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水槽の彼女〜カバー小説【9】|#しめじ様


この短篇小説は、しめじ様のnoteからインスパイアされてカバー小説にさせて頂きました。

↓ ↓ ↓


🌿これまでのお話🌿


▶8話(1〜7話収録)


《登場人物》




・僕…34歳。ひとり暮らし



優愛ゆあ…ハイティーン。崩壊星collapserの瞳をしている。異国のpapaから離れたがっている。



・異国のpapa…世界的な画家。



・りら…彼女の齢の離れた父親の違う妹。

「彼女」を母親だと思っている。




―――


《8話ハイライトシーン》


「―――君も飲む?と言いたいけど、まだ飲めないよね」


わざと冗談めかして声をかけた。優愛はそんな僕を見つめて、


「・・・色々、あるのね。
自分だけじゃなくて・・・

あなたにも、ね」



そうだ。勿論優愛にも「何か」がある。



崩壊星コラプサーの瞳から、今は少し違う光を宿してはいたが。
高校を中退したうえで、どうしてもpapaから離れたかった「理由」が、何かあるに違いない。



優愛はシンクをすべて片付け、タオルで手を拭いた。そして僕に向きなおり・・・俯向うつむいて、溜め息をついた。



「―――ねえ、外を歩かない?久し振りに、外の空気が吸いたいわ」

「水槽の彼女〜カバー小説【8】」



【9】



僕は、優愛ゆあと夜の散策に行くことにした。マンションは水路近くにあり、少し歩くと疎水わきの並木道に出た。


細い葉が枝垂れて、さらさらと揺れる柳の道。月の光に緑が浮き上がり、川面かわもはきらきらと光の粒を見せて流れていた。


「―――気持ち良いね。久し振りだわ、外の空気吸うの」優愛は言った。


僕は、割合背が高いほうだ。並んで歩く優愛は僕より少し低い―――耳くらいの高さになる。



髪は長いが、優愛は中性的な雰囲気がある。外国人のpapaと暮らしていると、日本人離れしてくるのだろうか。



「ちょくちょく、家から出ればいいよ。息が詰まるだろう?」


「うん・・・」


俯向うつむき、落ちてきた髪を耳にかける。耳の形が小さく、よく出来た作りものみたいで、僕はそれを凝視した。



「あのね、私、多分心配し過ぎだと思うんだけど・・・周りの目が気になるの」


優愛は僕を見上げた。歩きながら、つまづきかけて一瞬、僕の肘をつかんだ。


「前にね・・・papaと、噂になったことがあるの。“あの親子はおかしい”って」


「―――おかしい?」


優愛はうなづいた。


「静かな住宅街だから・・・周りの住民は、よく見てるの。

mamaが大声を上げて、家の前で事故を起こしたとき、救急車やパトカーも来てたし。

・・・人目を引いたんでしょうね」


「ああ・・・」


優愛は、papaのヌードモデルをしたときのことを言っていた。誤解したmamaが、家を飛び出して車と衝突したという、痛ましい話だ。


「近所の人とすれ違うと、それからずっと様子が変なのね。こわい目で見られてるような」


「そうか・・・事情を話して回る訳にも、いかないだろうしね」


僕は歩きながら腕組みしていた。


「そうなの。

・・・あと、高校でもね・・・」


優愛は髪を束ね、ポニーテールのように高く結わえる仕草をした。


「懇談会なんかで、私が廊下でpapaと話してると、―――やっぱりpapaは目立つでしょう?

何か雰囲気が怪しいって、噂になっちゃうの」


「うーん・・・きみが、大人びてるからかな?」


「・・・・・」


優愛は、僕をちらりと見た。



そして、枝垂れ柳を、すだれのように手でけつつ、
ゆっくりくぐって、ずっと先まで歩いた。



そうやって木の下を歩いていると、月光を浴びて、優愛は柳の精になったように見えた。



僕はポケットから煙草を取り出した。途端に、箱から甘いような煙草の香りがした。


を埋めるとき、煙草というのは便利なものだ。


火を付け、身体の隅々まで行き渡るように、ゆっくりと煙を吸った。


「・・・きみが悪いって、言ってる訳じゃない」


優愛は立ち止まって、僕に向き合って立った。視線は、僕を通り越してあらぬ方を眺めていた。


彼女は言うのを躊躇ためらっているように、唇を少し開いたり閉じたりした。


「―――優愛?」


声を掛けると、優愛はぐっと焦点を合わせて僕を見つめた。


「―――警察が来たの。家に。

“ふたりはどんな関係ですか”って・・

旅行前のことよ」



【 continue 】



▶Que Song

また来世/Dios





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🌟Iam a little noter.🌟



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