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renge-kyo〜ちいさな花束|#ショートショート


 A短歌会でお世話になっている、深水英一郎様のXのお題を拝見。

↓ ↓ ↓


お題

【目を覚ますとちいさな花束を握りしめていた】


 より、今回は短歌ではなく、短文学で創作してみました。



renge−kyo
〜ちいさな花束




 ―――目を覚ますと・・・

 ちいさな花束を、握りしめていた・・・


❄ ❄ ❄


 右の手のひらに、くしゃくしゃになった蓮華の花束。花弁はまだルビー色をしている。


 私は泣いていたのだろう。目を開けようとして、上瞼うわまぶた下瞼したまぶたが貼り付いたので、開けにくかった。


❄ ❄ ❄



 昨夜、酔っ払って、ふらふらと千鳥足のまま家へ帰ろうとした。


 ・・・失恋したのだ。彼におしぼりを投げつけて、店から出た。


 ガードレールの内側で歩く私は、はたから見たら危なげだったに違いない。左側は畑の土地で、今は蓮華がいちめんに咲いていた。


 「蓮華・・・」と私はつぶやいた。


 目の中の蓮華はかすんで、極楽浄土に見えた。急に、子供の頃夢中で摘んだ記憶が甦って、飛び込むように畑に降りた。


 蓮華の小さな花弁は、幾重いくえにも重なって、作り物のように美しく、可憐だった。その可憐さを身体に取り込みたくて、何本も何本も手のひらに収めた。

 

 私の頬に・・・知らず、熱いものが絶え間なくこぼれていた。


 汚れることなど忘れて、蓮華に囲まれながら仰向けに寝転んだ。腕をいっぱいに広げて・・・



 得も言われぬ開放感。

 満月が、朧(おぼ)ろに揺れていた。

 私の心は、次第に満たされていった・・・


(―――もうよそう、振り返るのは。

 明日から、違う人生を生きよう)


 小さな蓮華の花束を後生大事に握りしめて、私は起き上がった。



      【fin】


#ことばの断片 #短文学 #お題でつくろう

 深水英一郎様、拙作ですが、ご査収よろしくお願いいたします。




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 また、次の記事でお会いしましょう!


🌟Iam a little noter.🌟



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