水槽の彼女〜カバー小説【10】|#しめじ様
この小説は、しめじ様のnoteからインスパイアされてカバー小説にさせて頂きました。
もとのお話はこちら。
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🌿これまでのお話🌿
▶9話(【1】〜【8】話収録)
「―――警察?」
僕は虚を突かれて、立ち止まった。
ポケットから携帯の灰皿ケースを出して、吸い殻になりかけた煙草をそこに捩じ込んだ。
「そう。未成年淫行の罪が無いかって」
「非道いな・・・」
優愛も立ち止まり、また僕を見た。そして夜空を仰ぎ、腕を開いて深呼吸した。
「papaが追い返したの。馬鹿なことを言うな、何の証拠があるんだ、二度と顔を見せるな―――
って、英語混じりで。
・・・珍しく、大きな声だったわ」
「・・・・・」
僕は、喋っている優愛を、少し離れた場所で黙って見ていた。
「多分、近所の人が通報したのよ」
疎水から風が吹いて、柳の枝が一斉に揺れ始めた。優愛の様子から、僕は追い詰められる義理の父と娘の気配を感じていた。
「優愛は・・・それで、家を出たのか?」
夜空から視線を移して、腕を下ろし、こちらを見た。僕の表情を確かめるようにしばらく眺めたあと、優愛は言った。
「そうね・・・
ちょっと息苦しくなって、離れたほうが良いんじゃないかと思った。
りらは昼間は保育園だし、帰ったらpapaが面倒を見られるしね。
りらはpapaに懐いてるの」
僕に微笑みかけたが、その笑みは失敗して、ほとんど泣き顔に見えた。
彼女は身体をくるりと回し、静かに流れる疎水のほうを向いて、僕に背中を見せた。
「・・・あの街には居場所が無いわ。
papaはこれから、仕事で海外に飛ぶことも考えてるけど・・・」
僕は、2本目の煙草を取り出していた。
「一緒に行くのか?」
優愛は後ろ姿のまま、首を振って否定した。
「じゃあ、妹のために、家へ戻らなくちゃ・・・」
「・・・そうね・・・」
煙草を咥えたとき、優愛はくるりとまたこちらに振り返った。
優愛の瞳を見て、一瞬寒気がした。
ホテルで会った時のように、彼女の瞳は崩壊星の如く、冥いくらい闇の色を宿していたのだ。
「・・家から、離れられないわね」
【 continue 】
▶Que Song
花束/Dios
はい、短いですが今日は此処まで。
あと2話くらいで終わる予定です😊
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また、次の記事でお会いしましょう!
🌟Iam a little noter.🌟
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