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【空調設備】空冷ヒートポンプパッケージユニット方式

一級建築士には構造設計設備設計意匠設計など専門的な分野を調整し取りまとめていく基礎的な知識や能力が求められています。
特に設備設計は専門性が高いですが一級建築士には必須の知識です。

中でも空調設備については日常生活で目にすることが少なく過年度生でも理解に乏しい方も多いと思います。
用途に合わせた空調設備の選定や、課題の要求を満たした方式と記述知識など理解していないと解答すらできない特に専門性の高い分野です。

今回は空冷ヒートポンプパッケージユニット方式についてです。



空調設備各記事まとめ の記事

熱源と空調機の仕組み の記事

単一ダクト方式 の記事

ファンコイルユニット方式 の記事


簡単なプロフィール

アラサー高卒 独身男
現場監督
地方中小企業の建築施工管理の会社員
1級建築施工管理技士
R6年一級建築士試験合格
※Amazonのアソシエイトとして、当メディアは適格販売により収入を得ています。




個別分散熱源方式



一般室、吹抜け、大空間など様々な場面に対応でき省エネ性に優れるため
近年の一級建築士製図試験において最も一般的かつ合理的な方式です。

デメリットは室内空気を循環させているだけなので換気機能がなく、別途「全熱交換器」などの換気設備が必要となることです。


対象エリアごとの室内機の違い


天井カセット型

最も一般的に使用される方式です。
マルチ型を採用することで1つの室外機複数台の室内機を稼働することができます。
天井高さは4mを限度として考え、これ以上の天井高さになる場合は室形状に合わせて後述する天井隠蔽型床置きダクト接続型に切り替える必要があります。

天井カセット型はダクトがないので梁下は冷媒配管だけ通ればいいということになり天井組用最低寸法として100から200mmでいいということになります。

個人的には梁下300以上を基本に考えておいた方が混乱が少なく余計な検討をせずにエスキスが進むと思います。
天井高さ2700+梁下300+梁800=階高3800
PC梁1000にしたり梁下500にすると階高4mになります。
資格学校で階高4mが基本とされているのは上記のような意味で合理的だからです。
また、勾配屋根の斜め天井には設置できません
フラット部分を一部作るなどの対応が必要です。


天井隠蔽型

吹抜けで使用される方式です。
Nの教科書には登場しませんがSの教科書には出てきます。
Nでは吹き抜けに床置きダクト接続型で計画するように指導されることもありますが現実とは乖離していると思います。

吸い込み口が吹き抜けの天井にあると人が居ない場所ばかりを空調することになってしまいます。
このため吹き抜け下階の壁から吹き出し、一般部から吸い込むことで居住域を効率よく空調することができます。

天井隠蔽型のダクトは径が小さいため梁貫通することもできます。
もちろん梁下に余裕があればそちらを通します。


床置きダクト接続型

大空間で使用される方式です。
大空間とは天井高さ4mを超えるような室のことを指します。
吹き出し口と吸い込み口が大空間の天井にあると居住域まで空調空気が到達する前に吸い込まれてしまいます。
また、室内機が故障した際の修理やフィルター清掃にも足場が必要となり総合的に非効率的です。

そのため、室内に空調機械室(10㎡程度)を設けてダクトにより天井から空調空気を吹き出します。
吸い込み口は空調機械室の壁面にあり空気が循環することで居住域を効率よく調温することができます。
室内の空気を吸い込んで温めて吹き出しているので換気設備は必要になります。

床置きダクト接続型のダクトは梁下に下記の寸法を確保する必要があります。
メインダクト 500mm
分岐ダクト 300mm

大空間はPC梁で計画することがこの試験のセオリーなので大空間天井高さ(要求高さ)+梁下(500)+PC梁(1000程度)=階高ということになります。


まとめ

指定がない限り空冷ヒートポンプパッケージユニット方式を採用するべきだと思います。

しかし他の方式を指定されたときにまともに解答できないと不合格がほぼ確定してしまうためもちろん単一ダクト方式ファンコイルユニット方式も学習は必要です。

デメリットの少ない個別方式が主流となっている状況でもプールなどの大量給気が必要な場合、アトリウムなどの大規模空間が要求される場合、美術館などの湿度管理が必須な場合、ホテル旅館などチェックインからチェックアウトの時間が各室同じ場合などでは中央熱源方式が採用されます。


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