ロンドンとコーヒーチェーンの思い出
11月の秋晴れの日、ブリティッシュメイド青山本店では「ブリティッシュ・コレクターズ・マーケット」が開催されました。クリスマスマーケットをイメージした会場には、イギリス人のこだわりさながら生のモミの木が置かれ、その先端から吊るされたユニオンジャックのフラッグガーランドが空間を可愛らしく彩っていました。
出店ショップではイギリスにゆかりのあるアイテムやフードが販売され、イギリスファンならずとも「お土産に1コは欲しい!」と思えるようなモノばかり。これもいいなあ、あれもいいなあ、と目移りしては、隣また隣という具合にショップを渡り歩いたのでした。
COSTA Coffee - コスタコーヒー
この日、私が特に楽しみにしていたのはコスタコーヒーでした。日本ではまだ馴染みのないコーヒーショップかもしれませんが、ロンドンに暮らしていた頃には、街を歩けばコスタコーヒーに当たる、というくらいそこら中に見つけることができました。
どれくらいたくさんかというと、例えば、スターバックスは日本全国に1,601店舗(2020)あるそうですが、コスタコーヒーはイギリス全国に2,422店舗(2018)もあります。一方、スターバックスはイギリス全国で995店舗(2019)に留まるので、コスタコーヒーがいかにイギリス人の生活に密着したコーヒーショップであるか、この数字からもお分かりいただけると思います。
かくいう私も、ロンドンではコスタコーヒーを毎日飲んでいました。私が通っていた大学の校舎1階にコスタコーヒーが入っていたからです。講義が終わると直行し、ミルクたっぷりの濃いカフェラテを1杯オーダー。それを持ってスタディルームへ行き、カフェラテが冷めて不味くなるまで文献を読み漁るのが日課でした。
別の日には、コスタコーヒーの店内でクラスメイトと研究にまつわる議論を交わしました。当時の私たちは「We can change the world(私たちは世界を変えられる)」を信じてやまない熱い学生で(今も信じているけれど 笑)、足りない知識と経験をひねり出しながら、さまざまな社会問題について語り合いました。
またある日には、ヒースロー空港にあるコスタコーヒーで、私を訪ねてロンドン旅行に来てくれる家族や友だちの到着を待ちました。ジンジャーブレッドラテを注文すると、たっぷりのった生クリームの上でジンジャーマンクッキーが笑っています。「ああ、もうすぐ家族や友だちに会える」そんな高揚感と相まって、その1杯は特別な思い出として今も心に残っています。
ブリティッシュ・コレクターズ・マーケットでは、DEENEY’Sのハギス(スコットランド伝統料理)入りホットサンドイッチのお供に、フラットホワイトを1杯たのみました。この波打ったテイクアウェイ用カップの懐かしいこと!
さっそく一口。おお、これは日本らしい、さっぱりとした口あたり。ロンドンでいただくカフェラテ、カプチーノ、フラットホワイトは、ミルクもエスプレッソもとにかく“濃い”という印象で、飲んだ瞬間、胃袋にカッと燃えるような刺激があります。凍えるロンドンの冬には気合いが入っていいのですが、デリケートな日本人の胃袋にはちょっと刺激が強いかも。なので、この優しいフラットホワイトのほうが、日本でデイリーに飲むにはちょうどいい気がしました。
Caffè NERO - カフェネロ
ところで、イギリスにはコスタコーヒーとスターバックス以外にも、歩けば当たる、有名コーヒーチェーンがいくつかあります。
その1つがCaffè NERO(カフェネロ)。こちらもコスタコーヒーと同様、イギリス発のコーヒーチェーンで、イギリス全国に648店舗(2020)を有します。「イタリアンスタイルのブリティッシュコーヒーハウス」を冠する通り、イタリア感を全面に押し出した店舗デザインです。
Image by A P Monblat from Wikicommons
私にとって一番思い出深いカフェネロは、ロンドンのセント・パンクラス駅のユーロスター待合所に入っている店舗です。当時、私は友だちがブリュッセルに、両親がパリに住んでいたこともあり、よくユーロスターで旅行したのですが、その前日は決まって荷造りに時間がかかり、いつも寝不足で駅に向かいました。お土産を詰め込んだ重いトランクケースをごろごろ引きずり、どうにかチェックインを済ませると、どっと眠気が押し寄せてきます。それを振り払うためにカフェネロでカプチーノとパニーノを注文していました。私にとってカフェネロは、今でも旅の始まりを連想させるコーヒーショップです。
Pret A Manger - プレタ・マンジェ
そしてもう1つ、私がこよなく愛していたのが Pret A Manger(プレタ・マンジェ)というナチュラル系コーヒーチェーン。Pret(プレット)という愛称で親しまれる手づくりサンドイッチが主力のお店です。イギリス全国で373店舗(2020)あるうちロンドンに257店舗が集中しており、ロンドナーに熱く支持されているのが分かります。
Image by Edwardx from Wikicommons
プレットのサンドイッチは他と比べても本当に美味しいんです!大学に通っていた頃は、ここのサンドイッチとスープを、ランチやディナーによく食べていました。特にお気に入りだったのは「Wild Crayfish & Rocket」というサンドイッチで、最初は「エビかな?」と思いながら食べていたのですが、後に Crayfish が「ザリガニ」であることを知りました。ちなみに、Rocket はルッコラのことです。
Image from Pret.hk
元来、イギリスの正式な食事は朝・夕の1日2回で、食間があまりにも長いことから、貴族はアフターヌーンティータイムを取るようになり、労働者階級は重労働の前にボリュームのあるブレックファストを食べるようになったと言います。だからでしょうか、イギリス人は昼食に対していたって無関心です。残業をしないためにランチタイムを削る人も多く、デスクで仕事をしながらささっと済ませられるサンドイッチは大定番のメニューなのです。そんなニーズに応えるべく、プレットはオフィス街や学生街で多く見つけることができます。
Starbucks Coffee - スターバックス・コーヒー
Image by Philafrenzy from Wikicommons
そして最後に、スターバックスの思い出を1つ。イギリスに暮らし始めて1年目は、スタバをWiFiスポットにして入り浸っていました。日本もそうですが、ロンドンのスタバでも、インターネット目的で集まる人たちが日がな席を占領しています。
日本と違ったのは、トイレに立つとき隣の人に「ちょっと荷物を見ておいてくれる?」と声をかけること。ロンドンのコーヒーチェーンには物乞いやスリが自由に出入りするので、「ちょっと見ておいてね」の一言がとても大切になるのです。私もみんなに習って「荷物をお願いします」と言うようになりました。
そうするうちに、スタバに顔見知りが数人できました。中でも一番会話をしたのが体格のいい黒人のおじさんで、自称ファイナンシャル・アナリストと言っていました。
「やあ日本人、今日も元気かい?」と声をかけてくれて、お互いの荷物を守りあい、「じゃあまたね」とお別れをする。ただそれだけの関係でしたが、一瞬でも心温まる触れ合いでした。ある日、私が引っ越すのでもう来れないと話すと、「もう会えないのは残念だけど、勉強がんばるんだよ。神のご加護を」と言って、父親のようにぎゅっとハグしてくれました。
一期一会に支えられる留学生活にあって、「God bless you(神のご加護を)」と祈ってくれたおじさんの優しい気持ちは、今でも私の宝物の1つです。
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ブリティッシュメイドの STORIES では、通訳者・翻訳者の川合亮平さんが、同じくロンドンのコーヒーチェーンについて紹介してくださっています。私とは違う視点で書かれており、たいへん参考になりますよ!
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川合亮平、僕のUK観光道
ぼくの好きなイギリス・チェーンカフェ
今日も最後まで読んでいただきありがとうございました!
YOKO
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