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【空調設備】単一ダクト方式

一級建築士には構造設計設備設計意匠設計など専門的な分野を調整し取りまとめていく基礎的な知識や能力が求められています。
特に設備設計は専門性が高いですが一級建築士には必須の知識です。

中でも空調設備については日常生活で目にすることが少なく過年度生でも理解に乏しい方も多いと思います。
用途に合わせた空調設備の選定や、課題の要求を満たした方式と記述知識など理解していないと解答すらできない特に専門性の高い分野です。

今回は単一ダクト方式についてです。



空調設備各記事まとめ の記事

熱源と空調機の仕組み の記事

空冷ヒートポンプパッケージユニット方式 の記事

ファンコイルユニット方式 の記事


簡単なプロフィール

アラサー高卒 独身男
現場監督
地方中小企業の建築施工管理の会社員
1級建築施工管理技士
R6年一級建築士試験合格
※Amazonのアソシエイトとして、当メディアは適格販売により収入を得ています。



中央熱源方式

個別性などから近年の一級建築士製図試験において最も一般的かつ合理的と紹介した空冷ヒートポンプパッケージユニット方式に比べるとマイナーな方式になってきました。

空調室外機が1台であることが基本となるため個別性に劣る代わりに管理が容易で個別性が必要ない用途の建築物に適しています。

熱源方式の違いは下記記事でも解説しています。


単一ダクト方式

建築物の空調方式単一ダクト方式で要求された場合は上のような系統図になります。
大空間はもちろんその他の一般的な大きさの部屋まで全てが単一ダクト方式です。
小さい部屋だけを使うだけでも巨大な空調機を稼働させる必要があるので非合理的のように感じますが各室を同時に使うような用途には適しています

「大空間の空調方式は単一ダクト方式とする。」と要求されたら大空間以外を他の方式で計画することができます。
ファンコイルユニット方式だと室外機を単一ダクと方式と併用できますが小さい室1つのために巨大な室外機を稼働させるのはあまり分ける意味がないようにも思います。
よってホテルなどでない限り空冷ヒートポンプパッケージユニット方式を併用する方が自然と言えます。


空調機械室

外気を取り込み還ってきた室内空気と混ぜて調温湿して室内に送るため外壁に面している必要があります。
また、メンテナンス性一般利用者の迷い込みを防止するために管理部門内に配置するといいと思います。
1階にまとめて設けた場合は外部からの出入り口を設けて機器の交換などが容易に行えるように配慮します。

1階に計画した場合2階以上の階へ向けてダクトスペースが必要となります。
屋上空調室外機を設けた場合、冷媒配管を通すためのPSも必要となります。
中央熱源方式の場合、冷媒配管内には冷温水が通るので空調用PSを設けず他のPSと兼用しても良いといわれていますが個人的にはメンテナンス性などから共用部に空調用PSを設けた方がいいと思います。
ホールの空調の点検をするために便所の中で作業をしたり他の部屋の中で作業することはメンテナンス性に配慮しているとは言えないと思います。

各階に空調機械室を計画した場合DSは必要ありません
空調機械室から天井裏をダクトが通るためです。
上階へ向かってダクトが通らないのです。


DSとダクトルート

仮に1階にのみ空調機械室を配置した場合空調機械室の直上にDSを計画する必要があります。
ダクトスペースはこの試験において通常2 m×3mで計画します。
これが空城機械室の直上意外にある場合付近の部屋の天井裏を2m×3m近いダクトが通ることになります。
騒音もしますがそもそも、そのようなスペースはないと思います。
4m階高として天井高さ2.1mとしても梁下は1.1mにしかなりません。

学科でも勉強したようにダクトは曲がりが少ない方が圧力損失が少なく送風動力を削減できます。


記述対策

要求されていただけだとしても単一ダクト方式のメリットを明示し採用した理由を示す必要があります。

多人数利用が想定される大空間であるため安定した給気量を確保できる単一ダクト方式を採用した。

中央管理システムにより事務室にて全館の空調機器を一括管理できるよう計画することで建築物全体を均一な温度環境とし、快適な空間となるよう工夫した。

自分の意志で選んでもいないものにも関わらずなぜ選んだのか問われる場合があります。
安定した給気量」、「一括管理」などのキーワードを準備していなければ何も書けなくなってしまいます。


ファンコイルユニット方式との違い

同じ中央熱源方式ですが空調室内機の配置、DSの有無が違います。
ファンコイルユニット方式空冷ヒートポンプパッケージ方式に近いものになります。
単一ダクト方式ファンコイルユニット方式はどちらも室外機が「空冷ヒートポンプチラーユニット」で同じなので大空間は単一ダクト、その他はファンコイルユニット方式または空冷ヒートポンプパッケージユニット方式とする場合もあります。


まとめ

単一ダクト方式が指定される又は採用することになる場合はプールなどの大量給気が必要な場合、アトリウムなどの大規模空間が要求される場合、美術館などの湿度管理が必須な場合などが考えられます。

近年での一級建築士製図試験においては一般的ではなくなってきていますが試験課題によっては十分可能性はあります。

また、単一ダクト方式を採用しない場合でも、他の方式を採用した際の記述で必然的に知識として必要になってきます。
空冷ヒートポンプパッケージユニット方式の記述の際に「個別性に優れる」と書くと思います。
これには「単一ダクト方式に比べて」という意味が含まれています。
逆に単一ダクト方式の記述の際に「安定した給気量を確保できる」と書く際には「空冷ヒートポンプパッケージユニット方式やファンコイルユニット方式に比べて」という意味が含まれています。
本試験では毎年思いもよらない「ドッキリ要素」が必ずあります。
偏った知識だけではこれに引っかかってしまうため満遍なく知識を蓄える必要があります。


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