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ワルシャワ冬日記 アジアンスーパーへ行く 2025年1月15日
昨日の今日でおにぎり作るのに使えそうな食材を求め、ワルシャワのアジア食材店を3つほど回った。
1店舗目は地下鉄Politechnikaを降りてしばらく歩いた場所にあるAsian House。日本だけでなく中国韓国ベトナムインド系の調味料やお菓子、缶詰など幅広く扱っている。
醤油みりんめんつゆ、みそ、各種ソース、わさび、粉末だしやうどん、そうめん、ふりかけ、海苔、米、梅干し、納豆(ひきわりのみ)も売っておりこちらで手に入りにくい青梗菜などの生鮮品も置いていた。日本の2、3倍ほどの値段。冷凍枝豆も置いていたので今度夏にきっと買いにくると思う。冷凍レンコンも置いてあったので、ここでも筑前煮を作ることができる…と感動した。こちらではとりあえず梅干し、たくあん、みそ、粉末だしを購入した。日本の会社のカレールーなどもある。
最近は普通のポーランド系スーパーでもアジア調味料はそこそこ置かれるようになったが謎日本語が書かれた中国製や東南アジア製の醤油や漬物が並んでいていつも手を出すのを躊躇していた。日本製品がここなら確実に手に入る、ということがわかった。日本製でも聞いたことないメーカー名だけど、味に違和感がある可能性は低い。
2店舗目はワルシャワ中央駅すぐ近くにある巨大ショッピングモール、Złote Tarasy内にあるKuchnie Świataへ。こちらも広くアジア食材を扱っているが、1店舗目よりも現地企業の製品、お菓子やジュースのラインナップが充実している。
こちらではお好み焼きソースやたこ焼きソースと並んで照り焼きソースがよく売られており大変人気のようだ。が、それをみて砂糖やみりんと醤油があれば照り焼きできるじゃん、といつも思っていたので、ソースを買うより汎用性の高いみりんを義実家に置いておこう、という発想でこちらではみりんと、同じく汎用性の高い白だしを購入した。それぞれ500mlで700円ほど。いつも日本では298円くらいのを購入しているので、ぐ…と唇を噛んでしまう。悔しいのが1店舗目で買ったのと全く同じ梅干しがこちらでは半額で売られていた。勉強代ですねと夫と悔しさを噛み締めた。
3店舗目は日本人オーナーが起業した和食材のセレクトショップのようなお店、坂本屋。
上記2店舗よりも手狭な店内だが他店舗では1、2種類しか置いてない味噌や梅干し、混ぜご飯の素、日本酒などがバリエーション豊かに揃っている。おにぎりやお弁当、たい焼きも提供していた。多分納豆が欲しくなったらここに来ると思う。こちらでは塩昆布を購入した。ウクライナ難民を積極的に支援しているのか、店内入り口のガラスには両側に大きくウクライナ国旗、店員さんもおそらくウクライナ人の方だった。
学生時代と比べて、日本食材を扱う店が増えたことに夫は改めて驚いていた。「なんかこう、珍しさが半減したような気持ちでちょっと複雑」と言っていて笑った。わかるよ、自分だけが本物を知っている、みたいな気分に浸りたいやつね。こちらとしては普及してくれた方が移住後はありがたいのでどんどんやってくださいという気持ち。
帰宅後ニュースを見ていたら今ポーランドにゼレンスキーが来ているらしい。アメリカ大統領もいよいよあれになるし、色々話し合いにきたということか。
話題になっていたのが、2国間の負の歴史についてである。両国は第二次世界大戦時にお互いを虐殺しあった歴史を持つ。Wołyńという地域(そのほかの地域でも)で1943-44年にウクライナの独立運動派、民族主義の蜂起軍UPAによって、正確な犠牲者数は不明だが最大で女子供を含め10万人のポーランド人が殺害された。
この行為はウクライナでは国土と独立を奪い返したと英雄視されており、正式に罪を認める方向で向き合われたことがない。ポーランド側の報復行為でウクライナ人も数万人殺害されたため、長らく2国間の憎しみの種となっていた。
ロシアによるウクライナへの侵攻が開始した当時にも、今後の協力関係を続けていくにあたりこうした過去の蟠りを清算しようという話し合いが何度か持たれている。今回のゼレンスキー来波でも、お互いの正確な犠牲者の調査を始めるということが話されたそうだ。
上では単純に書いたがこの事件はもちろんポーランド・ウクライナ間だけの問題ではなく、ソ連の支配、ドイツの支配、その他少数民族の他国籍の犠牲者が関わっている悲劇だ。人はどうしても犠牲者側の側面で振る舞いがちだが、世界大戦時(それ以前もだが)のこの地域の歴史を見るたびに加害と被害の連鎖に暗鬱たる気持ちになる。
現在のウクライナ侵攻にも、前線にはロシア連邦内の少数民族の若者や北朝鮮兵士まで投入されている。どうして彼らがそんな目に遭わねばならないんでしょうね。
隣国で、中東で、アフリカで、ミャンマーで、今なお起き続けている殺し合いを知りながら、私は今海外で呑気にアジア食材店でおにぎりがどうのとほざいていられるのだが、どうしてなんだろうなぁと常に思っている。
殺し殺されるという状況に陥った人々と何が違うのか、私はどうして彼らじゃないのかといつも不思議に思う。運でしかない。
戦後のポーランドの芸術家たちが、どうして政治的・社会的な作品ばかり作るのか、そうなるしかないよなぁと年々痛感している。
政治ぐちゃぐちゃ国の先輩、夫から昔言われて印象に残っている言葉がある。「外で色々な不正に怒り、家では穏やかに笑顔で過ごす」
見て見ぬふりをするのではなく、オンオフをはっきりさせろという、正気の保ち方。先輩だなあと感心した。