある金属の刃を少しでも指の腹に乗せてみれば、切っ先から皮膚に伝播するなんとも言えない感覚に身を震わせることもあるかもしれません。これを数センチほど移動したとしても、皮膚からあふれる血液が顔を見せるはずです。
風呂場に行ってみましょう。
湯船に身を沈めて、少しだけ顔を風呂の中に入れてみると、当たり前ですが呼吸ができなくなります。すべてがおぼろげになる視界と口から溢れ出る泡沫、それが体全体を撫でて外側に逃げていく感覚、最終的にじわじわと意識が失われていくような不快感。手軽に感じられる死への本能的恐怖であるかもしれません。
日常生活ではこれほどの恐怖体験ができるのだと思うと面白い話です。ですが、これらのことよりも、私がおすすめできる恐怖体験があります。
それが「暗がりを見ること」です。できるだけ真っ暗な、部屋の輪郭だけが見えて、最奥に行くほどに真っ暗になる闇、それをただ見つめるだけでいいのです。
今、部屋を暗くしている人は「暗がりなんて怖くない」と思う人もいることでしょう。ですが、貴方は本当の暗がりを見ているのでしょうか。現代というものは意外にも多くの光に晒されています。
スマホの充電ポインタ、窓から刺さる月明かり、街灯の欠片、あらゆる光が失われた本当の暗がり。それは眺めているだけできっと貴方に極上の恐怖を渡すことでしょう。
見ていると吸い込まれるような気分になりませんか?
縁すらも曖昧になる本物の闇の恐怖。私たちは普段光に晒されて生きていますが、それが失われた世界というものはこれほどまでに恐ろしく、不安定になるのだと私は常々驚いています。
だから私は、創作に行き詰まった時にそうやって「暗がり」を見るのです。あらゆる恐怖と不快さが詰め込まれた世界に、どこか魅せられている私がいます。
そして不思議なことに、人間が作り出した恐怖というものは、これほどまでに大きく意味深であるとは思えぬほど、恐ろしいものです。想像による恐怖というものは、あらゆる面で人の不安さを強く掻き立て、恐怖させるのです。
眠れない夜を過ごしている方はぜひ、そんな延々の闇を見てみては如何でしょうか。きっと素敵な体験が出来ますよ。