見えないものを信じる力
確か小学4年生の時、父が本物の顕微鏡を買ってくれました。その頃、学研の「科学」と「学習」という雑誌があり、何故か団地の集会室で売られていました。本当にたまに何回か買ってもらったことがありました。「科学」を買うとおもちゃの実験器具が付録に付いていて、それが楽しみだったのです。たぶんそんな私を見て、本物を買い与えてくれたのだと思います。
本物のガラスのスライドグラスにカバーグラス。ワクワクしました。手当たり次第いろんなものを顕微鏡で見ました。衝撃でした!
ベランダの水槽の水1滴。何もない水のようでも、顕微鏡で見ると微生物が動いていました。歩いて20分くらいの所にある神社に、池の水を汲みに行き、見てみました。水槽の中より遥かにいろんな生き物が動いていました!
あちこちの花の花粉を集めて見てみました。どれも粉のように小さく同じように見える花粉でしたが、顕微鏡で見ると丸いものや丸の周りがトゲトゲしているもの、三角っぽいものなど、どれも同じではなかったのです。花の名前を図鑑で調べてみると、花粉の特徴は花の種類ごとに分類されることが分かり感動しました。大発見でした!
この花とこの花は同じ仲間だったんだ〜! どうりでだから花粉も似た形だったんだ〜!
この手の発見は、私にとっては大発見で、大興奮でした。身の回りの“不思議”にこだわる子どもだったと思います。急須の空気穴にお箸を挿して塞ぐと、何で注ぎ口からお茶が出てくるんだろう? 中学になって、圧力がかかって溢れるんだと理解しました。自分の発見が裏付けられる理由がわかると、その度に「だからか〜」と納得するのでした。
いつも世界は見えているものだけではない、と思って暮らしています。
海を見るとこの静かな海の中に沢山の生き物がいるんだろうな〜。 見えない いろいろなものに想いを馳せることは、私にとって楽しいことだし、大切なことなんです。
そんな見えないものを信じる力は、父に買ってもらった顕微鏡から始まったのかもしれません。