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今日の読書
※ネタバレあります。
3日間かけて、読了しました。
貫井徳郎さんの「空白の叫び」
長編の醍醐味いっぱいでした。読み進めていくと、その世界に没入できていくのは本当に幸せです。
重くてやるせない内容ですけど、登場人物たちと一緒に懸命にあがいて生きた気がします。
中学生にして、殺人の罪を起こした三人の少年たち。
それぞれの生い立ちも、罪を起こした経緯も起こした罪に対しての考えも全く違います。
医者の父を持ち、美しい継母がいる葛城は、経済的に恵まれており、顔立ちも整っています。頭もよい彼はどこまでも自分を律して生きています。
そんな彼ですが使用人の息子の野放図さ厚顔無恥さに、苛立ちを重ねていきます。そしてある日、唯一の彼の救いとなっていたガンプラを壊されてゴルフクラブで殴り殺してしまいます。
久藤は、小学生のころのいじめをトラウマに、誰も信じないで誰にも隙も弱さも見せないで生きていこうとします。そうすればそうするほど、周りから浮き余計行き辛くなっていきます。
新任の女性教師は、何故か彼を苛つかせ、彼は女性教師をレイプしてしまいます。それで軽蔑されるはずが、彼との距離を近づて関係を続けることになった女教師。そのことに訳がわからないまま関係を続けてしまう久藤は、あることをきっかけに彼女を絞め殺してしまいます。
父を亡くし奔放な母とは一緒に住めない神原は、育ての叔母と祖母を大切にして生きていますが、死んだはずの父への疑問、祖母が亡くなって入った遺産などから伯母を守るために、母の家に火をつけて焼死させてしまいます。
少年院時代、社会に戻ってからの3にの少年たち。
何も考えないで、何にも関わらないで、植物のように生きたいと願う葛城。
常に周りに苛立ち、破滅願望を口にする久藤。
周りのために生きようとした神原は周りに裏切られると、怒り保身に入ろうとします。
私が読んでいて、一番恐ろしかったのは神原でした。
真人間になろうとする神原は、そのためには手段を選びません。恩を受けたと思う人をも、罠にはめようとします。
罪悪感や後悔を口にしながらも、彼は行動する時は、実に大胆でした。
その心情がわかればわかるほど、人の弱さや怖さが自分のことのように胸に突き刺ってきました。
そう言えば、葛城、久藤が三人称で書かれていますが、神原だけは一人称で書かれていました。
それに…最終的に神原たげが…
これ以上はネタバレしないほうがいいですね。
長編の醍醐味は、そのディテールにあると思います。
ストーリーだけなら、こんなにもページは必要ありません。
そこに書かれている、細かな心情の変化、空気感が臨場感たっぷりに、知らない世界に誘ってくれます。
素敵な旅に導いてくださった、貫井さん、登場人物のみなさんありがとうごさいます。