儚い人生とは・道を違えた兄弟の話
弟が死んだ。31歳だった。病気で死んだ。入院して2日目にね。
僕は仕事中だった。僕はそれなりに普通に真面目に生きてるのに、こんな辛いことってあんの?
人生ハードモード過ぎ。
弟の生き方について軽く喧嘩してから疎遠になっていた。もう9年くらいかな。彼の生き方を否定した。説教した。気付いたら連絡先も教えてもらえなくなってた。住所も知らなかった。悪いことしないで生きていればいいか。その程度になっていた。自分に弟はいないものてして過ごしている感覚すらあった。
でも母親からの電話で、たぶん死んだと聞いて、動揺した。涙が出た。まじかよって思いながらも泣いてた。なんだか実感も無いがそんなことで嘘つく訳もないかと思うと、現実味を帯びてきた。
最後に話したのいつだよ。最後に写真撮ったのは?最高に兄貴らしいことをしてやれたのはいつだったんだと。後悔の念ばかり。皮肉なことに、嫌いだ、ふざけんなと思っていた弟のことを本当は愛していたことに気づいた。
僕の運転で親父と2人きりの車内。
天気がとても良かった。
本来なら喜ぶべきぐらいの良い天気だった。
どでかい入道雲が印象的だった。
まだまだ夏だなあ、
こんなに天気が良いのに、
本当に弟は死んだのか?
と思いながら無言の続く車内…
ひたすらに高速道路を進む。
つづく。