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「一億特攻」と「勇者ヒンメルならそうした」

 いつの時代も、割を食うのはまじめで、優しい人たちなのだろうかー。 昨晩、NHKスペシャルで「一億特攻への道」という終戦ものの番組を見て、そんな思いを抱いた。 毎年恒例の「8月ジャーナリズム」で放送されたドキュメンタリー。成人にも達しない若者が特攻に志願していくまでの姿が克明に描かれていた。中でも驚いたのは、兵士が特攻を希望しているかどうかを「熱望」などの表現でランク分けしていた旧日本軍の資料が残っていたことだ。資料には兵士の氏名、技能などとともに特攻を「熱望」していたことが

    • フランメの「花畑」と神谷美恵子の「生きがい」

      「葬送のフリーレン」は老若を問わず読者を引きつける。それは、登場人物、勇者ヒンメルたち登場人物が魔王討伐の旅のさなかに発した言葉に含蓄があり、読み手の人生の支えになることもあるからだろう。詩的もであり、哲学的とも言えるフレーズには世代、国境を越えた普遍性がある。  台湾の地下鉄で、男性が通り魔を取り押さえた。男性は「勇者ヒンメルならそうした」とインタビューで語った。これはフリーレンが旅の途中でささやかではあるが善い行いをした時、「勇者ヒンメルならそうしたってことだよ」と言っ

      • 「足るを知る」と「不平家」のあいだ 「PERFECT DAYS」と森鷗外

        映画「PERFECT DAYS」を観て以来、ずっともやもやした気持ちを抱えてきた。主人公平山の生き方は素晴らしい。トイレ掃除の仕事を黙々とこなした後に銭湯で疲れを癒やし、帰宅後は古本を読みながら眠りにつく。自分に降り注ぐ木漏れ日に感謝する。物欲から離れ、多くのモノを求めず、今の生活に満足して生きる。監督のヴィム・ヴェンダースや平山を演じた役所広司は平山の生き方にあこがれていると言った。  だが、何か引っかかる。それでは夢を持つのはやめたほうがいいのか、「分をわきまえろ」という

        • 「僕の手を売ります」は生きづらい世の中の生きる術を教えてくれる

           プライムビデオで「僕の手を売ります」というドラマが配信されている。17日から関西テレビでも放送される。借金を背負った就職氷河期世代の45歳の男性が、いろんなアルバイトをしながら全国を回る。  オダギリジョーが演じる主人公の大桑北郎は、押しが弱く人に利用されることが多いが、「プロアルバイター」と呼ばれるほどの手先の器用さで日銭を稼ぎ、借金を少しずつ返していく。  全国各地をバイトしながら回る中で、大桑は人たちと出会う。生徒に手を出したために免職されたスナックのママ、非常勤の大

          均質化する記事

          「写す写真と、写った写真は違う。そこに撮った人の感動があるのかが大事なのに、それがおろそかにされている」。16日朝日新聞夕刊に、6月に亡くなった写真家の田沼武能さんの言葉が記されていた。いまやスマホで高画質な写真撮影が可能になり、誰でも即席写真家になれる。それでも、田沼さんは写真の中に撮った人の感動が込められているかどうかが大事だと記者に話していたという。  曲がりなりにも20年間、文章を書くことで糊口をしのいできた。心がこもっていない文章も少なくないが、半数以上は自分なりに

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