一対一の恋が息苦しい?なら別の方向性を考えてみない?恋愛の常識に問を発する良書『もう一人、誰かを好きになったとき ポリアモリーのリアル』
初めて読むのに最適っ!ポリアモリーの入門書
ポリアモリーって言葉ご存知でしょうか。モノガミーの対義語、恋愛対象になる人が一人に限定されないことを示すもの。は、それって浮気では?と怒りだす前に、もうちょい聞いて。
世の中の多くは一夫一妻制だし、世の中は恋人と言えばカップルという常識で成り立っておりますね。しかし、世の中には例があれば例外あり、このカップルという形に当てはまらない関係性の築き方をする人たちがいる。
それがポリーと呼ばれるポリアモリー(複数愛)を実践する人々である。単に配偶者がいて、外に浮気相手がいるではない、豊かで捉えにくい関係性の中に生きている人びとだ。
この本では著者が複数人のポリーをインタビューし、その体験談を紹介すると同時に、ポリアモリーについての定義、現代日本での制度、世界での制度など幅広い視点でポリアモリーの世界が紹介される。(巻末に資料一覧も有り)
定義、データ、当事者インタビュー、外部や出典の情報という見事なバランスがあって大変読みやすい。
学校の性教育でもう教科書に指定してもいいんじゃねってくらい、包括的な入門書だと思う。
どうして恋愛に興味ない人にもオススメなのか?
さてどうしてこの本が恋愛に興味ない人にもオススメなのかというと、世の中の恋愛の常識に鋭く切りいるから。
恋愛に関してのルールが時として枷のように感じられるときってないだろうか。真剣な恋愛は男女で、かつ本気なら結婚を前提とうするのが当然とか。男の夜遊び=武勇伝、格好いい、女の夜遊び=真剣な相手としては不適格、男がおごり、女は楽しませる等など…。
以下永遠にと言っていいほど「お付き合い」なるものに関してのルールというか、お小言は続く。ネバーエンディングストーリー顔負けの果てしなさだ。
確かにある程度、新たな人間関係を作るのに基本的なルールは必要だと思う。そこは同意する、けど恋愛に関してって特別に面倒くさくない?
世の中のカップルはこんなにもお互いの自由を拘束しあって関係性作ってくれるの?ってなる。そんな事はない!って人もいれば、そういうもんだって納得している人もいるだろう。
しかし世の中にはそんな世の常識のせいで恋愛において大変息苦しく思う人々がいるのも事実で。
それは自身のセクシャリティに起因する苦しさであるかもしれないし、はてはシス男女の関係で生じるジェンダー間の差が原因なのかもしれない。
その中にはこの本の主役であるポリーの人たちも含まれる。真剣な関係性を異なる相手と築いているのに、「浮気の言い訳」だとか「遊び人」だとか心無い偏見にさらされる。
ポリアモリーの実践=セックスの話題だと決めてかかられたり、求めてもいないアドバイスをされたりと、まず話を真剣に聞いてもらえない。
常識と言う名の偏見に苦しむことにどんなセクシャリティ、ジェンダーであっても境はない。それがものすごく身にしみる…ちょっと息苦しくなっちゃうほど。だから自分は一夫一妻主義というか、恋愛は一対一でしかしないからって頑なにならないで読んでみて欲しい。
ポリアモリーの話は著者が書くように、関係性の話なのだ。あなたが興味がないからって、あなたのパートナーがそうではないって可能性はない。そのとき、あなたがどうしたいのかって話でもある。
人間である以上避けられない他者との関わり方について、振り返る頭の体操として軽く触れてみるつもりで、誰でも読んで見て欲しい。
これってポリアモリーな感覚なの?読んで感じる自分の恋愛に関しての意識
この本に出てくるポリーの人たちは現在進行系で複数人の関係性を育んでいたり、中には拡大家族のように子育てをしてたりと、実に様々な生き方をしている。
どの体験談も読んでて興味深いのだけども、読んでて分かるなーって共感しちゃったのが、拡大家族みたいな感覚が手に入るってところ。
私は独身だし、アセクシャルなとこもあって現在恋人を欲しいと思っていない。そんな私でも老後に備えて同性の友達と家族みたいに暮らせる場所が欲しいなとは思っている。
他にも恋人が出来たはいいけど、一対一という関係性が息苦しいって思えるところ。恋人を最優先しなきゃいけないって思うのが嫌だって、めっちゃ身に覚えがある。
学生時代なかのいい同性の友だちとよく「何年も付き合いのある同性の親友と、たかが付き合って数ヶ月の男なら当然女友だちの方が大事だし、そっちを取る」って話してたのを思い出した。
あれ、自分で思う以上に私はモノガミーではなくてポリアモリーな感覚があるのか?って目からウロコというか、自分が持ってる思い込みに気が付いてギョッとさせられた。
答えは出ないし、全てが当てはまるわけではないけれど、世の中の恋愛中心主義に疲れた心に降って湧いた解毒剤のような一冊でした。
まとまりのない感想になってしまたけども、同時に何人かを好きになる人にはガイドブックに、そんな問題がない人は自分との対話として読んでみてはいかがかなと思います。『もう一人、誰かを好きになったとき ポリアモリーのリアル』