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なぜ、プライベートな事を会社で話さないといけないのか?


これは、わたしの会社のある若手社員の素朴な質問でした。
私の会社では、メンバー間のコミュニケーションが希薄で、何となくよそよそしい関係性となっていることから、1on1を毎月2回、30分づづ行う事としました。

 
1on1を始めるにあたり、事務局からのお願いでは。
仕事の進捗管理や、目標管理、起こっている課題についての報告や原因追及は、極力別の場でしてもらい、

1on1では、上司と部下との信頼関係を深めるための時間、部下が何でも相談できるフリーな時間とするよう、進め方についてのお願いがありました。
 
そしてスタートしたところ、ある若手社員から、
「なぜ上司とプライベートな話をしないといけないのか?」
「会社は仕事をする場所で、プライベートは関係ないのではないのか?」
こんな質問が、事務局に届いたのです。
 
さて、読者の皆様は、この若手社員の上司だったら、どのように説得しますでしょうか?
 

 

私の会社の事務局の回答は


①   人はいろいろな課題を抱えており、仕事だけで生きているわけではない

②   一緒に働く以上、差しさわりのない範囲で、部下がどんなことに悩んでいるのか?家族や人生にどんな課題や悩みを抱えているのか?上司にその辺の事情を理解してもらうことで、職場の居心地が良くなる。

③   上司の興味は、どうしても仕事の成果や課題の解決に向きがちで、部下を効率的に働かせ、結果を出すことばかり考えがちで、部下の成長や、なりたい未来、キャリア開発、Well-beingといった点が希薄になってしまう。それを変えてゆきたい。
 
そんな回答を事務局が公開で回答しました。

 
しかしその若手社員は、上司(信頼していない上司であったため)と、プライベートの話は極力したくないとの返答でした。

 
 

1on1には最低限の「信頼の貯蓄が必要」


そこから私が思ったことは、1on1を行うためには、「最低限の信頼の貯蓄」関係性が必要であることに気づきました。

そのため、上司との関係性が悪い部下にとっての1on1の時間は、苦痛そのものである。

一方の上司は、関係性の悪い、なかなか自分に寄り付かない(報告が不十分な)部下を、一定時間自分の下に留め置き、思い切り、「あれがどうなったか、これがどうなったか?」などと聞ける時間だと、勘違いしていたためだと分かりました。

 
 

雑談のためのお茶会の実施


そこで、私の会社で取った対策は、結果を急がず、1on1の実施の前段として、上司と部下が月2回、お茶を飲む機会を作り、仕事以外の「雑談タイム」を過ごしてもらうという事を、最低数か月間行う事としました。

その上で、機が熟してから1on1の形に少しづつ入っていくこととしました。
 
そして3か月~半年の雑談推奨の期間に、1on1の進め方、上司のコーチング力の研修、1on1に関する悩み相談ホットラインも設け、きめ細かな対応や支援を行う事としました。
 
そのことによって、1on1は徐々に定着し、
1年後には若手社員の離職が減少、
2年目には、会議の活性化や、提案件数の大幅な増加など、コミュニケーションの改善により、良い効果が顕著に表れるようになってきました。
 
 
 

そしてそんな中、あるエピソードも生まれました。


それは、自閉症の中三の男の子を抱えるある課長さんの話です。
その課長の上司である部長との1on1の際に、課長のお子さんの話になり、
その課長の一番の心配事は、奥様が電車でお子さんを学校に送り迎えをする際、以前電車内で発作が起こり、お子さんの体が男の子で大きいため、
奥様の力ではどうにもできない状態となったこが一度あったとのことで、
そんな状態が大事な仕事中や、会議中に再び起こらないか?自分にとっての最大の心配事であることを、上司の部長に告白したのでした。

 
聴いていた部長は、すかさず「そのような時はいつでも自分が課長の代役をするので、遠慮なく話してもらって、あなたは奥さんと子供さんの所に駆けつけてほしい」との暖かな回答があったとのことでした。

それ以来、その課長は安心して仕事に専念できるようになり、成果も大きく上がって行ったとのことでした。
 
 
1on1により、このような出来事も起こり、あらためて、人は仕事のみに生きているのではなく、いろいろな人生の課題・プライベートな問題もそれぞれが抱えて懸命に生きており、

その問題のほんの一部でも、上司と部下が理解し合えた時、職場での居心地や心理的な安全性は大きく前進するものであると思えるようになり、

それ以来、「職場のメンバーが、それぞれプライベートな問題や課題を、心置きなく話せる関係性を作ること」が重要だと、自信をもって話すことができるようになりました。


 
現在私は講師として、1on1を推進する研修や、管理職のコーチングのトレーニングを担当する中で、そんなエピソードも交えながら、

いかに上司と部下との関係性、プライベートも含めて、課題や悩みについて共有できる関係になれるかで、人はどれだけ成長し、仕事に前向きに元気になれるのか、受講者の方々に話すようにしています。

 

若手社員の問い、「なぜ職場のメンバーが、価値観やプライベートも含めて、理解し合うことができる関係性を作ることが重要なのか?」

読者の皆様はどのようにお考えになりますでしょうか?


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